物知り顔

自分の人生を模索してる時期に、映画が好きなら映画監督になったら良いという発想に至った。結局実らず、好きなことを仕事にするってことの矛盾を知った。普通に考えれば分かるけど、映画を見るのと、映画を作るのは全く違う。でもあの時の私は分からなくて、一年制の映画学校に通った。

自分の映像に関する創造性の無さに幻滅する前に、そこは兎にも角にも苦手な場所だった。

たばこを介したコミュニケーション。
長丁場の現場。
ダラダラした飲み会。

タバコも嫌い、体力もない、人と話すのも苦手。
大学も同じようなもので、何もかも辛くて、無駄に時間が過ぎて、ただ自分の苦手なことを確認する毎日。
私が悪いのかな、どこかで、みんなが当然のように学ぶことを学びとれなかったのかな。

そんなふうに思ってたけど、辞めるわけにもいかず、無視して、生活を続けた。そして、次第に涙が止まらなくなって、眠れなくなった。

今でも、あの日々を思い出す。
堂々と日々をクリアしていくあの人たちの顔を。
だけど思う。
よく分からないこといっぱいあるけど、分からないこと無視してただけなんじゃないかって。
堂々とした顔じゃなくて、ただの物知り顔だったんじゃないかって。

きっと、あの日々が祟って、わたしの無理は利かなくなってた。ただただお面に追い詰められて、気づいたら崖から落ちてた。

落ちてみたら、やっと自分の身体中が痛んでることに気がついて、もう戻れそうにもないことを知った。

だけど、あの頃の激しい閃光は遠くなって、空は広くて全ての光が等しく、遠かった。

わたしはまた、生まれ直して、次は自分の意思で自分を作り上げなかればならないんだと、気が遠くなったけど、やっと胸を撫で下ろした。

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