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スマートフォンを利用した転倒検知システム

▼ 文献情報 と 抄録和訳

スマートフォンを利用したオンラインでの転倒検知システムで、実際の転倒の状況に応じたアラート通知とコンテクスト情報の提供を実現

Harari, Yaar, et al. "A smartphone-based online system for fall detection with alert notifications and contextual information of real-life falls." Journal of neuroengineering and rehabilitation18.1 (2021): 1-13.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景] 転倒は、世界中の事故死および傷害の主要な原因である。転倒のリスクは、バランス障害のある人にとっては特に高い。しかし、実際の転倒に関する前向きな情報はまだ少ない。このようなデータは、転倒のリスクに対処し、転倒の検出および警告システムを開発するために不可欠である。ここでは、スマートフォンをベースにした転倒検知・通知のオンラインシステムの概念実証を行った前向き研究の結果を紹介する。

[方法] 本システムでは,スマートフォンの加速度計とジャイロスコープを用いて参加者の動きを監視し,正則化ロジスティック回帰を用いて転倒を検出した.

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✅ 落下検知システム(入力データ、落下検知モデル、システムの出力、ウェブポータル、今後の応用など)

転倒および転倒に近いイベント(つまずき)のデータはクラウドサーバーに保存され,転倒に関連する変数は,イベントの時間や天候,転倒の確率,転倒者の位置や転倒前の活動など,データ探索用に開発されたウェブポータルに記録される.

[結果] 転倒のリスクが高い23人が2070日間携帯し、14,904,000件のイベントを分類しました。システムは,発生した37件の転倒のうち27件を検出し(感度=73.0%),46日に1件の誤報が発生した(特異度>99.9%,精度=37.5%).転倒と誤判定された事象のうち42.2%がつまずきと検証された。

[結論] 本システムの性能は,スマートフォンを用いた実生活における転倒検知・通知の可能性を示すものである.本システムは,実用的な転倒モニタリング機器として機能するだけでなく,貴重な研究ツールとしての役割を果たし,今後の研究で転倒関連データを収集する能力を向上させ,研究者や臨床医が実際の転倒を調査するのに役立つと考えられる.

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

転倒や疾病発症の際に、とくに高齢者において問題になること。
それは、『ヘルスリテラシーが低い』、だ。

✅ ヘルスリテラシーとは?
対人的な場合であれ、書物やインターネット検索の場合であれ、健康や疾病について、情報の入手から活用までの一連の行動にはそれなりの技量が必要です。そのような技量、能力をヘルスリテラシーと呼んでいます。リテラシーという言葉は、もともとは、簡単に言うと、文字の読み書きの能力を指します。そこでヘルスリテラシーを簡単に言うと、「自分にあった健康情報を探して、わかって(理解し、評価した上で)、使える力」ということになります。
>>> 参考サイト

転んでから、「大丈夫だと思って」10日間我慢する。
「何か話しにくいと思ったんだけど・・・」意識を失うまで病院に受診しない。
医療の活用という観点で、適切な情報収集や判断を下すということが、難しい。
それによって、手術までの日数が延長し、治療のゴールデンタイムを逃し、予後に対するNegative因子を作り出してしまう。
訪問リハの現場などに行くと、強烈にその現実があることを体感する。

今回のような自動検出システムをうまく用いれば、その部分の解決に結びつくかもしれない。例えば、転倒に関して言えば以下のようなシステムが組める。

①転倒
②転倒検知システムで転倒であると検出
③ウェアラブルデバイスで骨折診断に関連の強いバイオマーカを勝手に評価
④骨折診断が陽性であれば勝手に救急車を手配
※場所は自宅以外でもGPSで勝手に検出されるのでどこでもOK !!!

あとは、精度の問題だ。
今回の研究のように37件中27件しか拾えていないようでは、未熟。
まあ、精度は時間が磨いてくれるとして。
そのようなシステムを、回復期病棟でどう使う?、維持期でどう使う?
そのクイズは、近々、出題されることになるだろう。考えておいてもいい問題だ。

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