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「踵からつま先へ」は自立歩行を実現する金言である

▼ 文献情報 と 抄録和訳

脳卒中後遺症で自立歩行を開始した人の回復期における足圧パターンの変化

Echigoya, Kazutaka, et al. "Changes to foot pressure pattern in post-stroke individuals who have started to walk independently during the convalescent phase." Gait & Posture 90 (2021): 307-312.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

✅ ハイライト
・脳卒中後の歩行障害は、足圧パターンの変化によって明らかになる。
・前後方向の足圧中心経路は、運動機能と歩行速度を反映している。
・自立歩行達成後、COPパスの後方への動きが減少した。

[背景] 脳卒中後の足部接触パターンの異常は、機能的な歩行に影響を及ぼすが、自立歩行を目標とした客観的な分析は不足している。研究課題は脳卒中後遺症で自立歩行を達成した人と健常対照者では、歩行能力や足圧パターンはどのように異なるのか?次に、自立歩行を達成する前と後では、脳卒中後の人の能力やパターンはどのように変化するのか?これらの変化は、自立歩行を許可する基準となりうるのか?

[方法] 片麻痺患者28名と対照者32名を登録した。運動機能障害スコア(MDScore)、歩行速度(WSpeed)、足圧パターンを、装具や身体的補助なしで初めて歩行できた時(第1回評価)と、退院時に自立歩行を達成した時(第2回評価)に測定した。足圧パターンは,インソール型の足圧測定システムを用いて測定した。体重に対する部分足圧の比率(%PFP)、圧力中心(COP)の前後長の比率(%Long)、足長に対するCOPの後方移動距離の比率(%Backward)を算出した。2回目の評価時のパラメータを、対照群および1回目の評価時のパラメータと比較した。2回目の評価では,パラメータ,MDScore,WSpeedの関係を分析した。

図1

図. %Longの算出方法:b/a×100

[結果] 2回目の評価では、非麻痺肢と対照肢の間で、%Longと%Backwardに差は見られなかった。後ろ向きの%PFPは高いが、足指の%PFPと%Longは対照群に比べて低かった。Backwardが低いものの、2回目の評価では、足指の%PFPと%Longの両方が1回目の評価よりも高かった2回目の評価では、麻痺肢の%Longおよび%Backwardの値は、MDScoreおよびWSpeedと中程度の相関を示した。

[考察] 足指の圧迫を改善した後、COPパスの前後方向の長さの増加と後方への移動の減少は、自立歩行を可能にする客観的な徴候であった。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

歩行練習の際に、「踵からついて、爪先までしっかり体重がかかるように」は最も使用頻度の高い口頭指示だと思う。
このCOPというアウトカムは、有用だ。
なぜなら、臨床上効果的なFocusに直結しやすいから。
「踵に体重がかかるように」「爪先までしっかり体重がかかるように」「つま先で地面を蹴るように」
COPにFocusを向けることは、インターナルフォーカスとエクスターナルフォーカスの中で後者に重心がかかる。エクスターナルフォーカスは自己組織化が図られやすく、学習のプロセスを早める。「踵から爪先へ」は、どうやら金言らしい。

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