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馴化の威力:ロックダウン解除後も身体活動レベル低いまま

▼ 文献情報 と 抄録和訳

イングランドにおけるCOVID-19パンデミックによる最初の全国的ロックダウン中およびその後の身体活動の縦断的変化

Bu, F., Bone, J.K., Mitchell, J.J. et al. Longitudinal changes in physical activity during and after the first national lockdown due to the COVID-19 pandemic in England. Sci Rep 11, 17723 (2021).

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 最近の研究では、COVID-19パンデミックの初期段階で身体活動が低下することが示されている。しかし、ロックダウンや留守番命令を超えた身体活動の縦断的な変化に関する調査は不足している。さらに、身体活動の成長軌道に異質性があるかどうかも不明。本研究では、身体活動の縦断的なパターンと、それに関連する要因を探ることを目的とした。

[方法] データはUCL COVID-19 Social Studyから得られたもの。分析サンプルは、2020年3月24日から8月23日まで22週間にわたって追跡調査されたイングランドの成人35,915人で構成されている。

✅ ロックダウン~緩和スケジュールの詳細
2020年3月24日:英国で最初のロックダウンが開始
2020年5月13日:制限が緩和されて屋外での運動が無制限にできるようになった
2020年7月4日:屋外のジムや遊び場が再開された
2020年7月25日:屋内のジムやスイミングプールが再開された

この期間中には、厳格なロックダウンとそれに引き続く制限措置の緩和があった。データは成長混合モデルを用いて分析した。

[結果] 分析の結果、成長の軌跡は6つのクラスに分類され、経時的にほとんど変化しない安定した3つのクラス(合計62.4%)、身体活動が減少している2つのクラス(28.6%)、経時的に身体活動が増加している1つのクラス(9%)が含まれた。研究参加者の28.6%が身体活動レベルの低下または不活発な状態の亢進を報告したのに対し、9%が身体活動レベルの上昇を報告した。その他の研究参加者は身体活動レベルの経時的変化がほとんどなかった。年齢、性別、学歴、収入、雇用形態、健康状態など、様々な要因が身体活動の軌跡のクラス分けと関連していることがわかった。

図1

図. 身体活動の経時的変化

[考察・結論] COVID-19パンデミック期間中の身体活動の経時的変化には、かなりの不均一性がある。しかし、我々のサンプルのかなりの割合は、身体活動の持続的な低下を示した。身体活動と健康との関連性が確立されていることを考えると、身体活動の持続または増加は、人々の身体的および精神的健康、さらには一般的な福利に即時的および長期的な影響を及ぼす可能性が高いと考えられる。パンデミックの間、そしてその後も、身体活動を促進するためにさらなる努力が必要。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

(北国は損だ)と思う。損である。
冬も日差しの明るい西国ならばこういう無駄な働きや費えは要らないであろう。北国では町中こうまで働いても、たかが雪をよけるだけのことであり、それによって一文の得にもならない。
が、この城下の人々は、深海の魚がことさらに水圧を感じないように、その自然の圧力の中で賑々しく生きている。この冬支度のばかばかしいばかりのはしゃぎかたはどうであろう。
司馬遼太郎『峠(上)』P8

あらゆる小説の中で、一番好きな入りかもしれない。
人間は、とある環境に馴れると、何も感じなくなる、それが普通になる。
それが、『馴化(順化)』だ。
この論文の結果で示されたのは、何も目新しいことではない。身体不活動の状態に『馴化』すると、制限が外された環境になったとしても人間の行動は変わりにくい、『馴化』の威力の再確認だと思っている。
そして、然るべき時が来たら、太陽の下に人々を連れ出し、再び活発な状態へと『馴化』を促す環境を構築するのが、政策の役割であり、理学療法士も一役担うことができるだろう。
深海から陸に上がるときが、近づいている。

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