ワコククリエイティブスピンオフ①
その年は稀に見る不作の年であった。農民、商人、多くの庶民の命が奪われたが、庶民にとって更に不幸であったのは、大名家に暇を出された侍崩れが、山賊宜しく度々事件を頻発させた事であった。
特に峠辺りは侍崩れにとって格好の狩り場。金を携えた行商人が行き来するからである。地元の者は決して近付かないが土地勘の無い行商人はまんまと餌にされてしまう。
茹だるような暑さのある夏の日。一匹の ゛狼 ゛が獲物に牙をむこうとしていた。
「そこの行商人待てっ!」
既に本身を抜いている侍崩れが叫