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リンクスランドをめぐる冒険 Vol.14 たどり着くのか、オレ? Part.2

2023年6月22日から2023年7月23日まで。
約1ヶ月間、スコットランドのゴルフコースをめぐる1人旅を敢行。
これだけを考えるとゴルフ好きなら誰もが
「羨ましい!」と思いつくままを言葉にする。
実際、私だって行く前はほぼ、楽しいことしか頭の中になかった。
しかし、いざ行ってみると悪戦苦闘と至福の時の繰り返し。
振り返ればジェットコースターのような1ヶ月間。
これはそこで見たこと、感じたことの備忘録です。

謀反を起こしたGoogle Map

カーナビのルートが広い駐車場を示し、そこで突然、途絶えた。

おかしいな、どこかでオレが間違えたのかな?と思い、来た道を引き返してみたが、リルート先は同じ広い駐車場だった。
2回目になると見落としていた表示版も目に入る。

「Western Ferries Terminal」

…ふぇりー??

私は慌てて車を駐車場の端に駐め、カーナビを拡大した。
ルートが途切れたわけではない。ここGourock(ゴウロック)でフェリーに乗り、Dunoon(ダンウーン)に行け、と示している。
確かに、昨夜見たGoogle Mapに比べればショートカットになる。
しかしフェリーに乗るなんて聞いてねーぞ!
ショートカットを選択するなら事前にオレに聞けよ!
私は陸路を再検討するためにスマホのGoogle Mapを開いた。
Google Mapは見事にカーナビとシンクロしてフェリーに乗るルートを示していた。

寝返ったな!Google Map!

左が事前に調べた陸路。右は原稿を書いている時に出力した実際の走行ルート

グラスゴーの先でM8からM898へ行けば陸路のまま(右図)だったが、カーナビがM8直進を示したのでそのまま直進(左図)したことがルートミスになった。

フェリーに乗ったことがないわけではない。
久里浜から金谷に向かう東京湾フェリーはアクアラインが開通する以前、千葉でゴルフをする時によく使っていたが、車は久里浜に置きっ放し。
車ごと乗り込んだのはライターになりたての頃、東京から宮崎までの航路だけだ。
まさか、人生2回目の車ごとフェリー乗船がスコットランドになるとは思わなかった。
私が駐車場で機械に悪態をついている頃、フェリーはターミナルに到着し、車が次々に乗り込んでいく。
しかし、ターミナルにありがちなチケット売り場らしきものはまったく見当たらず、フェリー側の誘導員以外にスタッフもいない。
ターミナルビル(小屋でもいい)がないからタイムテーブルも分からず、次の便までどのくらいの間隔があるのかも不明。
いつまでも悪態をついていたところで状況は変わらない。
私は決断を迫られた。
陸路にするのか?航路にするのか?

乗船チケットはオンラインで

駐車場の端で状況を見ていると、また次々に車が来て順序よく並んでいる。
この分なら次の便までそれほど間隔が開くことはないだろう。
陸路へ戻るM898の分岐点まで行くには20kmほど走らなければならない。
私は意を決して車の最後尾に並んだ。
すぐに私の後ろに車が並ぶ。これでもう、陸路には引き返せない。システムは依然、分からなかったしフェリーがDunoonに行く路線であることの確証もなかったけれど、とりあえず行くところまで行ってみるか、という楽観的な気分になってきた。

約20分ほど待機していたらフェリーが到着。
乗り込んでいた車が下船すると、すぐに誘導が始まった。
どこかでチケットを見せろ、とか言われると思ったが、何事もなく乗船。
ほどなくして、フェリーはGourockを出港。
私はただ、何も分からずゴルフの運転席でステアリングを握り、揺れる船上でぼーっと前を眺めていた。

雨で水平線は見えず波でかなり揺れている

コンコン。

運転席側の窓を叩く音がしたので窓を開けると、黄色いヘルメットを被り、反射ベストを着た中年のスタッフが話しかけてきた。
「オンラインチケットを持っているか?」
なるほど。フェリーに乗るにはオンラインチケットがいるのか。
「いや、持ってない」
私は努めて冷静に答える。
「1人かい?」
「そうだ」
「車1台と運転手1人で£21.70」
スタッフも、何事もなかったかのように答える。
え?…この場でチケット買えるの?
「えっと、デビットカード、VISAでも大丈夫ですか?」
今度は慌てながら財布を尻ポケットから取り出し、カードを探した。
「もちろん」
スタッフは私のカードを端末機に接触させ、ピッと例の音を鳴らすとプリンターから打ち出されたレシートを私に渡した。
「サンキュー」スタッフは笑顔で私に言うと、船上のルーティン作業を早く終わらせるべく、後ろの車に向かった。

まったく、案ずるより産むが易し、とはこのことだな。

オンラインチケット持ってなかったら車ごと海に放り込むシステムになっている、と言われたらどうしようと思ったけれど(そんなこたあないか(笑))。
「まーったくビビリだなあ。もうちょっとオレを信頼しようぜ?」
とカーナビに言われた気がした。
私はエンジンを切った。
車が次の港に着くまで、私は束の間、車の中でささやかな航海を楽しんだ。
もちろん、この時はまだまだ試練が続くとは思っていなかったし、振り返ってみれば最初のフェリーなんて緩すぎる試練だったとは、知るよしもなかった。

たどり着けるのか、オレ? マフリハニッシュへ…。

続く

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