見出し画像

ダンゴムシしか勝たん

 ダンゴムシ・・・これほど幼児教育に最適な生き物がいるでしょうか?


 「ムシ」と言いながら、飛ばない・刺さない・速くないの3拍子が揃っているので、虫に抵抗がある子供にとっても「怖くない」につながりやすく、虫を捕まえる、親しむにはもってこいの生き物です。

キュウリを食べるダンゴムシ。何でも食べるけど野菜は人気度高く、跡形もなく食べ尽くす。


 そもそも『幼稚園教育要領』においては、領域「環境」の中で、幼児と生き物の関りについてその重要性が示されています。

 身近な動植物に親しみをもって接し、生命の尊さに気付き、いたわったり、大切にしたりする。

『幼稚園教育要領』第2章 第2節 3「環境」 「内容(5)」より

 このことを踏まえ、幼稚園の教育活動の中では、様々な生き物を飼育することがあります。飼育活動を通して、その生き物の生態を詳しく知ったり、命を大切にする気持ちをもったりしてほしい、と考えているからです。

 そんな飼育の対象として、最も身近で、初歩的で、多くの園で選ばれるのがダンゴムシでしょう。園内でもお家の近所でも、探せばいろいろな場所に生息していますし、前述の3拍子が揃っています。飼育方法も容易で、土と隠れ場所を用意して、エサとなる落ち葉を入れ、ときどき霧吹きをするだけです。飛ばないのでふたすらいりません(笑)。

霧吹きをしてお世話している幼児。
ふたがいらないので、大きなケースで育てると大人数でのぞき込むことができる。

 脚が多いので、最初は「気持ち悪い」と感じる子もいるようですが、手の平に乗せて歩き回らせると、「くすぐったいね!」とすぐに仲よくなれます。そして何といっても、名前の由来となっている“触ると丸くなる”というシステム!身を守るためとはいえ、捕まえてくれ、転がしてくれ、と言っているようなもの(゚Д゚;) まさに子供たちの遊び相手(=教材)になってくれるための生き物(笑)。子供たちも夢中になって関わります。

ダンゴムシの意外な生態

 そんなダンゴムシの生態、皆様どれほどご存知でしょうか?いくつか紹介いたしましょう。

★脚の数★
 14本あります。よく観察してほしいので、子供たちにはそう簡単に正解を教えません(笑)。虫眼鏡を準備すると、夢中になって観察します。

★オスとメスの見分け方★
 背中に黄色っぽい斑点がある方がメスです。卵を抱えていることもあるので、それを見たい子は、ちゃんと見分けてメスだけひっくり返します。

★出産★
 メスがお腹に抱えている卵から、小さい小さいダンゴムシが大量に生まれてきます。小さくてもちゃんとダンゴムシの形をしていて、丸くなります。

出産を見たいからと言って、無理にダンゴムシの体を開くのはダメ、絶対!

★食べ物★
 落ち葉の他にも、野菜の切れっ端や段ボール、新聞紙などいろいろな物を食べます。中でも石やコンクリートは、殻を維持するために必須の食べ物で、飼育するときは一緒に入れておく必要があります。

幼児が弁当に入れてきていたこんにゃくゼリーに群がるダンゴムシ。
本人曰く、「僕が好きだからダンゴムシも食べるよ」らしい。
写真では分かりにくいが、周囲のダンゴムシは溶け出したゼリーの汁をすすっている。

★似てるけど違う★
 丸くなれないワラジムシは、似ているけれど別の生き物です。4歳児あたりだとそれが分かること分からない子がいて、ワラジムシを無理やり丸めようとしてもめてしまうことも(笑)。また、青や紫、赤や黄色のダンゴムシもいるそうです。

ダンゴムシ会議

 夏休みを前に、子供たちと「ダンゴムシ会議」を開きます。1学期の間お世話をしてきたダンゴムシ、夏休み中はどうするか、という会議です。

 「先生がお世話しといてよ~」
 「でも捕まえてきたの○○君と、▲▲君と、☆☆ちゃんたちやん」
 「みんな捕まえたやん」
 「夏休みも(お世話しに)来る!」
 そもそも“夏休み”自体が初めてで、イメージが湧かない子もいる中で、でもしばらくするとこんな意見が出てきます。

 「逃がしてあげたら?」

 最初は反対する子もいますが、これまでも死なせる度にお墓を作ってお別れをしてきた子供たち。そうなってしまうよりは、とみんなの気持ちがまとまります。
 幼児教育的にはここまでが(お別れをするまでが)1つの飼育活動。命に対して責任をもつことにもつながります。

ダンゴムシを逃がしに行く子供たち。でも、逃がした場所でまた捕まえてくる子も・・・(笑)


 最近は、「虫捕り」の経験がない子が多く、幼稚園に入って初めて、の子ばかりです。そんな子にも、もちろん虫に慣れた子にも、見どころがいっぱいあって、飽きずに親しめるダンゴムシ、生き物の中では最強クラスの教材だと思います!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?