赤ちゃんに指をさされた。あれはきっと呪いの類。


雲ひとつない晴天に嫌気のさす今日この頃。
みなさまもここ数日の灼熱に苦しみ、何か対応策はないかと苦心している事でしょう。そんな方々に朗報です。

私も苦心しております。

夏だからね?

暑い。家を出ただけで頭にこびり付く感情です。
それはもう町中華の換気扇の如き感情が脳裏にこびりついて離れません。

ああ、どうして冷房24度の快適空間を脱してまで地獄の業火に焼かれなければならぬのか。理不尽を自らの進んで買って出る通勤組の皆様は本当に立派です。今なら仏も地獄を蜘蛛の糸まみれにしてくれるでしょう。

さて、職場までは徒歩10分。
たった10分だけ、この地獄を耐えれば私の勝ちです。
(ま、目的地も営業という名の地獄なんですが笑)

浮き出る脂、滴り落ちる塩分、肌に張り付くスラックス。
そんな最悪の環境でも私は耐えました。ええ、耐えましたとも。
なんでこんなに暑いんじゃー!!!!!!

そう叫び出すのも堪えて。
ですが、勝ち筋は見えています。地獄といえど終わりはあります。
そう、職場にはクーラーが2台ある!

出社したら片方を除湿。もう片方を冷房。
時間にして1.1秒。
いや、その時の私なら僅か0.3秒で全てを終わらせる事ができたでしょう。
沸々と激る情念が、暑さに耐えるモチベとなって私を支えていたのです。

肝が冷え

そして問題の交差点。
ここの信号は長いことで有名で、出勤ルート上、最大の難所です。
日光と長時間の赤信号。立ち止まる事で風も止み、汗が噴水のように噴き出します。
しかし! このゲームには必勝法が存在する!

私は日差しの照りつける横断歩道の前ではなく、その手前にあるコンビニの影で青信号を待ちました。
そう、暑さの発端は憎き太陽。
私はヴァンパイアのように影にひそみ、その時が来るのを待つのです。

すると、横断歩道の前に立つ親子が目に入りました。
お母さんはこの暑さの中で幼い女の子を抱っこしています。
女の子は生後6ヶ月程でしょうか。ピンク色の可愛らしい帽子をかぶっていました。
微笑ましい光景にヴァンパイアがほっこりしていると、抱っこされた女の子と視線が合いました。

その時、私は凍りつきました。
女の子は、私を指差し私を笑ったのです。
引き続き微笑ましく思ったでしょう?
いえいえ、そんなこたぁ、ありません!

なんと言うか、その笑い方が明らかに奇妙だったのです。
まるで、女子大生が飲み会でハメを外すおっさんを見るような、そんな冷めた笑顔でした。
29歳のヴァンパイアはハッとしました。
間違いありません。これは、呪いディメンションの類です。

そこで青信号になり、暑さも忘れて走りました。
まるで逃亡するように、私は赤子と魔女を追い越しました。
出社しても戦慄は止まりません。
震える手でタイムカードを切ると、ここでようやく一息つけました。
8時59分。どうやら間に合ったようです。

席につき、今日のタスクを確認していると上司がやってきて私に言い放ちます。

「一番にとは言わん、だが社会人ならもう少し早めに来い」

なんという事か…
どうやらこれが奴の呪いディメンションの効果…!

あの赤子のおかげで今日は最悪のスタートを切ってしまいました。

どうか皆様も熱中症と赤子の呪いディメンションにはご注意ください。


十条

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