ママ友・海外志向・リスクヘッジ ~村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』17~

今日、喫茶店の隣で話していたママ友会の話を反芻している。

1人のママが場を仕切っていて、最初聞えて来たのは、ロサンゼルスのディズニーランドに行った経験談と、それを適度な相槌を打ちながら聞いている状況だった。

私も、いずれ行くことになるのではないかと戦々恐々だったので、そのレポートを聞いてみたくて聞き耳を立てたが、コロナ禍でアジア人がほとんどいなかったこと、空港で検査が厳しくかなり難儀したこと、それでも自分は持ち前のコミュニケーションで乗り切ってディズニーを楽しんだこと、が主要な内容だった。

どうしてこう海外に行くことが、この会の中で特権化されているのだろうと、さらに聞き耳を立てたが、どうやら主役のママは海外在住の経験があり、他のママもまた、そういった状況に至るためにインターナショナル・プレスクールに通っていて、そのママ友らしいのだ。

全員が海外での経験を持っているわけではなさそうなので、その話を拝聴しているというわけらしい。

ディズニーの話が終わり、同じプレスクールの保護者の悪口に至り、受験の話に行く。ということは、このママさんたちはみな小学校3年生くらいの子どもを持っているのか。その割に小学校の話が出ないのは、あるママの子はインターナショナルのエレメンタリースクールに通い、あるママの子は公立小学校に行っている、そんな状況なのではないか。

インターナショナルの子は、国際バカロレアとかそっちを目指すんじゃないかと思うのだが、埼玉県内の進学中高一貫の見学の話をしている。どっちなんだろう、と思いつつ、興味があったので、さらに聞いていた。

ただ、その辺については、どれも理解が曖昧で、国際プログラムと日本の受験制度を混同しているようなふしもあった。唯一、インターナショナルに行かせているママの子の話は具体的だったので、ああやっぱりそういうことやるんだなと納得したのと、他のママさんたちが、それを理解しかねていることもわかった。

海外の大学は学費が高いし、それこそ今は円安で、インターナショナルの学費とかどうなっているんだろうと心配した。いずれにしても、自分の希望を叶えるためにどのような技能や意識を習得するかということが本質だと思うので、トロフィーとして子どもを見せびらかすのは、いかがなものかと途中から思った次第。

きれいごとですかね。

羊男のことをユキはなぜ知っていたのだろうか。それを「僕」はもう一度電話で聞きたくて仕方なかった。しかし、すぐに切られるかもしれないと思って、折り返すのはやめた。

別れた妻のことを思い出す。妻は、「僕」に誰かと寝て来て、と言った。それはできなかった。そして、いつしか眠りについた。

翌日、「僕」はキキと映画の中で寝ていた高校のイケメン同級生である俳優の五反田くんの連絡先を探して、プロダクションに電話をかけた。しかし、つれなかったので、ことづけしてくれるように頼んで、「僕」は街に出た。

そして、家に帰ってくると、五反田くんから留守電が入っていた。

ママ友たちの海外志向を、私も半分共有している。

それは単純に、日本以外でも生活できるようになっておいた方がこれからの人生のリスクヘッジとしてはいいのではないかと思えるからだ。

だから、海外での経験を日本に持ち帰って来て、それを箔にして、日本でハバをきかすという考え方は、ちょっとコストが高すぎるんじゃないかとも思う。それならもっと効率的な方法があるんじゃないかとも。

あと、外国語の深い理解を促すことは今後も必要となるんじゃないかと思うけれども、皮相的な会話なら通訳ソフトもどんどん発展してくるので、それにお金をかけてやらせたと思い込むのは、正直な話、親の自己満足にしか思わない。

ただ、「私」の場合、外国語を最近やっと面白いと思い始めてきたので、その感覚を子どもたちにはもうちょっと早くつけてほしいかなとは思わなくもない。

海外志向が喧伝されるわりには、海外の文化の受容のマーケットはなぜか狭まっていると思うので、海外の文化を知るという動機付けは弱まっているように感じる。この反比例はどうしてなんだろう?

と、ママ友会の会話を聞きながら思った。


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