57 氷山モデルの階層構造 構造は感覚から見当をつけよう
前回の記事では、行動の全体像を捉えるフレークワークである氷山モデルの階層構造の1つであるパターンについて書きました。
不適応行動のパターンを把握して、行動改善を促すことは可能ですが、予測できても効果的な対応策が分からないことやそもそも行動パターンの予測ができないことも十分予想されます。つまり、パターンだけでは行動改善につなげることが難しいことも往々にしてあります。次回の記事では、パターンの下にある構造について考えてみたいと思います。
構造の考え方
行動がパターンとして繰り返し起きる理由として、
パターンは構造によって生み出される
と考えることが重要であると言われています。私たちは、不適応行動は行っている人に原因があると考える傾向があります。しかし、複雑なシステムにおいて繰り返し起こる不適応行動のパターンは、
人が起こしていると考えるよりも、その人たちにそうした行動をとらせるような構造がある
と考える方がより建設的です。なぜなら、学年や教師が変わっても、構造が変わらなければ同じパターンが起こりがちだからです。
具体例から構造について考える
具体例から、構造について考えてみましょう。
「今、どこを読んでいるのか分からなくなる場合、音読補助シートで今、どこで読んでいるのか分かれば読める。しかし、国語のテストで文章題と問題を交互に読んで理解し、問題に答える際にはできなくなる」
など、場所や環境が変われば結局はできず、失敗体験を重ねることにつながってしまうのです。
ここで、子どもの構造として考えるべき点は「感覚」です。
構造を感覚から考える ~五感から見当をつける~
いわゆる五感のことで、皆さんもよくお聞きしたことがあると思いますが、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚のことです。
五感は、世の中のすべての事象を感じる情報の入り口です。もしかして、この子は感覚に偏りがあるのではないか、認知の違いがあるのではないか等の視点で考えることで、見当をつけることができます。
感覚の凸凹の特徴
さらに、考えなければならないのは、感覚の特徴として
過敏性があり、特定の刺激に過敏に反応する子がいること
鈍感性があり、激しく、強い刺激を与えなければ満足しない子がいること
同居現象といって、感覚の敏感と鈍感が同居してしまっている子がいること
のように、感覚には凸凹があるという特徴を理解しておくことで、より行動背景を探ることができます。
もしかしたら、この子は、五感の感覚のうち何かを抱えているから、学習に参加できないのではないか、いつもパニックになるのではないか、このような行動をしてしまうのではないか
という、パターンの構造の見当をつけられるようになっていきます。
「国語のテストで文章題と問題を交互に読んで理解し、問題に答える際にはできなくなる」
例でいけば、視覚過敏といって、見る所からの情報に選択すべき情報に選択的注意をむけにくい特徴があり、必要以上に視覚情報を受け取りすぎてしまうのです。国語の音読であれば、繰り返し行って慣れており、音読補助シートを活用して視覚情報を制限することで落ち着いて取り組めました。
一方で、国語のテストは問題文+文章題、さらには選択問題や記述問題など多岐に渡り、視覚情報を必要以上に受け取ってしまうのです。
対応として、
情報の少ない場所に座席を移動する
ディバイダーというついたて、仕切りを準備した場所に移動してあげる
などの配慮が効果的です。
さらに、この子は聴覚に優位性があります。よって、問題文や文章題を読み上げることで、安心して取り組むことができます。
大切なのは感覚の凸凹があるという背景をしることが大切です。パターンの背景は感覚のどこに過敏性や鈍感性があるのか、もしかしたら同居しているのではないかなど、知識として持っておくことで、不適応行動の原因を探る大きな武器となるでしょう。
今回の記事は、以上になります。
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最後までお読みくださり、ありがとうございました!
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