ステラおばさんじゃねーよっ‼️75.こだわりの設計
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家族3人の新居は、都心から電車で20分、最寄駅から徒歩3分以内に位置するリノベーション済み中古マンションの一室だ。
10階の角部屋。バルコニーは、南向きで陽当たり良好。だがさほど、それ自体は広めではなかった。
そこに咲く花や、実る果実を思い浮かべながら、どの鉢植えを育て、どんな配置にするかを家族で想像し、語り合う時間がとても楽しかった。
リノベーションをするにあたり、住空間設計には、3人の《こだわり》をつめこんでもらった。
基本空間は、4LDKSで、約100平米だった。
リビングが30平米以上あったため、壁の仕切りで、部屋のサイズや間取りを変えたかった。
そのためリノベーション会社にはその希望を伝え、デザインと設計に反映してもらった。
間取りをたやすく変えられるならば、急なお客様対応や気分転換もしやすくなるだろうと、母と妹が言ってくれたのだ。
そしてそこは、カイワレの仕事場兼事務所としても使用できる部屋となり、家族《こだわり》の設計のひとつになった。
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引越当日、ポーちゃんとひかりも新居に現れ、引越の進行状況を確認しながら、手伝えそうなところからふたりは手伝い始めた。
引越業者の面々は、真夏の暑い陽射しと重労働によって大量の汗を身体から吹き出させていたが、丁寧にテンポ良く、荷物を新居へ運び入れる。
小鳥遊母娘とカイワレも、運び込まれた荷物の位置を作業員に指示したり梱包された箱に入った物を少しずつ取り出して、しかるべき場所へ収納していく。
朝9時から持ち出された小鳥遊家の家具やら家電、その他の段ボールは、お昼過ぎには大抵の物が指示通り各部屋へ、整然と置かれていた。
カイワレの荷物は、必要最低限の衣服、仕事道具、そして小物類しか持ち出さなかった。
ポーちゃんは来月以降、カイワレと共に暮らしたマンションから出る予定だ。
カイワレのベッドや家電等の大物道具は、引越先で購入しようと考えていた。
だからカイワレ側の引越は、引越業者には頼まず、いつものひかりのリムジンで荷物を運んでもらった。
「いいなー、たい兄!いつもあの車に乗せてもらえて」
歩が口を尖らせると、
ひかりは、
「歩ちゃん、今度わたしとあの車に乗って、歩ちゃんも大〜好きな熊キャラもいる、あのテーマパークへ遊びに行きませんか?」
と歩を誘った。
歩は二つ返事で、
「やったー!ひかりちゃん大好きー♡」
とひかりに飛びついていた。
ひかりは歩を妹みたいと想い、笑みがこぼれた。
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「お腹、減ったー」
空腹により、ポーちゃんの機嫌がすこぶる悪くなっていた。
「お昼にしよう!ポーちゃん、何食べたい?」
とカイワレが聞くと、
「何でもいいー!」
と力なく応えた。
カイワレはデリバリーのピザMサイズを3種、注文した。
キンキンに冷えた部屋での真夏のピザは美味しかったようで、ポーちゃんも、満面の笑みを浮かべながら、各種ピザを頬張っている。
歩も知波もひかりも、小鳥遊家から運んだダイニングテーブルで昼食を取った。
昼食後は、運び込まれた荷物でも比較的早めに使用するもの、例えばキッチン用具や洗面、浴室用具等の箱から片づけていこうと考えていた。
しかし皆朝から力仕事をして疲れていたせいか、冷んやりとした新しいフローリング床に寝そべり、いつの間にか昼寝していた。
新しい家の匂いがとても心地良くて、5人はしばし夢の世界へ入り込んでいった。