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あと46日であえなくなってしまうことを、いまだに信じられないけど、とりあえずいつも帰りたくない。

先週の土曜日、一年半続いたバイトをやめた。
回転寿司、塾講師、どちらも一年続かなかったが、地元のケーキ屋で働き始めて、気付くと一年半たっていた。リニューアルした年に入職して、「最近リニューアルして」とお客さんに言い続けてたらある日社員さんに「もう二年前だよ」と言われてハッとした。休憩とかなかったり二時間何も言わずに残業(時給アリ)したりしてたけど、そういう働き方が逆に自分に合っていて、頑張ってる、必要とされてる、と思えてとても楽しかった。自分の絵を看板とか説明書きに使ってもらえたのも素敵な経験だった。

辞めた一番大きな理由は、来月に迫った留学だった。基本土曜日に丸一日入っていたのだが、だんだん土曜日はそれにまつわる色々な予定が入ってしまい、月に二回とかしか入れなくなってしまったのだ。いろんなことが日々変わるお店だったので、一週間以上入れないと次入ったときにわかんないことが増えていって、「なにもできない」罪悪感を感じて、行きたくなくなってしまう。帰るころには、「今日いてくれて助かったよ」という言葉に嬉しくなってしまうけど。

最後のシフトの日に、陽が「星が働いてるの見たい」と言って、昼間にお店にやってきた。帰りに、「じゃ、8時ごろにまた来るから」といって帰っていった。

シフトを終え、でかいパンとケーキと花束を抱えた私は、陽を探した。陽は車できていて、ケーキがあるからと急いで駅前で味噌ラーメンを食べて、陽が家まで送ってくれた。荷物を置きに家に入ると、父親に「ふざけんなよぉ」と言われたが!きにせず!!夜のドライブに出発した!!!

8時に上がってラーメンを食べて、その時点で10時前だったので、そんなにたくさんの選択肢はなかったのだが、行先は前から行ってみたかった万葉クラブとなんとも贅沢なことになった。嬉。

車を運転しながら陽が、「終電の概念がなくなるってすごいよね」と言いながら夜の道路をみなとみらいに向かって走った。この時点で陽はちゃんと今日は家に帰って多分いつものように通話をつなぎながら寝るつもりだったようである。

観覧車が光ってるうちに、と展望台の足湯に行き、並んで夜風に当たった。最初中国人に写真を撮るように陽は頼まれて、私の方を見ながら、「いいの?練習するチャンスじゃないの?」と言ってきたが、今日はなんだか何も失敗したくない、という気分で、「いい、いい」と答えた。

深夜零時を回ってから、そろそろ風呂につかるかーとなって、風呂を出たのは1時半。ゲームセンターで遊んで、最後にまたコーヒー牛乳とモンスター片手に足湯にのぼった。観覧車は消えても、右斜め後方に見えたオフィスビルの2フロアがずっと明るいままだった。いつかは私も、あそこで社会の歯車になるのかしら。そう思うと今日の自分はとても自由だ。

ちなみに私は陽が車で迎えに来てくれた時から、今日は帰るつもりなんてなかった。わたしは運転できないから、交代してあげられない上に、彼の家族の車なのに。普通に考えて申し訳なさすぎる、ってことでご飯は全部出した。

三時手前で車は夜明けの熱海を目指して発進した。陽は様々な音楽をかけた。「ぶりんっ!ぶりんっっ!!」っと二人で熱唱したり。
ずっとしゃべり続けていた。そうしていないと私は眠ってしまう気がしたし、不思議とずっと話が続いた。今日は眠りたくなかった。
将来どんな車に乗りたいとか、1000万かけてアメリカに留学した先輩が悲惨だとか、なんかもう思い出せないような話をした。

大磯、熱海へと続くまっすぐな道に出て、しばらくして海が開けて見えてきて、空は朝の予感を感じさせた。
「やばい朝じゃん!」「朝来ちゃったじゃん!!」
そう騒ぎながら、左右に道路や建物の白い光が浮かぶのを見た。当初の予定では、日の出が見えるころに熱海の車中泊ができる駐車場に入る予定だったが、暗いけど、夜とは全く違う朝の存在におびえながら、笑いが止まらなかった。

バブルの頃に栄えたであろうホテルや古くて寂しいホテルの看板を抜けて、箱根から熱海になった。駐車場に着くと、5時から7時くらいまで座席を倒して寝た。

寝るときに、どうして今日はこんなに特別なことが許されているのか考えた。どうして私は普段いけないような温泉に行き、今こんなに楽しく熱海にいて、これから朝の漁港で海鮮丼を食べようなんて、贅沢が許されているのだろう。

それを私に正当化してくれたのは、胸の奥にひっそりとまだ残る、
「もう二度と戻れない場所と、今日はお別れをした」ということだった。

陽が私を起こしたとき、外はザーザーの大雨だった。こりゃ漁港は無理かしらと思ったが、とりあえず陽も眠い目をこすりながら沼津に向かった。

二人でだいぶいい海鮮丼を食べた。わかめたっぷりのあら汁が染みた。

今日は昼にはかえって宝塚記念を見ると言っていて、それはこの旅を終わらせるのにちょうどいい理由だった。ラブライバーの車たちを眺めながら帰路に着いた。最後まで家に送ってくれた。ありがとう!!

次の楽しみの為に、今とさよならする。
将来活躍するために、海外に留学する。

あと40日で、私はノルウェーに行く。陽はエジプトに行く。しばらく会えなくなる。どうなるのかわからないけれど、私はきっとむこうに着いた日に、一人でパーッと酒でも飲むのだろう。ピアスでも開けようかしら。

タイトルも本文も長い。あと陽はたぶんこのnoteの存在を忘れてる。




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