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48歳没落の始まり・「夕焼け物語」の構想

夕焼け物語:人生を振り返るインタビューの力

わたしが52歳で映像編集の仕事を廃業したのは、48歳から始まった仕事の急激な減少が原因でした。不況の影響でドキュメンタリー番組がなくなり、高額なギャラをもらっていたフリーランスのわたしには仕事が回らなくなったのです。何が悪かったのかと自問自答する日々が続き、これからどう生きていくのか悩みました。

その時に思い浮かんだのが「夕焼け物語」です。この構想は、わたしが多くのドキュメンタリー編集を通じて感じたインタビューの効用を柱にしています。たくさんのインタビューを編集してきた経験から、取材される側の心境をお伝えしたいと思います。

インタビューの効用について

取材を受けることは、多くの普通の市民にとって驚きの体験です。普段の生活の中で突然、カメラとマイクが向けられるのはびっくりすることですよね。特にテレビ取材の場合、その注目度から緊張と誇らしさが入り混じる複雑な心境になります。

取材が始まると、対象者は夢中になってインタビューに答えることが多いです。自分の話を聞いてもらえるという高揚感に包まれながら、熱心に答えます。しかし、取材が終わると、ふと冷静になり、「あの時、こう答えればよかった」「こんなことも話せばよかった」と、様々な思いが浮かび上がります。

インタビューの後、取材を受けた人々の中では、その問いかけがずっと続いているようです。自分の中で何度もその質問に対する答えを探し、振り返り続けるのです。その過程で、仕事や人生について整理し、新たな視点を見つけることができます。

わたしが実際に経験したことですが、数ヶ月後に追加の取材がある場合、取材クルーが再び訪れると、初回とは全く違う打ち解けた雰囲気で迎えられることがよくあります。再び取材を受けるときには、確信と自信を持って答えてくれるようになります。

これは、初回の取材が終わった後、自分の中で反芻した仕事や人生を、再び相手に語るよろこびや、信頼、友愛の現れです。この最初と2回目の取材時の変化に、わたしは編集者としていつも驚かされます。

そんな”問いかけ”を通じて自分の人生を見つめなおし「わたしの人生も悪くなかったな」と思う時、振り返れば空は真っ赤な夕焼けに包まれている・・・。「夕焼け物語」を通して、人生を受け入れることへの共感が見る人の心に響くような作品を作れたら・・・そんな思いがありました。

夕焼け物語の実現へ

当時48歳の私は、テレビ業界の仲間に相談し、高齢者をマーケティングするなら葬儀屋に行くと、死期の近い人がわかるなどのアドバイスを受けましたが、どうも自分がしたいこととギャップがありました。何をなんのために誰に見せたいのかも不明でした。夕焼けの映像のストックの方法、実際にインタビューするとすれば撮影機材や費用の問題など、よくわからないまま時間が過ぎていったのです。

52歳で編集の仕事を廃業してから15年間、福祉の世界で働いてきました。そして今、Beyondアニメーションを使ってこの「夕焼け物語」を始めようとしています。実在の人物から対象をフィクションに移し、アニメーションを主体にしたショートストーリーで、「夕焼け物語」を始動させます。

「夕焼け物語・母・星空のアイスキャンデー」

今回はその1回目、「夕焼け物語・母・星空のアイスキャンデー」を紹介します。これは、わたしが48歳当時、「夕焼け物語」の構想を母に語ったことから始まるお話です。良かったらご覧ください。


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