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シェアサロン経営のはじめかた 【その6.】 「想い」を伝える


前回のつづき。

「わたしたちが提供したいのは場所ではなくライフスタイル」

nuuのコンセプトが固まった。

このコンセプトを元に、伝えたいイメージをカタチにしたのが以下の広告クリエイティブ。


イラスト広告。雰囲気あるイラストと最小限の言葉で構成


オシャレなビジュアルでプランごとの特徴を解説


上原自身がモデルとなって美容師ママの日常を伝える


美容師が辞めてしまう理由を短編小説に。


フリーランスに転向した人を想定して心情をビジュアルと言葉に


実はこのような世界観推しの広告はCPC(コストパークリック=クリック単価)が高い傾向にある。
つまり、コスパが良くない。

逆に「80%還元!」や「稼げる!!!」などのわかりやすい文字が踊っている広告の方がクリック単価が安い。
直接的な表現の方が人はクリックしたくなるのだ。

CPCやCPAを目標数値とするなら、わかりやすい表現を用いた方が利用者獲得のために良いように思える。

しかし同時に、幅広い属性を無作為に集めにいくことになるので、利用希望者の「色」が分散していく。

コンサバファッションが好きな美容師もパンクファッションが好きな美容師も「稼げる!!!」ことは嬉しいし、「自由に働ける♡」こともやりたい。

数字を根拠に広告を運用することで利用者獲得は捗り経営的に潤うかもしれない。
だが、いずれ属性の違う者同士が同じ場所で髪を切っている状況が発生し、ストレスを生む事になる。

これでは設定したコンセプトに反する。

世の中のブランドとして認知されている美容室にはそれぞれイロがあるように、nuuでもブランドとしてのカラーを確立したいと考えた。

多様性を排斥せよ、という事ではない。
どの職場でもあるように、価値観のかけ離れた人と一緒に働くことは生産性に繋がらないというだけだ。



「私たちが提供したいのは場所ではなくライフスタイル」
コンセプトを実現するためには、場所のみ提供すればいいという状況は本望ではない。

仕事もライフスタイルの一環としてシームレスに理想的なものであってほしい。
そのためには属性が近い美容師さん同士に利用いただくのが望ましい。


利用希望者を無作為に集めていくのではなく、同じ価値観や世界観を持っている方に向けて想いを届けること。

これを広告の運用ルールとすることで中長期的にはしっかりとしたブランドとして形成されていくはず。
そして、この蓄積は他社が一朝一夕に再現できないと考えた。

世の中には思想がなく数字が取れるものがそこらじゅうに居並んでいる。
それらは短期的にはお金を稼げるかもしれないが、後に何も残らない。
創造性がなく、すぐ真似できるからだ。

私はセンスのない頭の良さよりセンスある不毛さを愛したい。
そう思い、コスパが悪くともあえて世界観を推した広告を配信し続けた。




「他人と違う何かを語りたかったら、他人と違う言葉で語れ」
スコット・フィッツジェラルドはある手紙の中でこう書いたらしい。
村上春樹は時折、この言葉を思い出しながら初めての小説「風の歌を聴け」を書いた。

同じことをなぞっても、後発の我々は語る術を持たない。
私たちは他とは違う方法で想いを伝えていこう。
そう。必要なのは別の言葉、別のカタチ、別の想い。

「女性専用」
「提供したいのは場所ではなくライフスタイル」

広告クリエイティブを考えるうちに、私はこの2つのコンセプトに思想を織り込むことで、他社とは違うポジションを形成できるのではないかと考えた。


最終的にこのコンセプトを1つにまとめ
「提供したいのは場所ではなく想い」
に再定義した。


シェアサロンはただの場所貸しだろうか?
そうではない。
「人ありき」である。
そして、人の集合体が場を形成しているのであれば思想が宿る。



上原の退社相談からなし崩し的にスタートしたnuu。

好むと好むまいと、人生はゲームだ。
何か新しいアイデアがあるのであれば、飛び込んでみる。
その中で自分に見合った楽しい夢を見つけて、一心にそれを追いかけてみよう。
リスクも見返りも、すべて自分の中に見出さなければならない。
すべては自分でそれらをどう形づくり、どう自らに納得させるかである。

立ち上げ当初に私が考えていたことだ。

思索を重ねることで、シェアサロンという事業への熱を自らの中に見出していく。


つづく

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