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食本Vol.11『イカの心を探る』池田 譲

☆イカ目線の”世界”を知ることができる本

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いきなり旨そうな写真ですみません。以前旅をした静岡県賀茂郡西伊豆町ローカルグルメの『イカ様丼』です。西伊豆町はスルメイカが特産で、仁科漁港から水揚げされたスルメイカをすぐさま捌いて醤油漬けにしたものとそのままのもの2種類をごはんの上にドカッと乗せたイカ様丼が名物です。
イカ好きにはたまらない一品です。
そして私はイカが大大大好きです。

と、いうことで今回の食本はイカが主役です。
そして、イカを人間の”食”として見る本ではなく、タイトルの通り、イカという生き物がどのような世界観で生きているのか、イカ目線の世界を探検する一冊です。

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書店で思わず”タイトル買い”してしまった本です。だって大好物のイカの「心」って!

☆人間目線からだけでは理解できないイカの知性、社会性、そして心
私がすぐに言えるイカの名前といえば、スルメイカ、ヤリイカ、アオリイカ、紋甲イカ、剣先イカ、シロイカ、アカイカ…と、ダイオウイカ。一生懸命考えてもせいぜいこのくらい。
実は世界中にイカは450種類もいるらしいです。
イカだけで水族館できそう...イカ族館。

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イカは軟体動物で頭足類。イカとはどんな動物か、をイカ初心者にもわかりやすく解説。

著者の池田譲氏はイカ研究一筋20年。
とにかく、イカ愛に溢れた一冊になっているわけですが、本書が興味深いのは研究者ならではのイカ目線でのイカの世界を見せてくれていること。
イカの脳の大きさから始まって、イカの知性、イカの恋愛、イカの社会構造やヒエラルキー、などなど。
一般的にイカ、と聞けばイカ料理の数々を思い浮かべ、ある程度想像力を膨らませたとしてもイカ釣り漁船とか、呼子のイカ、とかどこまでいっても食や漁業と言った”人間から見たイカ”のことしか思い浮かびません。
ですから本書を読むと、日常全く考えることはないであろう「イカ目線のイカ社会」について触れる事ができます。人間にとって「イカは食べ物」以外見えていなかったコトが、実は違う。
人間が見ている世界というものは人間の一方的な目線によってできているのだな~とつくづく思います。
これは「当たり前」と言われてしまうかもしれませんが、これが「環世界」ということなのだな、と思ったりします。

最近、私の中でちょっとしたブームになっているのが「環世界」(かんせかい)。ご興味を持った方はぐぐっとググってみてください。
Wiki先生はこう言ってますね。
「すべての動物はそれぞれに種特有の知覚世界をもって生きており、その主体として行動しているという考え」。
人間なら人間として、さらには「自分」としてのみ物事を考えたり、見たり、行動したりするわけで、イカの立場に立ってなんて考えることはできないんです。
でも、自分主体でしか物事を考えようとしなければ、当然自分以外の事は理解できず、共生することもできないですね。
だからこそ、「他者(人間以外の動物や植物に対しても)を知る事」がこれからますます大切になってくるのではないかと思います。

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イカの脳は無脊椎動物の中で最大なんですって!

☆イカ尽くしの目次

序 章 イカの素性をさぐる
第一章 イカの脳をさぐる
    
・イカの脳の大きさ ・イカの脳のかたち  など
第二章 イカの社会性をさぐる
    ・イカの恋のかけひき ・イカの社会性を考える意味
    ・コウイカのヒエラルキー  など
第三章 イカの賢さをさぐる
    ・イカの見分ける能力 ・徐々に形成されるイカの記憶力
    ・イカも道順を記憶する など
第四章 イカのアイデンティティーをさぐる
第五章 イカの赤ちゃん学をさぐる
終 章 イカの素顔をさぐる

☆今回の”旅”でイカから教わった「食」とは「食べること」とは?
正確に言えば、イカ研究一筋池田譲先生(著者)を通じてイカから教わった、ということになりますが。
人間として私が見ていたイカは「食べもの」以外の何モノでもなかったのに、本書によって出会った「イカ」はイカ社会という社会で知的に生きる生き物だったということでした。そして人間社会とイカ社会がこうして同じ地球上で交わり、人間はイカを食べ物としていただいている、ということなですね。イカは人間をどう見ているのかしら。。。
今回の”旅”で教わった「食」とは?。
それは、
時には人間以外の生物目線になって「食」をとりまく世界を見てみると、新たな食の世界が見えるかもしれないよ、ということでした。

☆今回の食本
『イカの心を探る~~知の世界に生きる海の霊長類』
池田 譲著(NHK出版)

☆今日のおまけ~なぜイカ???

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昔ながらのパン屋さん、といった趣の下町のパン屋さんに入ったらこんなパンに出会ってしまいました。なさけな~い表情のイカさんがなんとも哀愁を漂わせていて、もう買うしかありませんでした。ちなみに中身はチョコ。
よ~く見ると足は8本。
それにしてもなぜイカにしたのだろう。たこのほうが作りやすそうだけど。









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