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ヒマラヤをうろうろと

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ネパールヒマラヤでトレッキングしたり調査した時のこぼれ話を書いております。時間軸は特に気にしていません。お時間あるときに是非どうぞ。
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#海外トレッキング

休息日には | ヒマラヤをうろうろと 7

午前11時にもなると、テント内の気温が少し上がり過ごしやすくなってきます。寝袋の中で着ていたダウンジャケットを脱ぎ、外に干そうとテントから出るとシェルパたちが少量のお湯で洗髪をしているところでした。 そういえば、三週間全く触れていない髪の毛はニット帽の中で頭皮と一体化し始めています。耳を澄ますと毛根の悲鳴が聞こえてきそうです。 お湯でさっぱりしたい気持ちに駆られますが、それは下山後の楽しみにとっておくことに決め、テント内に戻ると寝袋に潜り込みます。 キャンプでの休息日。

薄氷を踏みぬく | ヒマラヤをうろうろと 6

嗚呼、やってしまった。 胸下まで浸かったと同時に、下半身に急激な冷たさが。次いで感覚が一瞬にして遠くなってきます。まずい、とにかく上がらないと。 急いで周囲の氷に手を伸ばしますが、氷は割れていて安定しません。浮いている氷を手繰り寄せて、なんとか氷河上に戻りながらヒーヒー言っていると、シェルパのドミさんが急いで荷物を持ってきてくれました。彼も腰下まで濡れてびしょびしょになっています。 「寒いよ」 ドミさんは一言,私に向かって言いました。 *** 5月、春のヒマラヤ。

ヒマラヤをうろうろと 5

夏の北アルプスが、或いは週末の高尾山が常に賑わっているように、シーズン中のクンブ地域の山道は、視界のどこかに必ず人が入るぐらい、トレッカーで溢れています。 人種は本当に様々ですが日本人もかなり多く、後輩が下山した後日本語を話すことが無くなった私は、たまにすれ違う日本人の方々の会話についつい聞き耳を立ててしまうのでした。 ところが、ゴーキョから峠を越えてさらに西の谷に入ると、途端に人の気配が無くなります。いや、山中はこうあるべきですし、人がいない方が好みなのですが、あまりに

ヒマラヤをうろうろと 4

「一緒にいた相棒はどこだい?」 シェルパの一人が話しかけてきました。彼はアメリカ人トレッカーに同行していて、ルートが似ていることからこれまで何度か宿泊するロッジが一緒になっている顔なじみです。が、話をするのはこれが初めてでした。 「帰ったよ。ギブアップだ。」 私がそういうと、一緒に行動しているシェルパのドミさんがシェルパ語で何やら補足をしてくれています。それを聞いたシェルパは、ニヤリとしながら首を振り、食堂から去っていきました。 *** エベレストBCのあるクンブの谷か