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愛情は連鎖すると思う。もちろんその逆も。

先日、鬱病の先輩が突然仕事に来なくなった。

どう思う?

私はその先輩が好きではなかった。

どうしてかとあげたらキリがない。

初めは確かに物腰の柔らかい、優しい先輩だった。でも私は入って数ヶ月でよく寝てしまうから寝ていたら起こして、と言われる。新入社員だったから衝撃だった。先輩を起こすのは私の仕事では絶対にない。そんな先輩も社会にはいるのか、と、愛想笑いをしながら心の中で悪態をついて、何度寝ているところを見ても絶対に起こさなかった。

明らかにやる気がない。毎日隣で薬を飲んで、寝て、仲が良いんだか知らんが他の先輩と二時間ぐらいどうでも良い話を喋って。そして、仕事が終わらず残業をし、残業についてあたかも俺は頑張っているのにこの会社が残業をが必要な業務量を押し付けてくる、というようなスタンスで愚痴を吐く。

残業でも終わらない遅延を抱えてプロジェクトの仕事ができる人にその仕事が回る。仕事の時間に寝ずに、話さずにその人の倍くらい仕事をしている先輩に対して、礼も言わず、残業していない人は良いなあと小言を吐く。

私の教育係はその人だった。周りにも、わからないことがあったらその人に聞いてね、と言われた。何も知らなかった私はしばらく純粋にその人に質問をし、雑談をされたら答え、その人と一番関わるようになっていたのだが、

私は実験台だったのだ。

私が配属されたあたりから、精神科に通っていたそうだ。通っていることは知っていたが、その時からだとは聞かされていなかった。教育係、という名目で新しい風をその先輩に吹かせれば、やりがいが見出せその症状もよくなるのではないか、という上司の見込みでこのような形になったそうだ。

辛かった。

私は自分のことも責めていた。この仕事がやりたくて選んだ訳ではなかったから、そんな自分にも責任がある。もっと自分のやりたいことをはっきりさせて、高みを目指して就活をしたら、ここまで仕事にやる気のない絶望的な先輩のもとで働くことはなかっただろう。

そんなことを考えてしまって、友人や家族にも、あまり辛いということをぶつけることができなかった。たまにこぼしたとしても、その後にはスッキリ、という感情ではなくてどんより、が残った。その気持ちを味わってから、余計に内側に閉じ込めるようになった。

どうやったら生きやすくなるだろう。

たくさんのことを考えた結果、私は会社でほとんど喋らなくなった。先輩にしていた愛想笑いも、しなくなった。そしたら話しかけられることは無くなった。

仕事のことだけ、仕事のことだけを話す。困ったときだけ、わかりやすく質問をする。複雑な質問は頭で処理できないらしく、イライラし始めるため。

できる限り他の先輩に質問をするようになった。

心が真っ暗な時期を数ヶ月経て、年明けから何とか、その先輩との距離感も安定してきた。遠い距離感を保ち、他の先輩に頼る、というスタイルで心のバランスをようやく取ることができてきた。長かった。長かった。

と思った矢先。

体調不良で休んだ先輩。その日に課長に呼ばれ、行ったら、彼は今日から休職することになりました、と。

そんなに急にいなくなることができるんだ。と思った。突然すぎて、人ごとのように、へえ、と。



もう、新しい人が代わりに来た。

同じ会社なのに、私の仕事内容は変わらないのに、全く違う世界のように、明るく見える。

寝ている先輩を見なくてよい。先輩との距離の取り方について悩まなくてよい。ネガティブすぎる言葉を耳にしなくてよい。

負に敏感になっていた私は、私自身プラスなことがあっても目を向けることがいつの間にか苦手になっていたことに気づいた。苦手というか、周りのちょっとした良いことに鈍感になり、嫌な部分、嫌なこと、をよく考えるようになっていたようだ。

恐ろしい。私は先輩から、たくさん影響を受けていたようなのだ。


ただ、このことから、もしかしたら先輩も私の知らない先輩の先輩や、周りの人間、環境から、影響を受けていたのではないか、と思ってしまったのだ。

心に栄養がない人は、人には愚か、自分にも栄養を与えることができなくなる。

社会に出て、もしくはそれ以前から、そういうふうに何かを諦めて、わからなくなって、周りもそうだろう、と思うことで自分を肯定しようとしていたのではないか。

あるいは、そのようなことを言われて、目にして、そういう人になってしまったのではないか。


私自身、去年はその影響を受けたピークで、人のことが好きだったはずなのに誰のことも好きではなくなり、

できるだけそうやって仕事をしない人の分が回ってこないように、自分の最低限のことだけをやれば良い、という考えに陥ってしまった。

話してからそういう自分にとって辛い人である、という可能性があるならば、誰にも本音を言わず、最初からうわべで関わろう、というふうに、心を閉じてしまった。


その時は本気で、心からそういう考えになってしまって。後になって気づくから、また怖い。


愛情は、連鎖する。伝染する。

だから私は忘れないでいたい。

心にささくれがある集団の中にいて、心にささくれができないほどタフではない。

だからこそ、自分で自分の場所を選ぶのだ。

今回は環境の方が変わってくれたけど、おかしい、と思ったらその場からすぐに離れたい。

そして、自分の中に愛情と栄養がある状態で、人と接したい。

本当は辛い状況の中でも愛を忘れないでいたいというような記事を書こうとしていたがそんなものは無理だった。あの人に優しくするほど、エネルギーを持ち合わせていない。そんな時もある。それが私の本当の気持ちだ。



最後まで読んでくれた方、ありがとうございます。

ご自愛ください。

それでは、おやすみなさい。


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