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給料を上げてほしいと言う人

ある時、昼食を食べているともうすぐ入社して1年になる若手社員Aさんから話しかけられた。
「わたし入社してからもうすぐ1年なんですけど、評価面談ってやってもらえるんですか?」

3月に評価面談があると上司から聞いているよ、と答えた。

Aさんは少し不満げに、「私3月入社なんですけど、3月に面接なんですね。昇給ってしますよね?どれくらい昇給するとかもう決まっているんですか?知ってます?」
以前勤めていた会社の方が条件は今より良いのに給料は同じ。
こんなに大変な思いをして働いているのに給料が上がらないのであればわたし辞めますと言っていた。

正直、「その条件を納得して入社してきたのは君じゃないのか。」と思った。
一応そんな話があったことは上司に伝えたが、別に条件が合わないなら辞めたらいいのにとも思った。
人の大切な休憩時間に乱入してきて自分の主張をまき散らすような人は、今後も何かにつけて同じことを繰り返すに違いない。
私は少しでも環境がよくなるように頑張るね、と精一杯その場しのぎの言葉を残して立ち去った。
あぁ、すごく疲れた。というか、面倒だった。

その子が昇給するのかどんな評価をされるかはわからないが、私の中でのAさんの評価は0点である。


そういえば、昔と比べて人と接するとエネルギーを消耗するようになったと思う。
特に負のエネルギーと対峙すると、心が疲れる。

以前は終電まで友人や同僚と何時間も恋愛話や仕事の愚痴を話してすごした。あの頃は負の感情も含めて、自分の感じたことを全て本音で伝えることが正しいと思っていた。
本音で向き合っていたから何時間も語り合えた。若かった。

大人になって気付いた。
人とのつながりはそんなに単純ではない。
自分の言葉で相手が傷つくことも知り、全てを本音で言ってはいけないことも分かってきた。
どんなに心の中で「あの会社に転職するのはやめた方がいいと思う」「あなたの彼氏は絶対にろくでもない男だよ」「この集まり表面上の話ばかりでつまんないな」と思っても。
思ったことをそのまま伝えた後に責任が持てないことは、いうな。
それを理解するまでに33年かかった。

「給料をそんなに上げてほしいなら私にではなく上司に言え」
と言い放てたらどんなに楽だろう。
今日はハーゲンダッツを買って帰ろう。


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