キャラクター新年会 (1分小説)
ドナルドが、カーネルサンダースのグラスに、ビールを注いだ。
「カーネル、年末からずっと働いているだろ?」
「ああ。今日で12連チャン。
ちょっと前まで、サンタクロースの衣装を着させられて、正月からは、羽織はかまで、一日中突っ立ってる」
ドナルドは、真っ赤な唇を広げてフフフと笑い、 小皿に入った唐揚げを指差した。
「みんな似たようなもんだよ。唐揚げ、食べる?」
「よせよ。もう、鳥肉なんか見たくもねえ」
カーネルがしかめっ面をしてみせると、他のキャラクターたちは、プーッと吹き出した。
「カーネル、ちょっとは、ペコちゃんを見習いなよ。彼女、不二家のお店で、甘いのばっか見てんのに、居酒屋で、まだパフェ食べてるわ」
生クリームを、ペロペロ舐めていたペコちゃんが、こっちを向いた。
「今のうちに、これぐらい食べとかないと、バレンタイン商戦まで、体力が続かないの。キティちゃんも、どう?」
キティちゃんは、ううんと首を振った。
「おやおや、相変わらずノリが悪いな、仔猫ちゃん。愛想がないから、オレより人気出ないんだよ」
悪酔いしたミッキーが、絡んできた。
「だいたい、日本の冬はイベント多すぎなんだよな。人間たちも、ちっとは、ウチらのストレス考えてほしいぜ」
キャラクターたちは、ウンウンうなずいた。
ミッキーが、3杯目のジョッキを空けた時、佐藤製薬のサトちゃんが、居酒屋に現れた。
「おつかれ!」
「おつかれィ、サトちゃん」
サトちゃんは、両手いっぱいに胃腸薬を持っている。
「みんな、食後に飲んでね。これで、二日酔いも、食べすぎも吹っ飛ぶよ」
サトちゃんの気遣いに、みんな、心があったかくなった。
「よっしゃ。今日は、朝まで無礼講だ!」
【翌日】
「ママぁ、ミッキーのお口、お酒くさい」
人間の子供たちが、さっきからオレを避けてゆく。
しまった。サトちゃんから、口臭消しも貰っておけばよかった。
「ママもそう思うわ、なんだか、動きも鈍いし。せっかく『夢の国』まで来たのにね。
今からでも、サンリオ・ピューリオランドに行き直す?」
サンリオ。
オレは、キティちゃんを思い出した。
ハッ!
アイツには、もともと、口なんてないじゃないか。
「今年は勝つわよ」
アイツの、声なき声が、聞こえたような気がした。
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