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漫画みたいな毎日。「抱っこしてほしいから、抱っこしてほしいんだ。」

二男のギターレッスンの送迎の待ち時間に、末娘とショッピングセンターで買い物をしていた。その日は、こどもの日。GWの真っ只中で、ショッピングセンターも混雑していた。

ギターレッスンの時間は、丁度お昼時。フードコートも混雑している。うどん屋さんは長蛇の列だ。長蛇の列とはよく言ったもので、人が並ぶ様子が本当に長い長い蛇がくねくねと這い進む様子に見えてくる。

フードコートを横切っていくと、トイレへの近道。末娘と私は手を繋いで、蛇のような行列の横を人の波を避けながら歩いていく。

その時、こちらに向かって歩いてくる親子が目に入った。お母さんとおそらく3歳くらいの男の子。男の子はお母さんの背中を懸命に追いかけるように、急ぎ足で歩いている。

お母さんの歩幅に追いつくのは大変だよね、と横目て見ながら通り過ぎようとしたとき、男の子が大きめの声で言った。

「抱っこ!」

すると、お母さんは、こう返した。

「なんで?!」

お母さんにも抱っこ出来ない事情があったかもしれない。

疲れていたのかもしれないし、さっきまで抱っこして人混みを歩いて来たのかもしれない。日々の生活の中で大変なことも沢山あるだろう。その場面だけでは、それぞれの家庭の、それぞれの親子の事情はわからない。

お母さんにも、色々あるんだろうなぁと思った瞬間、男の子は大きな声で泣いた。お母さんは、泣いた子を振り向くことなく、手を引いてどんどん歩いていってしまった。

その場面から、しばらく時間が経ち、ショッピングセンターを出る頃に、末娘が、ぽつりと呟いた。

「・・・なんだか、かわいそうだった。」

もしかして、さっきの男の子のことかなと思い、

「うどん屋さんの横で、抱っこしてもらえなくて、泣いてた子のこと?」

と尋ねると、

「うん。抱っこしてもらえなくて、かわいそう。」

「そうだねぇ・・・抱っこしてほしかったんだろうねぇ。」

「うん。」

末娘はそれ以上、何も言わなかったので、私もそれ以上、何も言わなかった。

抱っこして欲しい理由

疲れている
甘えたくなった
お母さんにくっつきたくなった
不安になった
なんとなく

理由を挙げようと思えばいくらでもあるのだろうけれど、
そんなことは、子どもたちには、どうでもいいことなのだと思う。

抱っこしてほしい

ただそれだけなのだと思う。

〈抱っこしてもらったら、全部まるごと大丈夫になる〉

そんな魔法の力みたいなものが、抱っこにはあると思う。

少ない語彙を尽くして、抱っこして欲しい理由を子どもに言わせることほど、無意味ものは無いのではないだろうか。

〈抱っこ〉と言われたら、今思い当たる様々な大人の事情、

モヤモヤも、
イライラも、
まとまらないアレコレも、
ちょっと脇によけておく。

お互いに満たされるのが、抱っこだと思う。

ふわふわの
おひさまの匂いがする
柔らかい肌にふれる幸せ

味わえるうちに味わったらいい。

子どもたちは、ふと気がついた時には、「抱っこ」と言わなくなっているから。

「抱っこさせて」と言っても、怪訝そうにされる日はあっという間にやってくるのだから。

いつだって、抱っこしているつもりで、あたたかい子どもの体温を感じ、やさしく抱っこされているのは、大人である私の方なのだと思う。

お互いに今を抱きしめ合おう。
抱っこ万歳!


ヘッダーはみんなのフォトギャラリー・yukkoさんの水彩画をお借りしました♪ありがとうございます♪

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