４月３０日　otogibanashi

「教室を飛び出す恋をしなさい」

前に遊んだ女の子に言われた一言。
初対面で「あなたはどんな言葉に生かされていますか？」
って聞いてくる、賢こさの前のめりがすごい子。
賢さの明大ラグビー部ね。前へ前へ。
法学部って言ってた。
案の定、すぐには答えられなくて、
目を泳がしながら「逆にどんな言葉に生かされてる？」って
震えて聞いたら出てきた言葉。
胸、撃ち抜かれた。中学の時の先生に言われた一言なんだって。
人生は一度きり、チャンスが訪れたらいの一番で飛び出しなさいって。

現実に教室を飛び出したそんな人は見たことないはずなのにね。
瞼の裏にくっきりと。とてもはっきりと飛び出す誰かの後姿が見えてくる。
どこか想像できるし、なんか思い浮かぶ。
スローモーションで廊下に駆け出して行く白いソックス、
シャンプーの匂いまでしてきそうな黒髪、
隙間窓から見える入道雲と青空。

心象風景。

誰もが心に描いている理想の青春風景が、バチンと言葉になった感じ。
この歳になっても、記憶の中の女の子を、自己嫌悪の雨で濡らしては、
その影ばかりを追いかけてね。ちょっぴり辛い現実から目を背けて。
６歳下の初対面の子に、心象風景を覗かれる。
そんな恥ずかしさで、ずっと顔赤らめて下向いてた。

先日、そのまんまのことが目の前で起きた。
まあ、コントでよく見る、空港まで好きな女に会いに行くやつ的なアレ。
飲み会の最中に「彼女が急にうちに来る！」って喚き始めて、
「ごめん！」って居酒屋から飛び出してった。
僕と女友達の２人取り残して。
付き合い始めて１ヶ月くらい。

うわ〜マジ現実でこんなこと起きんだって、心ではニコニコしてたけど、
女の友達と会話が続かなくて、１５分後には壊死。
意外と辛かった。目の前でやられると。
もちろん取り残された辛さとかじゃなくて。
飛び出せる恋をしてる羨ましさっていうのかな。
まあ、空気読んだらできないじゃん、なんだかんだ。

でも、ちはやふるでも言ってた。チャンスの扉には取っ手がないって。
ただその扉が会いた時に、飛び出せる勇気を持っているかって。
チャンスを得るには準備が大事なんだって。
この場合、チャンスとはちょっと違うけど、
勇気を持って扉の向こうに飛び出して行く後ろ姿はそれと等しく格好が良かった。
１０年くらい毎週会ってた友達だっただけに、
初めて見る姿に驚いたってのもあるかも。
口ポカンだった。

心象風景。
現実には起き得ない、心の中の想像の景色。
現実には起き得ないと思っていた空想の景色。

アメリカの絵本作家の言葉ね。

恋に落ちると眠れなくなるでしょう。だって、現実は夢より素敵だから。
ードクター・スース

頭ん中のより、目の前の現実。
現実に勝る、夢はナシ。
所詮、男の妄想なんて、おとぎ話。
ただ、こんな気持ち悪い文字列並べる自分だけは、
全部おとぎ話であってくれと思うわ。ひーーー