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2019.2.6(水) 天才になれなかった全ての人へ

このタイトルを読んで「ああ、あの話か」と思った人も多いですよね。
noteとかcakesを読んでいる人なら、なおさら知っている人が多いかも。

「左ききのエレン」という漫画で、表紙の次の1ページ目にこの言葉が書かれています。

「天才になれなかった全ての人へ」

この漫画を読んでいる読者のほとんど全員が天才ではないよね。
読者でなくても、地球上の99.9%の人がそうじゃないのかな。
そう最初は単純に思ったりしていたんですが、最後まで読み終わって、今さっき、改めてこの言葉を書いてみて、そうではないなと。
この言葉の前に書かれていない言葉があって……

「(天才になろうともがいたけど)天才になれなかった全ての人へ」

そういうことだよね、と今思いつきました。

この漫画、タイトルだけは知っていて、多分最終回をちらっと読んだ記憶があって、なんとなく話題になっていそうという印象はあったんですが、あまり食指が伸びなかったんです。
なんでかというと、絵柄があんまり好みじゃなかったから。
お世辞にも上手い絵じゃないんですよね、正直言って。

それでずっと手を出していなかったんですが、昨年の忘年会で会社の上司、というか社長が激推ししていて、それじゃあいっちょ読んでみるかと思ったわけです。
ちょうど一週間前くらいに、まとめ買いのセールで1冊5円だった時があったので、この際だからと思って大人買いしました。
まあ、大人買い言うても、最新の11巻だけが600円だったんで、合計650円ですけども。

「ジャンプでリメイクが連載されてるけど、原作がいいんですよ! 絵は上手くないって言うか、ネームですよネーム! でもそれがいいんです!」

と原作を強く勧められたので、原作を買って読みました。
「ネームです」という言い草もどうかと思うけれど、背景はほとんど描かれていないし、人体のバランスが変で子供の落書きかと思う絵もあるし、登場人物の顔の区別がつかない時もあるし、ネームと言われればそうかも……と思わざるを得ないような気も。

絵柄は読んでいるうちに慣れてきたので、最後まで読み通してみると、なるほど、勧められたわけがわかった気がしました。

主人公の光一は広告代理店のデザイナーで超一流の仕事をする天才に憧れて、必死に努力して天才になりたいと願うのだけど、その才能は与えられなかった凡人。
かたや、もう一人の主人公エレンは、絵を描くことには天才的な才能があるけれど、それしかない、絵を描くことでしか生きられない天才。
この二人とその周りの人たちをめぐる物語なんです。

僕は広告そのものとは関係ない仕事だけど、エンジニアでもSIerとかではなくクリエイティブ寄りの制作会社でずっと働いていたから、クリエイティブ業界には片足突っ込んでる感覚はあって、光一のクリエイターとしての葛藤とか共感するところもあります。
僕はマルチ・ポテンシャライトという性質を持って生まれてしまったので、一つの才能に全てを賭けるような生き方ができる人間ではないのですよね。
どう考えても光一側の人間なんです。
不器用な天才ではなく、器用な凡才であることに間違いないんです。

僕は自分自身が一流の仕事ができる人間ではないということは、けっこう早くから悟っていて、2流あるいは1.5流レベルの仕事ができる分野を複数掛け合わせた、そのクロスした横断的な分野で第一人者になる、それしかないよなと思ってはいたんです。
今でもそう思っています。
でも、やっぱり中村勇吾だったり、真鍋大度だったり、そういうスターの仕事には憧れは持ち続けているんです、今だって。

超一流の天才の仕事を目の当たりにして、天才を目指した凡人が自分の生まれ持った才能では到底かなわないと思い知ったとき、その事実をどう受け入れるのか、あるいは受け入れられないのか。
それは人それぞれで、その葛藤と苦しみと諦めと受け入れと乗り越え、そんな諸々のことがここには描かれているんですね。

なんだか、読んでいて苦しいなぁと、思ったり。

時系列が入り組んだ複雑な構成や伏線の張り方が上手いなと思うところもあって、再読したいのですが、しばらく寝かせてからかなぁ。
すぐには読みたくない気分ではあります。

ジャンプ版もあるし、原作版も第2部の構想があるようなので、それも楽しみですね。

「天才になれなかった全ての人へ」

自覚がある人は、一度読んでみてはどうですか?


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