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起業家におくるネガティブシンキングのすすめ

ネガティブ、それは物事を悪いほう、悪いほうへと考えてしまうこと。通常こういった性格は「暗い」「重い」などの理由で嫌われる、もしくはそっと距離を置かれます。そういう人の口癖といえば例えば以下です。

・どうせ~~
・自分なんか
・だって、でも
・死にたい

それで本人が幸せならいいのですが、実際のところだいたいのネガティブな人は幸せではありません。好きで暗いことを考えているわけではないのです。

しかし、実はこのネガティブは2種類存在します。それはネガティブな「性格」と、ネガティブな「考え方」です。

1つ目の性格ですが、これはもう本人でもコントロールできないぐらい全ての発想がネガティブになってしまうことで、本人も周りもあまり幸せになりません。

一方で2つ目の考え方ですが、これはあくまで「手段として」のネガティブであり、本人はスイッチのオンオフのようにネガティブとそうでない考え方を切り替えることができます

私は事業自体が壮大なため、よくポジティブな人だと言われますが、実際のところかなりネガティブな人間です。17歳ごろまで1つ目の「性格のネガティブ」が圧倒的に強かったですが、その後この切り替えを20歳ごろに習得しました。

この2つ目の手段としてのネガティブは意外とすごく便利です。特に起業してからは一つの才能かのように自分で思っているぐらい便利です。

なぜ才能のように思うかと言いますと、起業家になる人の多くが意外とネガティブを手段として使えていないということです。それは多くの起業家が「世界を変える」のようなポジティブな性格をしている人が多いためです。そんな性格でなければ大胆な行動をすることなんてできないでしょう。

しかしそのポジティブな性格なため調べるより前に「なんとかなる」と思って「まず行動」してしまいます。それが災いして、少しの失敗で「こんなはずではなかった」と落ち込んでしまい、いわゆる「起業家うつ」になってしまいます。そういう方々にネガティブな手段を伝えてしまうと「すべて否定されてるかのように」感じてしまうことが多いのです。

愚者は経験から学び、賢者は歴史から学ぶ」という格言がありますが、この「歴史」というのは「すでに記された経験や文献など」をさし、多くのリスクは共通点があり、事前に低減・回避できるものが多いのです。ただそれを知ろうと思うのは「ネガティブさ(慎重な想像力)」が必要になってきます。

そのため今回はその手段や考え方の一つとしての「ネガティブシンキング(思考)」がいったいどういうものなのかを具体的に紹介したいと思います。

リスクを取り除く

まず何のためにこの手段であるネガティブシンキングを使うのかというと、それは事業を進めるうえでのリスクを取り除くためです。リスクとは簡単に説明すれば「悪いことが起きる可能性」や「可能性のある悪いことそのもの」です。

※厳密なリスク評価は通常、ハザード(危険なもの)と、可能性や頻度を掛け合わせて計算します。例えば塩は危険度が低いですが、頻繁に摂取するとリスクが高まります。

私自身もともと起業する前からずっと社会問題というリスクを研究しているのと、自分の人生におけるリスクをいかに低減・回避するかを日々考えています。そのため起業後も自然とリスクを考えることができています。

そのため「失敗をつぶす起業の科学」もすぐに受け入れられるものでした。リスクを少なくしたい思想はありますが、細かい部分でどんなリスクが発生するのか知らなかったためです。

事業運営における一番大きなリスク

ビジネスをする以上あたりまえですが、商品・サービスを販売しなければいけません。起業の科学でも書いてありますが、以下2つが大きなリスクです。

・人が欲しがるものを作れない
・欲しがるものを作れても売上に対して費用が大きすぎる

これらのリスクをどのように低減・回避するかは「起業の科学」や以前書いた「顧客のペインがすべてを決める」をご参考ください。また以下は先日起業の科学著者である田所さんが公開したIPOまでのリスクです。

※出典:リスク/オポチュニティーのチェックリスト

ではこれらをより簡単にまとめ、どうやって低減・回避したらいいのかを紹介します。

労務のリスク

まず最初に出くわすのは「仲間探し」、つまり採用や組織運営のリスクです。

あたりまえですが、ビジネスの規模を大きくしていくためには一人では無理です。一人の時間もお金も限られています。そのため他人と一緒に事業を運営していくことになります。

起業家界隈ではよく「成功も失敗も6割が人によるもの」と言われるぐらい重要なのです。ポジティブな人は「成功が人」なのはわかるかもしれませんが、「失敗も人」なのはあまりピンとこないかもしれません。

出展:スタートアップ共同創業者の見つけ方、付き合い方、別れ方

人で失敗するというのは、まず経営者自身の問題もありますし、経営者が選ぶ社員や役員などの問題もあります。単純に性格が合わない(両者に問題はなく相性の問題)というのもありますし、どちらか一方の問題もあります。

だいたい共通する悪い人は2パターンいます。

1、性格がネガティブな人

この場合の人は、よく自分と他人を比較して劣等感や優越感を感じ、嫉妬や支配を他人に対して行います。この記事の冒頭で挙げたような口癖も多いかもしれません。

自分の存在を認めることが難しいため、他人の存在も認めることが難しいのです。友達や恋愛としては人によっては有りかもしれませんが、こういった方とは「仕事」をしないほうが無難です。

また他人と比較ばかりすることに思考を使ってしまいメタ的な発想をとれず、視野狭窄・知識不足になる人も多いと思います。

2、意図的に悪いことを行う人

完全にだましにかかってきたり、法的な穴をついてお金をとろうとしてくるような人です。いわゆるサイコパスの悪い側面を存分に発揮しています。

残念ながらポジティブな人には絶対にこういった人は見抜けません。なぜなら意図的に悪いことを行う人にとって騙しやすい人はポジティブな人だからです。できるだけ人事やナンバー2の人に手段としてネガティブを使える人を置き、見抜けるようにしておきましょう。

※これらから弊社は、性格がポジティブ、手段としてネガティブ、知的好奇心の高さで人を採用するようにしています。

財務のリスク

労務と同じぐらいリスクが大きいのはお金やその他財産の問題でしょう。資金調達のさいの投資家に関する分析ポイントは以前「スターアップが投資家を選ぶときの10項目」で紹介しました。

他にも事業において財産で問題になりやすいのは商標や知的財産です。

商標に関して言えば、製品が有名になってから商標登録をし忘れてた・もしくはすでに他に使っている人がいた、となると大変です。(最近は簡単に商標を調べることができるサービスもあります)

知的財産では競合から訴訟を吹っ掛けられるなんてことはアメリカではよくあるそうです。例えばFacebookとMicrosoftや、AppleとSamsungなどです

リスク低減のための法務

これらのリスクを低減・回避するために使われる最も一般的なものが「契約書」です。「もし~~という悪いことが発生したら、--で対処する」ということを事前に決めるものだからです。

契約書が有効に適用されるのは、法律と裁判所と警察があるおかげです。もしそれらがなければ契約書なんて無意味で、悪いことが起きても力の強いほうが勝ってしまうからです。

逆に言えばリスク(対立の可能性)のあるところ契約書ありなのです。そして極端な話、相手が悪いことをしたとしても何も問題ないという姿勢なら契約書もいらないのです。そのためそもそも契約書は性悪説(性弱説)に立っています。

その他のリスク

商品・サービスが売れるのか、良い人を集めることができるのか、財産をしっかり増やして守れるのか以外にも以下のようなリスクがあります。

・評判

いい評判は普段のPRや広告によって作れるかもしれません。しかし何かのきっかけで評判が悪くなってしまうことはあり得ます。

商品・サービスの品質が悪い、悪い人を採用してその人が辞めた後にSNSで色々書かれる、資金調達で失敗して投資家界隈で噂になり次の資金調達が上手くいかなくなる、などです。

ZOZOTOWNの田畑さんのように書籍やサロンによっていい評判を作ることもあれば、炎上によって無駄に悪い評判を作ることもあります。

※出典:ZOZOTOWNピンチ 田端信太郎の発言が炎上し退会祭り 低所得者を見下したツイートが原因か

評判とは経営者の外見や振る舞いも大きく影響します。政治家はいかに票を集めることができるかなので、とにかく色んな場面で「イメージ」を重要視しています。結局、多くの人の最初の決め手になるのはイメージや評判だったりするわけです

・セキュリティ

いまやほとんどの会社でITを使っていると思いますが、情報漏洩やハッキングなどのセキュリティに関することもリスクになります。

このリスクへの考え方が甘くて問題を起こした企業といえばコインチェックが有名でしょう。セキュリティといってもものすごく難しいことではなく、日々の地道な対策だったりしますが、それは組織のセキュリティへの意識が大きく影響するのです

このほかにも多くのリスクがあると思います。コメントなどでどしどし教えてください!!

最後に

よく成功した起業家に「起業家ですごく成功する人はどんな人ですか?」と聞くと、すごくいい家庭で育ったか、すごく悪い家庭で育ったかと言われます。

悪い家庭環境で有名な起業家といえば海外ではスティーブ・ジョブズやイーロン・マスク、国内ではメタップス佐藤さんやSHOWROOM前田さんです。

ではなぜ家庭環境が悪いのに成功できるのでしょうか?それはいくつか理由があります。

まずこれ以上悪いことを知らないためポジティブになります。次に悪い家庭環境が直接的に原体験となり行動力のエネルギーになります。3つ目は小さいころから悪い人間を見てるので、誰がいい人間か分かります。そして最後は、常にリスクを管理できるためです。自分のやりたいことを優先するよりも他人が求めているもののほうがリスクが下がります。

このように性格がネガティブなのは大変ですが、そこから手段としてのネガティブに転換できると才能になります。ポジティブな人がネガティブになることはとても難しいからです。

それからネガティブなだけの人は議論に強くなります。相手の論点の悪い側面を見つけて徹底的につつけるからです。しかし議論に勝っても、ポジティブな解決策を生み出せなければあまり意味はありません。ポジティブな解決策を持つと同時に、ネガティブな人との議論に対して、仮想的なネガティブな自分を生み出し自身の論点を磨くことも重要です。

ネガティブかポジティブかなんてことは所詮解釈にすぎません。コップの中に半分水が入ってたとして、「半分も」入ってるととらえるか、「半分しか」入っていないととらえるかはその人の解釈や目的次第です。あらゆる統計情報に対しても同じです。だからこそ解釈に支配されるのではなく、自分の目的にのっとって解釈を飼いならす必要があるのです

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