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比較で分かる!!日米の転職事情

日本の企業とアメリカの企業では、転職に対する考え方に大きな違いがある。日本社会では、今いる会社の外に目を向けず、ひたすらその企業の為に働く人も多い。なぜなら、彼らには「終身雇用制度」という強力な安心材料があるからだ。しかし、この終身雇用制度こそ、日本企業の成長を阻害している要因だと僕は思う。

■こんなに違う!日米の転職事情

米国労働省が行った調査※によると、アメリカで大卒の男女合わせて25歳から29歳までに経験する平均の仕事数は3つ。更に、30歳から34歳までには平均して2つの仕事を経験するという。これほど、アメリカの人材市場は流動的なのだ。転職に対するイメージも日本とは違い、キャリアアップという非常にポジティブな捉え方をされている。
(※http://www.bls.gov/news.release/pdf/nlsoy.pdf)

更に、アメリカでは企業のトップに近いような人材でも流動的に動いている。むしろ、有能な人材だからこそ、多くの企業を渡り歩いているのだ。例えば、僕自身が実際に目の当たりにした例では、シティバンクで重要なポジションに就いていた人物が、半年後には別の大企業で役員をしていた。

そこで気づいたことは、彼らのプレゼンテーション能力の高さだ。自分が今までどんなプロジェクトを成功させてきたか。どんな能力を持っているか。これらをポジティブにアピールできる能力を彼らは持っている。そうすることによって、自身のキャリアアップに繋がる新しい企業へと転職していくのだ。

一方、日本の転職事情はどうだろうか。

人材エージェントや募集の案内を介して、応募があれば面接し、採用する。しかし、このプロセスも短い期間で行われる為、応募した方も企業についてよく理解できていないことが多い。また、企業側も採用面接だけではその人の強みや能力を把握することは不可能だ。これでは、ただ欠員が出たポジションを埋めてるだけになってしまう。「新しい人材を外部から入れることによって、今までなかったイノベーションを生み出す」という本来の目的からは、程遠い。

この従来の転職市場を変えるには、個人側と企業側の双方に改善が必要だ。まず個人としては、キャリア構築能力を上げること。そして企業に自分の実績や強みを、説得力を持って伝えられるコミュニケーション能力。この2つをもっと向上できれば、企業とのミスマッチも減らせるのではないだろうか。

また、企業側としては従来の採用方法を再考する必要がある。人材エージェントを使うのか、使わないのか。採用段階で、その人材の強みを知るにはどのような方法が有効なのか。これらの点を、もう一度考慮しなくてはいけない。人材は企業における生命線ともいえる。だからこそ、企業側は真剣に採用方法の改善に取り組むべきだ。

■日本の終身雇用制度が生み出した弊害とは?

下記の表は日米の勤続年数を表にしたデータである。1年未満を除けば勤続年数15年まではさほど大きな差はないが、勤続年数20年以上になると日本は約22%、アメリカは約10%と倍以上の差が開いている。これは日本の労働市場の特徴である、終身雇用制度の影響だろう。

(参考画像:http://www.jil.go.jp/english/lsj/general/2013-2014/3-1.pdf)

現在の終身雇用制度が一般的になったのは、第2次世界大戦終戦後だという。高度経済成長期において、多くの企業にとって労働力の確保が目下の課題であった。「一度その企業に就職したら、よほどのことがない限り、解雇されることなく働き続けられる」というのは、労働者側にとってみれば安心・安全な制度である。

しかし、戦後の高度経済成長期と今の日本の経済状況は全く異なっている。人材が固定化したことによって、生まれたデメリットも少なからずあるのだ。スピード感に欠け、変化に素早く対応できない。その結果、売上が伸び悩み、収益も落ちる。構造改革ができない。これが、終身雇用に支えられた、日本企業が過去20年間でやってきたことである。中で、も僕が最も危機感を感じているのがイノベーションだ。既に持っている商品を少し良くする為の、改善系イノーべションは同じメンバーで固定された企業からも生まれるだろう。しかし、もっと徹底的な新しいイノベーションを生み出し、今までやったことのない分野に挑戦するには、外部からの力が絶対に必要だ。

実は、これは僕自身のキャリア経験から得た学びでもある。最初に入った会社で担当したのは、コンピューターのハードウェア。その後小売・物流、ソフトウェア、そして今の広告業と、全く違う畑を渡り歩いてきたので、その業界で当たり前とされていることが、僕には当たり前でなかった。しかし、外部から来た人間だからこそ見えてくる改善点や、新しいアイディアがあることも確かなのだ。

■なぜイーロン・マスクは画期的イノベーションを起こせたのか?

全く違う分野にいた人間が、新しいイノベーションをもたらした良い例は、イーロン・マスクだろう。ロケットや宇宙船の開発・打ち上げを事業とするスペースXと、電気自動車会社テスラ・モーターズのCEOを兼任している。

(参考画像:http://www.sofakingpodcast.com/elon-musk/)

当の本人はもともとソフトウェアのエンジニアだ。「従来の自動車を変える」「これからはいくつかの惑星での生命維持が必要になる」彼の掲げるビジョンは、とてつもなく壮大。しかし、実際には自動車と宇宙事業、両方の分野で成功を収めている。全く違う分野からに参入したからこそ、柔軟な発想を持ち、斬新なイノベーションを起こすことができたのだろう。ちなみに彼がスペースXを立ち上げたのが2002年。その僅か10年後には、民間機で初めて国際宇宙ステーションへのドッキングに成功している。極めて短い期間で快挙を成し遂げたのも、彼の功績の一つだ。

新しい技術やアイディアが次々に生まれる現代では、このテスラやスペースXのようなイノベーションを起こし、世界で戦わなくてはいけない。人材の流動化が進まない今の日本企業に、それができるのだろうか?

■イーロン・マスクが明かす、成功の秘訣

最後に、彼の印象的なエピソードを紹介しよう。

あるインタビューで、イーロン・マスクはドイツの自動車メーカーについてこう答えている。「彼らが過去にしがみついてる限り、未来はない」彼が指摘したのは、従来のガソリン車の機能そのものではなく、過去の制度を変えようとしない企業体制だった。常に先を見ているトップ起業家のこの発言、上を目指すベンチャー企業にとっては、大切な教訓である。日本の大企業はどう捉えるだろうか。良薬口に苦し、と飲み込んでくれることを願っている。

(参考記事・調査)

http://www.forbes.com/sites/brookecrothers/2015/10/09/tesla-ceo-elon-musk-takes-shots-at-german-carmakers-apple/#198d75fc3b86


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