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【6】N高を立ち上げてから今まで、N高教員に伝え続けてきたこと(不登校からのキャリアデザイン⑥)

※この記事は2019年8月18日に京都市で開催した、イベント「不登校からのキャリアデザイン〜「行かない」の先を、生きやすく。〜」における講演・パネルディスカッションの書き起こし原稿になります。登壇者・主催者のプロフィールはこちら


弱者救済ではなく、そこに才能が埋もれている。

中:私は N 高校という通信制の高校の立ち上げを手伝ったんですけども、現状成功しているんです。4 年目を迎えて 1 万 1000 人を超えています(2019年8月時点)。実は N 高校立ち上げで、通信制高校の企画をどこにもっていったかというと、IT 企業のドワンゴとエンターテインメントの会社の角川にもっていったんです。

企業側にもっていった。それも学校現場とは全く真逆の IT 企業やエンターテインメント の企業に一緒に学校作りませんか?と、もっていきました。そこで面白いなとなって一緒に作ったのが一番の成功要因だと僕は思っています。当たり前の人材を育成する学校じゃないものを、当たり前じゃない企業がつくっていくというところが成功の秘訣だと。

曽:就活アウトローも、弱者救済ではないんです。これだけ才能ある人をとれる採用のチャネルなんだよと言っていて。角川さんとかドワンゴさんにも、そういう思いがあったんじゃないかなと。弱者救済ではなく、そこに才能が埋もれていると。そういう気持ちがあったんじゃないかなと思います。

中:その通りですね。もう一つ言うと、じゃあ次何してほしいかというと、次は企業側です。 学校現場、とくに全日制の小中高校の先生方は、そういう発想になるには時間がかかる。今やっていることを日々やっていく必要があるので。だとしたら、それを誰が話すかというとやっぱり企業側です。企業側が学校現場に入ってきて、今求められている人材っていうのはこういう人材ですよということを、ちょっと声高に言う必要があるかなと。そういう面、人材部門での産学連携が、実はぼくは学校現場を変えていく根幹の話かなと思っています。

曽和さんのお話にもあったように、不登校の子たちが決して弱者じゃないんだということを主眼として 4 年前に立ち上げましたN高等学校、昨年立ち上げましたクラスジャパンという活動。この 2 つの活動の中身を少し説明させていただきます。今までの考え方をちょっと変える必要があるかなと思っているので、そんなお話ができればと思います。

24 時間フィギュアのことだけを考えていたい。

中:(スライドを示し)ご存じですか? この子、フィギュアスケートの紀平梨花。N高等学校の生徒 2 年生(2019年8月時点)です。中学 3 年生のちょうど今頃だったと思うんですが、面接した当時は 全く無名。

フィギュアやっていますというだけで、僕も知りませんでした。フィギュアの世界では遅咲きだったみたいです。この子が言ったのは、ジュニアで今フィギュアを頑張っていますと。高校からはシニアに上がる。大人の大会に出るんです。つまり海外の試合にも転戦していきたい。24 時間フィギュアのことだけを考えていたい。

15 歳の子がそう言って、その生活をするための高校を探しているということで、N高校に入りました。彼女、学校に来ていませんが、彼女のこと、不登校と呼びますか?海外転戦ずっとしていて、1 年のうち 5 日だけです学校に来る(スクーリング)以外はずっと自宅だったりリンクにいたり、海外にいます。

彼女、たくさんメディアにも出るようになりましたけれど、不登校の紀平さんと言われたことは一度もないです。そんなもんかと僕は思いました。ということは、学校に登校することだけが本当に大事なのか? と改めて感じました。

登校することは頑張れないと言う子は、小中高校生でたくさんいます。でも、そうじゃなくて、頑張りどころを登校することではなくて、学びたいこと、やりたいことだったら頑張れる、そんな時期があるんです。それは、場所ではないんです。紀平選手もそうですよね。 学校には行っていません。でも、やりたいことがある、頑張りたいことがある。不登校の子もそうかもしれないと。頑張りどころをちょっと変えてあげたらいいのかなと、思います。

学校になじめない子どもを劣っていると思うな。

中:N高校 2016 年 4 月に開校して、この 2019年 8 月で 1 万 1000 人の生徒がいるネットの学校になりました。3 年半です。学校をつくるときに、それくらいをイメージはしていましたが、本 当に 3 年半で 1 万人超えるとは思っていなかった。

いくつか成功要因がありますが、開校のときから教員たちにずっと言い続けていたことがあります。今も言い続けています。それは、「学校になじめない子どもを劣っていると思うな」ということ。

やはりN高校入ってくる子は、中学校高校で不登校を経験している子も割合としては多い。そうすると、どうしても不登校の子どもに対してどちらかというと、どこか劣っているなと思って受け入れていることが多かった。学力的にだったり、先ほどのコミュニケーション能力とか人との関わり方が、ちょっと劣っているという先入観があった。だからその劣っている部分を補おうというようなことを通信制の高校はよく考えています。

私も昔はそうでした。でも、N高校はそうじゃない。今も言い切っています、「劣っていない」と。その子たちは、特性であり、長所であり、優れたところがある、そこを伸ばしていこうと。さっきのお話にもあったように、デコボコをきれいにしようと思っていた。へこんだ部分を劣っていると。でもそうではない。デコがある。デコをもっとデコにして伸ばそう、そんな学校にしようよということを、教員たちに徹底しています。

僕はそこが 1 つの大きな成功要因かなと思います。他にも要因はありますけれど。根本的なところは、教員の考え方、子どもに対して接する姿勢が、やっぱり他の通信制高校と違うところかなと思います。自宅で学んでいるN高生が今、1 万人のうち 7000 人。キャンパスに来ている子が 3000 人います。7000 人は学校に来ずに自宅で学んでいます。

教科学習は自宅で映像で受ける。小中学校で教室で授業受けますよね、あれを全部映像にしてインターネットで配信します。だから一緒ですよね、家で教科書に準拠した授業を受けているわけです。時間割がなくても、自分のペースで学んでいるんです。

【連載:不登校からのキャリアデザイン】

https://note.com/sunaba_corpo/m/m2f2850979f50

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