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「コミュニケーション能力」って何?「空気を読む力」?(不登校からのキャリアデザイン②)

※この記事は2019年8月18日に京都市で開催した、イベント「不登校からのキャリアデザイン〜「行かない」の先を、生きやすく。〜」における講演・パネルディスカッションの書き起こし原稿になります。登壇者・主催者のプロフィールはこちら

多様な環境の子どもたちと向き合い、2万人を超える面接経験をもつ人事・キャリアのプロ

門川(以下、門):曽和さんは、最初リクルートに入社されて、ゼネラルマネージャーという人事の採用責任者まで務められてから退社され、各企業の人事を歴任された後に独立されました。今は人事採用に特化したコンサルティング会社の社長をされているという。まあここだけ聞くと「なんだエリートか」と(笑)まさに、華麗なキャリアです。

しかし、曽和さん、リクルート入社後に、一度退職されています。もともと大学で心理学を専攻されていたこともあり、大阪府警の天王寺署で非行少年の心理判定員や大阪の阿倍野中学校で教室相談員を務められるなど異色のキャリアをお持ちです。その後リクルー トに復帰され今に至るのですが、2 万人を超える面接経験をおもちの、人事のプロでもあり、 多様な環境の子どもたちと向き合うという経験もたくさんされてきた方なので、今日は楽しいお話が聞けると思います。よろしくお願いします。

曽和(以下、曽):よろしくおねがいします。

 門:今の社会の採用状況、社会で求められる能力と学校で育てられる能力のギャップについて、お話いただければと思います。

曽:こんにちは。人材研究所という人事コンサルティング会社をやっています。会社は東京にありますが、京都市民で、妻子はこの辺に住んでいます。平日は東京、週末は京都という生活です。

日ごろは企業側の採用とか育成、企業に入ってからの評価とか、大人はどう評価されているのか、どういう人が出世していくのかという、結構シビアな面をコンサルティングしています。

今日、僕がここに呼ばれたのは場違いなんじゃないかと思いつつも、何かお話できるかなと思うのは、大学生や高校生が、学校が終わったあとに就職をするという境目のところをずっと四半世紀見てきました。

どういう人間が評価されるのか、採用してもらえるのかを、大企業から外資系からベンチャーから色んな会社で見てきたので、この 25 年間の間の変化含め、そのあたりのお話をできればと思っています。

あとは、僕は教育学部出身で臨床心理士とか心理セラピストを目指して大学に入り、河合隼雄先生に師事した経緯もあります。途中で、僕はしゃべりすぎるので(笑)カウンセラーにはなれないと気付いて挫折して人事に転向しました。そういった立場から、何らかお役に立てればと思います。

「コミュニケーション能力」=「空気を読む力」?

まず、最初にお話したいのは、企業が何を見ているかです。経団連が毎年選考時に発表している「評価する要素」というのがあります。その要素の 16 年連続 1 位は何か。「コミュ ニケーション能力」です。

でも、その「コミュニケーション能力」がむちゃくちゃな使い方、解釈のされ方をされているんです。実際コンサルティングをしていると、筋道を立てて論理的に話すような論理的思考力みたいなことを言っている会社もあれば、表現力、おもしろい話をするみたいなことを言っているところもあって、「コミュニケーション能力」と一言でいっても中身がもう全然違いますよね。

でも、私の経験の中で思う、企業が一番求めている力って、実は「空気を読む力」なんです。そのことを、僕はすごく問題だと思っているんですが、一を聞いて十を知る、阿吽の呼吸、以心伝心みたいなことですね。

それってつまりは、相手の言っていないことを想像して、理解する力だと思うんです。こういう能力って、昔はそれが組織を つくっていく上でよかった、必要だったんだと思うんです。

高度経済成長期とか、一致団結してやるぞ!という時代。でも今は全然違う。

阿吽の呼吸だと不文律がたくさんできますよね。不文律でできたルールというのは明示化されたものではないので、変えにくいし、とても排他的。知っている人と知っていない人の間でかなりコミュニケーションがとれない。極めて常識的な人にはいいんですけど、面白い発想ができてしまう人には入りにくいとか、いろんな問題があるわけです。

そういうところが、今ものすごく問題だなと思っています。

「コミュニケーション能力」を不要とする会社・業界も増えてきた

ただ、一方でそういったものが全くいらない会社もどんどん出てきている。以前からクリエイティブの世界、広告制作とか芸術系とかの採用ではそうだったんですけれど、最近だと、 IT、エンジニアなど、今言ったような空気読むというようなコミュニケーション能力は全くといって必要とされない会社も出てきました。

例えば、ある急成長しているウェブサービスの会社があるんですけど、その会社を少しお手伝いしたことがありまして、そこの採用基準は「廃人性」なんです。廃人って言葉悪いですけど、ネトゲ廃人とかあるじゃないですか。要は超オタクですよね。

廃人レベルにまでのめり込むことができる能力であって、さっきいったような空気読むとか阿吽の呼吸でなめらかなコミュニケーションができるみたいなことは、どうでもよくなってきている会社はどんどん増えてきています。

むしろ私の見ている限りでは、いまだにさっきいったようなコミュニケーション能力を偏重しているような企業というのはだいたい没落していっています。「まだそんなこと言っ ているの?」と。

僕は今、「コミュニケーション能力がなくても、うまく組織をマネジメントする方法」という内容の連載をしています。今、大企業の中では変わらないところも多いですが、気付いている企業は出てきていて、しかもそういうところはどんどん伸びているということを、まずはお伝えしておきたいです。


【連載:不登校からのキャリアデザイン】

https://note.com/sunaba_corpo/m/m2f2850979f50


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