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【3】「主体性」ってどういう意味で使っていますか?(不登校からのキャリアデザイン③)

※この記事は2019年8月18日に京都市で開催した、イベント「不登校からのキャリアデザイン〜「行かない」の先を、生きやすく。〜」における講演・パネルディスカッションの書き起こし原稿になります。登壇者・主催者のプロフィールはこちら


「うちは主体性のある奴がほしい」って言うので、 僕はそういう人たちに必ず聞くんです。「どういう意味ですか?」と。

曽和:そして重視する要素の 2 位。これは「主体性」なんです。そして、これもまた、日本の企業における「主体性」というのはひどい使われ方をしています。

主体的っていうとみなさんどういうことを想像されますか? 自分から何か動く、自分が思ったことをやるという感じですよね? 違うんです。日本の多くの企業で、人事部長や役員、社長が「うちは主体性のある奴がほしい」って言うので、僕はそういう人たちに必ず聞くんです。「どういう意味ですか?」と。それで答えの中で一番多いのは何かと言うと、「与えられた課題に対して前向きに積極的に取り組める力」なんです。

これって、全然主体的じゃないですよね。めちゃくちゃ従属的です。適応力が高いというか、素直というか、とにかく全然主体的ではない。でもそれを企業は主体性と呼ぶんです。

このことは教育にも関わるかなと思っていて。一つエピソードがあるんですけれど、ある幼稚園の子が、お受験の模試か何かで子どもが遊んでいるのを行動観察するみたいテスト。あれを受けたそうです。そのときに、遊んでいる様子を見て○○性はいいとかダメだとか見るのでしょうけど、その中にも主体性という項目もあったと。

その子はいわゆる集団行動はとれなくて、自分のやりたいことをやりたい。あんまり言われたことをちゃんと適応してやるのは苦手みたいなタイプなんです。

でも、主体性はあるだろうなという風に親御さんは考えていたところ、模試が返ってきたら主体性が0点だったそうなんです(笑)「そんなわけないだろ」と思って見てみると、まさにさっき出た日本企業でよく言われているような主体性の定義。「目の前に与えられた課題に対して前向きにちゃんと取り組んでいるかどうか」が主体性とされていたんです。

子どもですよ? 子どもが「このおもちゃで遊びなさいね~」と言われて、わ~と遊ぶって、これめちゃくちゃ適応力があるとも言えますけれど、主体的かというと・・・? 俺、こんなのやだって言ったっていいわけなんですけど、それをしない人が○。「俺はこういうことやりたい!」って言う人は×。「主体性がない」と判断される。
めちゃくちゃおかしいですよね、でもこれが実態だなと、ものすごくおそろしく感じたエピソードです。

曖昧で多義的な「コミュニケーション能力」とか「主体性」とかっていうワードが 何となく語られてしまっている。

これも、伸びてる会社は主体性を正しく捉えています。生意気くらいがちょうどいいとか、 言うこと聞くとか素直な人は別にいらないと。リクルートはそんな会社なんです。言うこと聞かない人ばっかりなんで、そういう人たちをマネジメントするのはめちゃくちゃ大変なんですよ(笑)

でもそういう人ばっかり集めている会社で、リクルートは今、時価総額は日本で 11 番目とかですね。三井住友銀行より上ですね。素直な人ばっかり集めている会社はむしろ伸び悩むか縮小していっている。

ただ、多くの私立学校のパンフレットもそうですけど、言葉的にはいいこと書いてあるんですよ。「主体性」がどうのとか。でもその主体性がまさか、与えられた課題にちゃんと適応して取り組むなんてことになっているとは(笑)入ってみて、「言ってることとやってること違うじゃないか」となることも多々ある。

さっきのコミュニケーション能力にしても、極めて偏った使われ方をしている。ざっくりしたビッグワード。曖昧で多義的な「コミュニケーション能力」とか「主体性」とかっていうワードが何となく語られてしまう。

しかも誰も反対しないですよね。「コミュニケーション能力あった方がいいよね」って、そりゃあった方がいいよねと。そういう曖昧な言葉を使いつつも、でも実は中身は全く変わっていない。ここが日本社会、日本企業の停滞の一因かなというか、停滞している日本企業の採用時あるあるなんですよね。

でもひとつ希望の光なのは、伸びているところはそうじゃない。これからの日本や世界を支えているような成長産業ですね。我々のようなところに依頼してくる企業はそういうところが多いんですけど、停滞産業、落ちている企業からはあまり採用に関する依頼はこない んです。

なので、お手伝いするところは基本伸びていくところなんですけれど、そういう企業は、言葉悪いですけど「廃人性」とかを重視していて、阿吽の呼吸とか日本特有の同調圧力とか相手が察することに合わせていくのがいいみたいなことは全く言っていないわけです。

【連載:不登校からのキャリアデザイン】

https://note.com/sunaba_corpo/m/m2f2850979f50

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