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最後のやりとり



1週間前。


覚醒度が低く、左半身に力が入らないため、救急外来を受診した。


救急の待合室で、診察を待つ。


午前中ほとんど深い眠りについていた母が、
午後のほんの少しの時間、くっきりと目を開いた。


やっと起きた!

こちらにも気がついている!


言葉でのやりとりができないので、
動作で心を通わせてみた。

左の手はどのくらい動かせるのか、確かめたい。


私は母に手のひらを見せ、
もう片方の手でトントンと叩き、

「ここに手を乗せてみて?」

とサインを出した。


目覚めてもぼんやりしていることが多いので、
サインをどこまで理解できるかわからない。


午前中からも、何度か行っていたが、
眠気が強くすぐに眠りについてしまい、
確認もやりとりもできなかった。


今度ははっきり目が覚めている。


母はこちらを、じっと見て、
自ら右手をゆっくりと動かし、

手を少しずつ伸ばしはじめ、
私の手のひらの上へと、自分の手をそっと重ねた。


あぁ✨

伝わった〜!✨

わかってくれた〜!✨


母の意志で、手を乗せようと思ったんだね✨

乗せようと動かしてくれたんだね✨


あぁ✨すっごく嬉しい〜✨

どうしようとしていたか、伝わったよ✨


ちゃんと、わかったよ!

しっかり、受け止めたよ!




ずっと、やりとりはまともにできていなかったから……


こんな些細な、小さな動きさえも
感動するほど、嬉しい!✨


通じ合えたこと✨
それが、どんなに嬉しいことか✨

感動して涙がこぼれそうになった……


ただ、ただ、嬉しかった✨


私は、その母の手を

ぎゅっと握った!


しばらく、ずっと握っていた。


握った手を、トントンと一緒に動かしたり、
もう片方の手で、母の手の甲を摩って、
両手で握ってあげたり、


手を繋ぎ、心を通わせ続けた……



そしたら、母が急に、

目をしょぼしょぼと動かした。


「え、どうしたの?」

(どこかおかしなところがあるのかな……)


様子を見ていると、


しょぼしょぼとした、目のまわりが、
うっすらと濡れ始めた。

それは、出したくても出てこない、
精一杯に流した涙のようにも見えた……

(これは涙かも……)

そう感じたので、


「あれ、涙かな……泣いちゃったの?」
「どうした?」
「なにか、悲しくなっちゃたの?」


そう声をかけると、

また、しょぼしょぼとした目になって、
珍しく、顔の表情も大きく動かし、
クシャっとさせていた

(あ……泣いているんだ……)

そう思った。


やりきれない思いのような、
言葉にならない思いのような、
今までの溢れる思いを表しているように見えた。


そんな表情をしながら、
母は泣いていた……


そう思った……


「大丈夫だよ〜」
「もう……大丈夫だから……(もらい泣きになった)」


「ちゃんといるよ!ね!」
「大丈夫だよ」


母の顔を見ながら、一緒に心で泣いた。


母の気持ちが伝わっているような感覚。


でも、なんの涙だったのかは、わからない……


母は何を感じていたのだろう……



入院となった日

少しだけ

母自身の意志や気持ちが見え、

それを感じていた……



母との最後のやりとりになるなんて……

思いもしなかった……



最後のやりとり

最後の涙



病室で横たわる母に、

「ばいばい、また来るね!」と伝え、帰っていく私を、

少し頭を持ち上げながら、その姿を目で追い、

じっと見続けていた。


言葉を発さず、無言のまま、

ずっとずっといつまでも

母は見続けていた……


母の顔




大切な宝物を

心に刻む✨✨




〜母との最後の会話〜



追伸)
皆さま、いつも励ましと心温まる寄り添いをありがとうございます💕
お読みになって、重たい気持ちになるかもしれません……
そのような時は、どうぞ、元気になる明るい記事を巡ってください♫
私へのお気遣いをしてくださって本当にありがとうございます✨

思いを馳せ、新たな価値観に移行中✨



・・お読みいただきありがとうございます・・

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