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靴磨き 山岸賢治〜靴磨きを日常に〜

2024年8月2日
汕を拠点に長野県内で靴磨き屋として活動している山岸賢治(以下、山岸)に、靴磨きを依頼する古着屋nejiroの牛山奈生都(以下、牛山)の会話

山岸「この靴は履き始めて何年くらい経つんだっけ?」

牛山「これは結構経つよ。4、5年くらいじゃないかな?」


山岸「50年代のブーツ?って言ったっけ?」

牛山「60年代のドイツの靴って言ってた。」

山岸「このくらい古い靴になるとなかなか情報も掴めないよね。ロゴもないし。」

牛山「でもこの革質結構好きなんだよね。」

山岸「革質めっちゃいいよ、これ。」

ー 磨きの仕上がりイメージについて。
牛山「今回はちょっとミリタリーチックというか、あんまりピカピカにしすぎずに磨いてほしいんだよね。」

山岸「つま先にボリュームもあって無骨な印象もあるからね。でも革はきめ細かくて上品。ステッチも細かいし、この辺は時代を感じる良い靴だよね。じゃあ今回は少し無骨さも残しつつ、あんまりピカピカにし過ぎないように磨いていこう。」

牛山「嬉しいねぇ。」

牛山「賢治は靴磨き始めて何年だっけ?」

山岸「始めてからは8年だね。二十歳の時に靴磨きに出会ってそこからだから。」

牛山「本格的にやり始めたのは?」

山岸「仕事になったのは23歳の時だから、、、もうすぐ6年目に入るくらい。」

牛山「靴磨きの魅力ってどこにあると思う?」

山岸「靴磨き自体が面白いってのは確実にあって。それは性格的に合うって事だと思うんだけど、やっぱり仕事として面白いなと思うのは、自分以外の人の靴を磨く分全く知らないその人と靴の人生に靴磨きを通して携われるところかな。」

山岸「どんな人がどんな思いで、どんな時に履く靴なんだろう?とか。靴のケアって1回で終わるものじゃないから、定期的にご依頼いただければ『あの時どうでした?仕事うまく行きました?』ってそんな話ができたりとか。靴も人も好きだから、どっちにもまた会えるってのが幸せかな。」

牛山「報告してくれるのも嬉しいよね。自分が磨いた靴を履いてどこかお出かけしたりして。」

山岸「やっぱり靴が綺麗だと気持ち上がるじゃん?」

牛山「うん。全然違うよね。」

山岸「勝手だけど、自分が磨いた靴によってその旅行がちょっと楽しくなるんじゃないかとか思うとやっぱり幸せだよね。そういうのは服を扱う人も一緒じゃないかな?」

牛山「そこは確かに古着屋としても感じるところだね。」

牛山「すげぇ。汚れがどんどん落ちてくる。」

山岸「皮革製品も元々は動物の皮膚だったものだから、人間のスキンケアによく例えられるけど今はクレンジングの段階だね。靴磨きは1回やったら終わりじゃないっていうのも、人間だって二十歳の時に1回バッチリお化粧したからって80歳になるまでそのままじゃいられないでしょ?」

牛山「確かにそうだね。これですっぴんになった?あら〜スッピンも美人じゃん笑」

山岸「こうやって手をかけてあげる事で長く履けるのが革靴の良さだよね。」

山岸「これって時代的にも良くて、皮革製品って基本的に食肉用の動物の副産物だから、革製品のために育てたり殺したりってのは無いんだよね。」

牛山「あぁ、なるほどね。そうなんだ!」

山岸「でもそうは言っても加工するコストとか負荷もあるから、作ったものはちゃんと長く使ってあげないといけないんだけどね。」

牛山「それには定期的なケアが必要だと。」

山岸「そういうこと。そのために作ったのが靴磨きサブスクなんだよ。」

靴磨きを日常に。をテーマに始まったサービス。

牛山「俺も今回Shoeshineプランに入らせてもらって、今日磨いてもらってるけど、ぶっちゃけマジでお得だよね。申し訳ないくらい笑」

山岸「この金額で大丈夫?って聞かれることも多いけど、実際に田舎で2年弱靴磨き屋をやってきて一番思うのが、靴を磨く習慣がない分『特別な1回』になっちゃうのがすごく勿体無いなと思って。」

牛山「そうだね。」

山岸「靴磨きって本来は自分で出来ればいいと思うんだけど、いろんな理由でそれが難しいのも理解してるから。」

牛山「俺も実は道具買ったことあるんだよね。でも時間がなかったり、思ったように綺麗に出来なかったりで結局やらなくなっちゃった。」

山岸「自分のやり方が靴にとって正解なのかも不安になるしね笑」

牛山「そうそうそう!靴のために磨きたいのに何が靴に良いのかわからない笑」

山岸「だからその辺を信頼して定期的にお願いしやすい環境が必要だなって。文化として日常に馴染んでいくっていうのが自分の目指すところかな。」

山岸「極端な話、車買ったら保険に入ります。みたいな。」

牛山「なるほど。そのくらい自然にね。」

山岸「結果としてそれが幸せな革靴ライフに直結すると思うから。」

牛山「このサブスクって革靴と言ってもスエードのスニーカーとかでもいけるの?」

山岸「もちろん。スエードも同じようにケアが必要な素材だしサブスクでも対応してるよ。スニーカーも革であればなんでも。」

牛山「スエードはまたどうやって扱ったらいいか分からないし、スニーカーとかだとガンガン履いちゃうからその分汚れてくし。そういう靴もいけるなら月に1足じゃ足りなくなるな笑」

山岸「アップグレードも出来ますので笑 自分の持ってる足数とかライフスタイルに合わせてプランを選べるようになってるからね。」

牛山「こういう存在がいるって分かってたら心強いよね。革靴は履きたいけど扱い方が分からなかったりっていう恐怖心というかハードルが大分下がる。」

山岸「そういう意味でやっぱり保険なんじゃないかと。」

牛山「確かにもう安心感がやばい。笑」

山岸「靴磨きは日常であるべきだって言ったけど、革靴を履くこと自体もそうやって自然になってくれたらいいな。」

牛山「俺はさ。車のガソリンを満タンにした時にテンションが上がるんだよね。これでどこまでも行けるじゃん!っていう。革靴磨いてもらった時もその感覚に近いかも。」

山岸「なるほど。それ面白い!確かにガソリンの残量によって距離の体感全然違うかも。革靴も磨いてなかったり乾燥してたりしたらそれ履いてお出かけしようってなりにくいかもね。いい表現だね!」

磨き上がった靴

牛山「めちゃめちゃかっこいいやん!マジで!」

山岸「今回はピカピカにしたくないっていう要望だったからそうやって磨いたけど、合わせる服とか履くシーンによってピカピカにしたりとかもできるのが磨きの面白いところだよね。そういうのは美容師さんとかに近いのかな?」

牛山「本当にメイクアップだね。今日はちょっとナチュラル系美女でお願いしたけど」

山岸「次回はギャルになってるかもね笑」

牛山「すんごい濃いんじゃないの?笑」

山岸「でもギャルにはギャルの良さがあるから。笑」

山岸「じゃあガソリンも満タンになったから、またこの靴履いて色々なところに行ってきてください!」


汕(サン)
靴磨き屋、デザイナー、古着屋という異なる業種の3人によって運営される施設。それぞれの視点で切り取られた世界を投射する。

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長野県伊那市日影287
田畑ビル1F

営業時間
11:00~18:00

定休日
月・火・水





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