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私を宝物と呼ぶ人

ネットの海を漂う恋愛系ノウハウや失恋関連記事は8-9割的を得ていないと個人的に思うけど、1つだけ正しい情報を発見した。

失恋してよかった事、それは自分を大事にしてくれる家族の大切さがわかる事
という点だ。

まず振られて初めて家に帰った時、母親が泣いている私を何も言わずに玄関で抱きしめた。
母親に抱きしめられたのはいつ以来だろう、多分ハタチを超えてからは一度もなかったと思う。抱きしめられると安心する事を、恥ずかしながらこの年で初めて知った。

先月までコロナ起因の在宅によりマンスリーマンションに住んでいたけど、解約して実家に戻っていた。
そして、また来週から今度は本格的に一人暮らしを始める事にした。
理由は主に二つで
・1人でなんでもできるようになりたいと思った
・30代派遣社員の実家暮らしが恥ずかしかった
と言ったところ

振られた事で恋愛面だけでなく人間として、自分には何も価値がないと思ってしまった。

自分の粗探しをし、普段では気にならない事に対して、自分は駄目な人間だと思うようになっていた。

だから自信が欲しかった。
1人でなんでもできると、この先だって1人でも生きていけるんだと、自分自身に言い聞かせて自信にしたかった。
彼がいなくたって、母がいなくたって、私は1人で生活できるんだって思いたかった。

一人暮らしをするよ、と、母親に言ったら
「明るい気持ちで新生活を始めてほしいのに、心が元気じゃない時だと1人にするのが不安だよ」
と長らく反対された。

よほど心配だったのか、姉たちにも協力をあおいだようで、姉たちからも心配のメールが何度も来た。
「無理に自立する事ないよ」
振られて自暴自棄になっている妹に、どこまでも優しい言葉をかけてくれた。

一人暮らしをやめようかと思った。
ただここでやめたら、またいつもの何もできない自分に戻ってしまう。決めた事を優しい言葉に甘えて覆して、楽な方に流されて、そして後になって後悔するいつもの自分に戻ってしまう。

泣きながら契約金決済のボタンを押した(オンライン決済)

その後、父親に報告したら、また涙が出てきて座り込んでしまった。
父は肩を抱いてくれた。初めて、父の手がこんなに大きかったことを知った。
最初、ずっと家にいたらええのに、自立なんかしなくていいと言ったけど、何にもできない自分が恥ずかしいんだよ、自分でなんでもできるようになりたいんだよと言ったら、少し考えて「頑張ってみたらええんちゃう」と言った。
父なりの私への愛だと思った。

お金を払ったよと母に言い、もう30なのに家族みんなに心配されて、恥ずかしいとまた泣いてしまった(泣きすぎ、涙腺迷子、酔ったオカマかよ)

母は「心配するのは当然だよ。家族だもん。だからあんたがおかしいわけじゃないよ」
とあっけらかんといった。
私がこれ以上自分を嫌いにならないように、自己嫌悪の海からまたしても母が救い上げてくれた。

決めたんだったら頑張らないとね。本当は出る前からこういう事いうのはよくないんだろうけど、でも帰ってきちゃいけないとかそういう風には思わないでほしい。いつでも帰ってきて。

そうやって部屋を出て行った。

そこからまた涙腺が決壊したように泣いた。

30代独身派遣社員の娘なだけでなかなかヘビーなのに、おまけにこの歳で多大なる迷惑・心配をかけて言うこともきかない、自分の子どもという事くらいしか愛する要素がないこんな私を

いつまで経っても発展途上な私を

私が赤ちゃんの時から変わらない愛で包みこんでくれる家族のあたたかさに、本当に助けられてしかなかった一か月だった。


母が部屋に戻ってから、思い出した事があった。
昔母が病気になり手術を受ける前日にメールをしたら
あんたという宝物を授かれた体にメスを入れるのが怖いけど、がんばるね
と返ってきた。

私を宝物と呼ぶ人

欠陥商品だと思って生きてきたのに、
ガラクタだと思って生きてきたのに、

そんな不良品を心配し、愛し、宝物と呼ぶ人


この先出来ることがあるかわからない
自慢の娘になれるかわからない

ただ私にとっての宝物でもあるその人を心配させないで、大切に愛して生きていこうと強く思った。

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