見出し画像

月見ればちぢにものこそ悲しけれわが身一つの秋にはあらねど

大江千里

月みればちぢにものこそ悲しけれわが身一つの秋にはあらねど

(つきみればちぢにものこそかなしけれわがみひとつのあきにはあらねど)

 月を見ていると様々に思い乱れて物悲しい気分になり塞ぎ込む。
秋は私ひとりだけにあるわけでなく、悲しい気分になっている人も多いだろうが、この気分は分かち合うこともできない。
毎夜毎夜月を見て泣くぐらいしかできない。

みれば…見ると
ちぢに…千々に。様々に。
ものこそかなしけれ…物悲しい。「こそ…已然形」で、強調表現。つまり、ものすっごく悲しい。
秋にはあらねど…秋ではないけれど

この歌の最大の難関は、「わが身一つの秋にはあらねど」だと思う。
私は初めて『百人一首』を読んだ時から、意味がうまく掴めなかった。
のちに、「ちぢに」(千々に)と「一つの」が対句的に対応している表現だと気づく。
「わが身一つの」は「私一人の」である。ただ、「私一人の秋」とは? 私なりの答えを訳に込めてみました。

大江千里(在原業平・行平の甥)

出典 百人一首23番歌、古今和歌集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?