コペンハーゲンで自転車に乗ってきた(状況と感想編)
先日、新婚旅行で北欧を周遊し、コペンハーゲンを自転車で走り倒しました。
コペンハーゲンは世界一の自転車都市と言われていて、実際に走ってみて「すごいな~」と思うことがたくさんあったので記録します。
先に簡単に結論を書くと、
「コペンハーゲンでは、自転車が交通のヒエラルキーの頂点」
「圧倒的規模の自転車用のインフラがあり、多すぎるくらいの自転車が徹底的に秩序を守って走行していた」
「いや、自転車多すぎるなこれ」
です。
この記事について
2023年5月にシェアサイクルを借りて以下のルートを走りました。
・郊外(Ballerup)からコペンハーゲン中心部までのCycle Superhighwayの20km
・コペンハーゲン中心部のコペンハーゲン港周辺をくまなく
そもそも、ヨーロッパの一般的な自転車の利用環境は日本に比べてかなり整っています。
過去にフランス、ドイツ等の都市を自転車で走って感心していたのですが、この記事ではその経験をもってなお「コペンハーゲンって凄い…!」と思ったことや「コペンハーゲンって面白いな~」と思ったことを挙げています。
なので、一般的なヨーロッパの自転車事情をほとんどご存知ない方は、以前まとめた記事を参考にしていただくと良いかもしれません。
また、コペンハーゲンの自転車事情は既にごまんと情報があるので、出発前に情報収集をしています。
街の歴史や政策等について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
なお、自動車と自転車の文字が似ていて見間違えやすいので、この記事では自動車のことをクルマと表記します。
老眼に優しい記事です。
まず到着して思ったこと
自転車多〜〜〜!!!
あと速〜〜〜〜〜!!!!
え、なんで!!??
日本じゃ絶対ありえないんだけど!!??
なんでそんなにたくさん走ってるの!!!!????
と、思いました。
が、自分も自転車で走って色々見ているうちに「なるほど、すご。そりゃこうなるわ」と腑に落ちたので、その凄かったところや面白い光景を紹介していきます。
凄いところ① 質の高い移動と大量通行を可能にするインフラ
コペンハーゲンの自転車政策は、普段の移動でクルマではなく自転車を使ってもらうことを目標にしています。
その実現のため、自転車の移動の質をクルマと同じレベルまで上げるためのインフラを数多く整備しています。
実際に走ってみると快適で楽しく(=質が高く)、それでいて凄い数の自転車が走れる環境が整っていました。
自転車レーンがとにかく広い
歩行者と自転車の空間が分かれているのはヨーロッパでは一般的なことですが、コペンハーゲンでは多くの場所で自転車レーンが設けられ、クルマと自転車の空間も分けられていました。
それも、ただ自転車レーンに色を塗って空間を分けるというものではなく、車道と自転車レーンの間に5cmほどの段差が設けられていました。
路駐で自転車の進路が塞がれることが無いので、快適に走ることができます。
そして、その自転車レーンで特徴的なのが幅員の広さ。
基本、2台並んで走ることができるので、速い自転車は追い越しができます。
近年ではさらに幅員が見直されていて、場所によっては3台分の幅が取られています。
これは、並走して会話を楽しんでいる人達の横を追い越すことも想定しているようで、走行中に会話ができるというクルマと同じ移動の楽しさを確保しつつ、自転車の詰まりも解消する、移動の質と量の向上を実現しているそうです。
交差点では、クルマと同じように方向別の車線が設けられていて、こちらも自転車がスムーズに走れるように機能しています。
バス停付近も走りやすい
専用の自転車レーンを設けていて問題になるのがバス停です。
乗客がバスを乗降する際に自転車レーンを横断するため、自転車と歩行者の接触の危険があります。
また、自転車レーンよりも道路の内側にバス停を設けると、バス停を避けるように自転車レーンをカーブさせる必要があり、自転車が走りづらくなります。
コペンハーゲンでは、バス停が歩道上にあったり、自転車レーンと車道の間にあったりと、道路の広さや自転車の通行量といった状況に合わせて臨機応変にバス停が整備されていました。
そのため、バス停があってもスピードを落とさず走ることができます。
遠くまで快適に行ける
このような自転車レーンの整備は、数km程度の区間だけとか、市内だけとか、日本のような狭いエリアの取組みとは異なります。
長距離の移動も可能な自転車道ネットワーク「Cycle Superhighways」がコペンハーゲン中心部から放射状に延びていて、その整備にはコペンハーゲン市の他に周辺自治体も協力しています。
その中で1番長い路線は、コペンハーゲンから40km以上も離れた街まで続いています。
これは東京駅から川越・春日部・横浜まで、名古屋駅から大垣・美濃加茂・岡崎まで、大阪駅から京都・須磨・泉佐野までの距離に匹敵します。
現地に行くと、Cycle SuperhighwaysのシンボルであるCマークが載った標示や看板がたくさんあるため、すぐに場所が分かります。
自転車ルートの分岐となる交差点では、方向と距離、路線番号を案内していて、(現地の土地勘があれば)迷わず走ることができます。
また、中心部から少し離れると、森の中や湖畔など、自然の中の自転車専用道を走ることができます。
もし、毎日の通勤に自転車を使えば、運動になるのはもちろん、快適で楽しい時間を過ごすことができて良いことづくめです。
こういう点でも質の高い移動を実現しているのだなと感じました。
自転車の不便を感じにくい
自転車で走っていて特に疲れるのが信号でのストップアンドゴーです。
コペンハーゲンでは、多くの人が速く走るためにサドルを高くしており、止まる時には一旦サドルから降りなければならないので、信号待ちを負担に感じる人は特に多いと思います。
そんな信号待ちをサドルに乗ったままできるように、足置きと手すりが一体になった柵が各交差点で設置されています。
また、自転車はクルマと違ってタイヤの空気も抜けやすく、パンクの頻度も格段に多いです。
Cycle Superhighwaysには、かなり狭い間隔で空気入れが設置されており、安心して出かけることができます。
これは特段自転車を意識しているわけではないと思いますが、赤信号から青信号に切り替わる前に、2秒ほど赤と黄色の信号が表示されます。
青信号になってから自転車が進み始めるまでの時間のロスが少なくなるので、大量の自転車を走らせる上で効果がありそうだと思いました。
また、現地では実感できなかったのですが、20km/hで走っていると信号に引っかからないように信号の時間が調整されている区間もあるそうです。
いわゆるITSというやつだそうです。
凄いところ② クルマよりも早く移動できる自転車ネットワーク
クルマ並みに質の高い移動ができるようになっている自転車レーンですが、場所によってはクルマよりも早く移動できるようになっています。
自転車用の橋で水路をショートカットできる
コペンハーゲンは港湾都市で、市中心部を横切るように大きな水路(コペンハーゲン港)が流れています。
水路を横断するように移動する際、水路に架かる数少ない橋を利用する必要があり、遠回りしなければならないことが多いです。
しかし、それらの橋とは別に自転車用の橋も整備されているためショートカットすることができ、場合によってはクルマよりも早く移動できます。
①に架かるInderhavnsbroenは歩行者・自転車専用の橋です。
船が通行する際は、橋の中心部がスライドする面白い構造になっています。
水路に架かる橋の中では一番海側(北東側)で、この橋より海側を起終点に移動するときは、かなりの距離をショートカットすることができます。
この橋よりも海側に建つ建物は多く、コペンハーゲンから北西方向に延びるCycle Superhighwayを走り続けてもここにたどり着くため、自転車の交通量はとても多いです。(平日の昼間でも1分間に50台くらい通過していました)
Inderhavnsbroenの南東側の小さな水路が入り組むエリアにも多くの自転車・歩行者専用橋があり、余計な遠回りをしないで済む自転車ネットワークができています。
②のLille Langebroは歩行者・自転車専用の橋です。
他の橋に比べると、自転車道のネットワークを作る上では意義が少ないように見え、実際、自転車の交通量も多くはなかったです。
しかし、水上プール等の施設やデンマーク王立図書館があるウォーターフロント地区の中心にあり、歩行者・自転車の回遊性を向上させる上では非常に役に立っているように感じました。
③のCykelslangenは自転車専用の橋です。
Cykelslangenは、コペンハーゲンの自転車まちづくりを象徴するような非常に有名な橋で、自転車専用の橋を作ったという事実や、そのデザイン性の高さを多くの人が称賛しています。
それらも確かに凄いのですが、個人的にはこの橋の自転車ネットワークの繋ぎ方に感心しました。
コペンハーゲン中央駅の南西エリアには多数の線路や車庫があり、それらを横断できるのはほぼDybbølsbro駅付近の跨線橋だけになっています。
Cykelslangenはその跨線橋と繋がっているので、多くの自転車が余計な遠回りをせずに線路と水路を横断できます。
しかも、跨線橋と水路付近の土地との間にある高低差をこの橋でゆるやかに繋いでいるので、走る上での負担がかなり少なくなっています。
ちなみに、実際に水路を渡るのはCykelslangenから数十m先にあるBryggebroenですが、2つの橋が1本の通行路として一体的に機能しています。
クルマが通れない道路もある
中心部では、クルマの進入を禁止してバスと自転車のみ通行可能にしている道路もあります。
もちろん迂回が必要なクルマよりも早く移動することができるし、自転車レーンも広く、クルマに気を付けなくて良いので快適に走ることができます。
見た限り、特に狭い道路というわけでもなかったので、空間的な余裕が無いからという消極的な理由ではなく、自転車を優先した街にしたいからという理由でクルマを通行止めにしているように感じました。
凄いところ③ 積載力のあるカーゴバイクの普及
いくら自転車のインフラが整っていてクルマより早く移動できそうでも、やはりクルマの積載力を考えると自転車は不便です。
そんな積載力でのデメリットを払拭できる、前輪に大きなカゴの付いた「クリスチャニアバイク」と呼ばれるカーゴバイクがかなり普及していました。
たくさん買い物しても荷物を運ぶことができるし、子どもだって載せることができます。
それどころか、大人を載せて走っている人もよく見かけました。
法的に大丈夫なのかな。
正直、乗ったことがない身からすると、車体が大きくて重そうなので走るのが大変そうです。
しかし、20~30台に1台くらいの割合で、男女問わずカーゴバイクに乗っていたので、案外走りやすいのかもしれません。
ちなみにこのクリスチャニアバイクは、コペンハーゲン市内のクリスチャニア地区から名前が付けられています。
クリスチャニアはヒッピー文化が残る地区で、独自のルールで自治が行われています。
そのルールの一つ、自動車を使わないカーフリーの精神から生まれたのがクリスチャニアバイクだそうです。(めちゃくちゃ端折っているので詳しいことは調べてください)
凄いところ④ 大量通行を可能にする交通安全意識の高さ
道路や橋、車体といったモノだけでなく、自転車ユーザー一人一人の意識もコペンハーゲンの自転車利用環境を語る上で欠かせません。
徹底した交通法規の遵守
言わずもがな、自転車は歩道を走ってはいけません。また、クルマと同じ右側通行で、逆走は絶対にしてはいけません。
と言いつつも、やはり、ヨーロッパの他都市ではいい加減な走り方をする人が一定数います。(それでも日本に比べたらはるかに少ないです)
それが、コペンハーゲンではほとんど見かけませんでした。
まるで高速道路のような秩序ある走行
走行中もルールの遵守を徹底しています。
止まる時、交差点で曲がる時は必ず手で合図をして周囲の自転車に自分の動きを伝えます。
また、基本的に自転車レーンの右側を走り、追い越す場合は前の自転車の左側を走行します。
そして、前の自転車が遅くて追い越す時や進路を変える時に、自転車レーンの左側に寄る前には、左後方からやってくる自転車の目視確認を欠かしません。
これを老若男女、みんながやります。
決められた位置を走り、逆走は絶対にしない。
合図・確認を徹底してお互いの動きを把握し、自転車同士が接触しないのはもちろん、自転車の流れも乱さないように走っている。
高速道路と変わらない景色がそこにはありました。
このようなクルマを運転するときと変わらない交通安全意識の高さによって、自転車の大量通行を可能にしているのだなと強く感じました。
ちなみに余談ですが、コペンハーゲンで自転車に乗った日本人が周りの自転車を怖いと感じたり、現地の人に怒られたりした、という話をよく聞きます。
自分は事前の予習や普段のサイクリングの習慣のおかげでそういう思いをしませんでしたが(むしろ快適だった)、おそらく上記のようなルールを知らないまま走ってしまった方の話なのかなと思います。
これから現地で自転車に乗ろうとしている方は、ローカルルールの予習、やりすぎなくらいの交通法規の遵守、高速道路と同じような走行の心がけを強くお勧めします。
(調べればルールを説明しているサイトがいっぱい出てきます)
他にも自転車最優先社会ならではの光景が
上記で紹介した道路や橋等のインフラを見てわかるように、自転車を優先したまちづくりが非常に進んでいます。
他にも自転車最優先の社会ならではの光景を多く目にしました。
歩行者よりも立場が上?
横断歩道で歩行者が待っていても自転車はなかなか止まりません。
歩行者は自転車の列が途切れるまで待っていることが多いです。
自転車まちづくりは、「クルマから道路を取り戻してより人間らしい生活をしよう!」というような目的で進めることが多く、描かれる交通ヒエラルキーのトップには歩行者が君臨することが多いです。
そのような意識のある街だと思っていたので、歩行者が辛抱強く自転車を待つ光景を目にしたときはかなり衝撃でした。
工事中でも自転車最優先
コペンハーゲンの建物はほとんどが敷地いっぱいに建てられているので、改修工事中は周囲の道路に足場を立てています。
旅行中、工事現場を何か所も見ましたが、ほとんどの場所で自転車レーンが途切れないように工夫されていました。
電車内の自転車用スペースがかなり広い
電車内に自転車用のスペースがあるのはヨーロッパではお馴染みの光景で、1箇所あたり最大6台くらい持ち込むことができます。
コペンハーゲンで利用した車両では、1箇所あたり10台以上も自転車を収納できました。
確か1編成で2箇所の自転車スペースがあったので、電車1本で20台以上も持ち込めることになるのですが、それでも朝方は満員(満車?)に近い自転車利用者がいました。
自転車最優先だから安心な交差点
自転車専用レーンで安全性が問題になる場所は、すでに紹介したバス停の他にも、自転車とクルマが交錯する交差点があります。
交差点では、道路の外側を自転車が直進することになるので、その内側から右折(日本で言う左折)してくるクルマとぶつかる危険があります。
ヨーロッパの他都市では、クルマの右折車線よりも内側に自転車レーンを設けることで、巻き込み事故を防いでいる交差点をよく見かけます。
一方、コペンハーゲンではそれとは異なる、クルマのドライバーに自転車優先の意識があるからこそ成立しているような交差点を2種類見かけました。
1つは、右折車線の外側を自転車が直進する交差点。
日本の感覚だと「クルマが突っ込んできたら危ないじゃないか!」となりますが、自転車最優先の意識が浸透しているので、クルマは自転車に細心の注意を払って右折します。
そして、自転車はかなりのスピードで堂々と交差点を直進していきます。
もう1つは、交差点付近で自転車レーンと右折車線が一体になる交差点。
こちらもクルマは自転車に細心の注意を払って右折車線に進入し、自転車が来ている時はクルマが一度止まっています。
日本の道路はクルマを渋滞させないことに主眼を置いていて、多くの交差点で歩道や自転車レーンを狭めてまで右折車線を設けています。
このタイプの交差点であれば、必要な道路の幅員を抑えつつ歩行者・自転車の空間を確保できるので良いなと思いました。
ただ、その反面、日本のドライバーに自転車を優先する意識があまり無いので、日本だと危険な場所の烙印を押されてしまうのかなとも思いました。
一方で、自転車が増え過ぎたコペンハーゲン特有の事情も…
とにかく駐輪場が足りない
自転車が増え過ぎて駐輪場不足が問題になっていると聞いていたのですが、実際に見てみると笑ってしまうほど自転車が置いてありました。
路上駐輪が多くて困っている点で言えば、日本と同じです。
しかし、日本と明確に違うのはその対応です。
「通行の邪魔になるなら撤去する」という方針のようで、一見自転車がたくさん置いてある道路でも問題なく通行ができます。
その対応方針は、自転車利用を減らさないための配慮なのか、そもそも台数が多すぎて対応しきれないからなのかは分からないのですが、「通行に支障があろうがなかろうが駐輪禁止区域にあれば撤去」といって多くの巡回員を雇うやり方よりもよっぽど本質的で効率的だなと思いました。
ちなみにコペンハーゲンの中心部には、駐輪場で有名なNørreport駅があります。
Nørreport駅は地下駅で、広場のようになっている地上部分の多くの面積を駐輪場として使っています。
駐輪場を周囲の道路よりも30cmほど低くすることで景観に配慮しているそうです。
公共空間に自転車が大量に停めてあるのを良しとしない国(そして時代)で育った身としては、そもそも自転車が大量に目につく時点で景観ってどうなんだろう…と思ってしまいますが、駅のすぐ近くに自転車を止めることができ、歩いていても自転車が邪魔にならないのはとても羨ましい環境でした。
駐輪ラックは簡易なものが多い
とにかく自転車が多いので、駐輪場はなるべく多くの自転車が停められるようになっています。
駐輪ラックは前輪を挟むだけのものが多く、いわゆる地球ロックをしたり立てかけたりすることができません。
ヨーロッパでは盗難対策のため、車体を立てかけて前後輪を地球ロックできる柵が置いてある駐輪場が多いので、とても珍しい光景でした。
そんな駐輪事情もあってか、コペンハーゲンで見かける自転車は、リング錠で鍵をかけ、スタンド付きの自立できるタイプが主流でした。
これもヨーロッパでよく見かけるような、スタンドが無く、太いワイヤーと大きなU字ロックで鍵をかけているタイプの自転車とは異なっていて面白かったです。
ちなみに、見かけた駐輪場は全て無料でした。
この街に有料の駐輪場って存在するのだろうか、と思うくらいにです。
路上駐輪できるのに有料だと誰も使わないからか、自転車利用を促進したいのにお金がかかって利用が減っては本末転倒と考えているからか、駐輪場は公共が費用を負担して当たり前という考えがあるからか、理由は分かりません。
余談:コペンハーゲンのシェアサービス事情
日本で言うドコモバイクシェアやLuupなどのちょい乗りができるシェアサービスはコペンハーゲンでも普及していて、電動自転車と電動スクーター(いわゆる電動キックボード)に乗ることができます。
電動スクーターはほとんど見かけない
電動スクーターの危険な走行が社会問題になっているとうわさで聞いていましたが、現地で電動スクーターはほとんど見かけませんでした。
おそらく、コペンハーゲン中心部が電動スクーターの駐輪禁止エリアに設定されているからだと思われます。(なので、もしかすると郊外ではいっぱい走っているかもしれません)
シェアサービスの駐輪禁止エリアは、事業者と行政が協議を重ねて決まっていくので、どこかの段階で街として電動スクーターは受け入れないという判断をしたのではないかと思っています。
他都市では電動スクーターが広く普及しているので、自転車の街コペンハーゲンらしい選択だなと思いました。
大手シェアサイクルが破産?
電動スクーターが中心部に乗り入れづらい一方で、シェアサービスの電動自転車はとても多く見かけます。
数年前(2022年ごろまで)のコペンハーゲンの情報では、「Bycyklen」というシェアサイクルサービスが市内で最も展開されて便利であると紹介されています。
しかし、どうやら2022年末にサービスを停止した(事業者が破産したみたいです)ようで、2023年5月にその自転車を見かけることはありませんでした。
以前、日本のシェアサイクル事業に関わっている方に少しだけ話を聞いたことがあるのですが、たとえ電動でない自転車を使っていても収入のわりに経費がかかりすぎるとのことでした。
コロナという大きな逆風が吹いたことで、それよりも厳しい状況が各国で起こっているのかもしれません。
現在のシェアサイクル最大手は「Donkey Republic」
2023年5月現在のコペンハーゲンのシェアサイクルの最大手はDonkey Republicでした。
Lime等の電動自転車も見かけましたが、Donkey Republicの方が圧倒的に台数が多く、他のシェアサービスよりも広い範囲で借りることができます。
もちろん電動で無段階の変速も付いていて、かなり快適に走れます。
また、サービス提供エリアの中であればどこでも乗り捨て可能で使い勝手も良いです。
今回の旅行では、Donkey Republicを郊外で借り、コペンハーゲン中心部まで20kmほど走りました。
乗り捨て自由と思い、コペンハーゲン中心部の好きな場所で返却しようとしたところ、アプリが指定したポートでしか返すことができませんでした。
何故なのかはいまだに分かっていませんが、長距離を走る場合は要注意です。
振り返って思ったこと
とにかく圧倒的な規模のインフラや交通安全意識の高さに感動しました。
世界一の自転車都市の名は伊達じゃないです。
特に印象的だった点を中心にまとめると以下です。
・自転車の移動の質がクルマと同等かそれ以上のレベルとなるようにインフラを整備している
・自転車の移動の質を向上させるためには、長距離の連続したネットワークや幅員の広い自転車レーン、自転車を使っていて負担を感じにくい設備の整備が有効
・場所によっては、クルマよりも早く移動できるような道路づくりもしている
・街中の自転車を全て駐輪場に停めさせることは難しいと認識し、割り切った路駐対策をしている
・ハード整備だけではダメで、ユーザー一人一人の交通安全意識の高さが無いと成立しない
これらは、あくまで通勤移動の半数近くに自転車が使われているコペンハーゲンで必要とされるものです。
なので、これから日本で自転車まちづくりをしたいからと言って、いきなりコペンハーゲンの真似をしようとするのは違うのかなと思いますし、真似をしようとしてそのインフラの規模の大きさを前にして諦めてしまうのは最悪だと思います。
また、コペンハーゲンの都市圏人口は約150~200万人と言われています。(200万人となっている統計は、対岸のスウェーデンの都市の人口も含んでいると思われます)
総務省定義の都市圏だと、熊本、岡山、宇都宮、広島の人口と同等です。(2015年国勢調査)
それ以上の人口の都市では、コペンハーゲン以上のハード整備が必要になる可能性があることも注意が必要です。
自転車まちづくりの最終的なゴールとして、コペンハーゲンの利用環境を知っておくには良いかと思います。
ただ、日本で現実的に直近の取組みを考える上では、もう少し自転車インフラの規模が小さい街であったり、クルマ利用もある程度想定しているポートランドのような街を参考にした方が良いのかなと思いました。
そんなポートランドの自転車旅行記はこちら。
それにしても本当に凄かったな。
次はオランダ走ってみたいな。
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