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ポートランドで自転車に乗ってきた(状況と感想編)

先日、アメリカのポートランドを自転車で走り倒しました。
ポートランドは全米一自転車に優しいまちとして有名で、実際に走ってみて「面白いな~」と思うことがたくさんあったので記録します。

先に結論を書くと、
「クルマ社会なのに自転車の居場所がある」
「というか自転車が街のシンボルだ」
「クルマと自転車の共存って、一緒に走らせるだけじゃないんだ」
「日本の自転車まちづくりが目指すべきなのは、ここでは?」

です。

この記事について

2023年4月にシェアサイクルを借りてポートランド市内を走った時の様子です。

ポートランドの自転車事情は既にごまんと情報があるので、出発前に情報収集をしています。
街の歴史や政策等について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

また、以前、ヨーロッパの一般的な自転車事情をまとめています。
海外の自転車事情をほとんどご存知ない方は、そちらを参考にしていただくとこの記事を理解しやすいかもしれません。

なお、自動車と自転車の文字が似ていて見間違えやすいので、この記事では自動車のことをクルマと表記します。

あ、これ日本で見た景色だ

アメリカ本土は初めてで、行く前はどんな街なのか全く想像できませんでした。
かろうじて想像できるのは、5、6車線の高速道路を大量のクルマが走っていて、週末にスーパーでまとめ買いをして、みんなコーラを片手に豪快に肉を食っている、くらい。
え、違う?

そんな認識だったのと、少し現地の治安も知っておきたかったので、事前にポートランド在住の日本人の暮らしぶりをYoutubeで眺めていました。
現地についてからは、とりあえず街の様子を見ておこうと、しばらく中心部(ダウンタウン)をぶらぶらしていました。

そうして分かったのは、基本的に移動はクルマ。
街にはクルマがいっぱい。
ダウンタウンには商業施設やホテルとともに立体駐車場がたくさん並んでいます。

商業ビル・オフィス・ホテルと一緒に立体駐車場がみっちり並んでいる

あ、これ栄で見た光景じゃん。
小さい頃に名古屋市の郊外に住んでいて、たまに家族でクルマで名駅や栄に行って提携駐車場や安いコインパーキングに停めていた、あの暮らしそのままができる。

名古屋(特に近郊)、そしてもっと交通が不便な地方都市では、本当にちょっとの距離を移動するだけでも車を使います。
ポートランド現地住民のYoutubeチャンネルを見た限りでも、どうやらポートランドも似たようなクルマ社会で、街もクルマのためにできているようでした。

クルマ社会でも自転車の居場所がある

ただ、そんな日本に近いクルマ社会でも、ちゃんと自転車のための空間が確保されていました。

街中で自転車レーンが整備されている

アメリカでは自転車は歩行者ではなく車の一種の扱いです。
なので、自転車は基本的に車道を走ることになります。
(と、ざっと調べた限りでは情報が出てきて、現地でもそう感じました)

そんな中で、ポートランドでは多くの道路で自転車レーンが整備されていて、車道とは別に自転車の走行空間が確保されています。

自転車レーンによって自転車とクルマの空間が分けられています
路上駐車がある前提で自転車レーンが設けられているため、走っていても路上駐車が邪魔になりません

上の写真のように、自転車レーンは基本的に路上駐車よりも内側に、車道の一部のような形で設けられています。
他にも様々なタイプの自転車レーンがあり、現地の交通状況に合わせて臨機応変に整備されていそうでした。
実際、どこを走っていても路上駐車が邪魔になったり、歩行者にぶつかりそうになったりすることもなく、非常に走りやすかったです。

車道や路上駐車よりも外側に自転車レーンがあるタイプ
双方向の自転車レーンが独立して設けられているタイプ
歩道と連続した高さで自転車レーンが設けられているタイプ
右側通行なのに、車道よりも左側に自転車レーンが設けられているタイプ
この手の自転車レーンは初めてでビックリしました

また、右折するクルマとの交錯が問題となる交差点でも、いくつかのタイプの自転車レーンを見かけました。

右折車線の外側に自転車レーンがあるタイプ
(写真は小規模な交差点ですが、大きな交差点もありました)
右折車線の内側に自転車レーンがあるタイプ

2枚目の写真のような交差点では右折するクルマと自転車の動線が交錯していますが、クルマは自転車を優先してくれます。
ポートランドのドライバーは自転車に優しい運転をしてくれるので、危険な思いをすることはありませんでした。

自転車を守り、ドライバーにアピールもするインフラの数々

ポートランド市では、自転車をクルマ以上に優先する交通と位置付けています。
自転車の存在や走行位置を目立たせて安全性を高めると同時に、市の自転車優先の姿勢を住民にアピールしているような箇所が多くありました。

例えば一部の交差点では、自転車レーンの停止線をクルマの停止線より前に出した「Bike Box」というエリアを設けています。
クルマが自転車の存在を認識しやすくなることで右折時の巻き込み事故を防ぎます。
基本的に明るい緑色で舗装されていて目立つので、ドライバーに自転車優先の道路であることも意識させることができます。

結構目立つし広いBike Box

自転車が左折する際は、日本と同じで二段階左折をしなければいけません。
一度直進してから左折を待つ時のスペースも設けられていて、こちらもクルマが認識しやすくなっています。

左折待ちスペースを広く確保して目立たせています

ダウンタウンのとある道路では、クルマを通行止めにして歩行者・自転車のための空間を作っています。
クルマを排除しているので安全に走ることができ、これも自転車優先のまちづくりのアピールになっています。

歩行者・自転車専用になった道路
沿道の店舗のテラス席が出ていたり、路面にイラストが描かれていたり、一見賑やか

ちなみにこの場所、見栄えが良くインパクトも大きいので、ポートランドの脱クルマ社会の事例として取り上げられることが多いです。
実際に道路が賑やかになり、地価も上昇したそうです。
ただ、通行止めの区間は100mほどで周囲も道路が入り組んでいるので、クルマを道路から締め出したという脱クルマの事例というよりは、クルマへの影響が大きくないからできた事例に見えました。
それどころか、この道路の封鎖によって近くの交通量の多い交差点が五差路から四差路になるので、むしろ交通処理がしやすくなるというクルマ寄りのメリットの方が大きそうだなと個人的には感じました。

自転車のための橋までできた

市内を縦断するように流れるウィラメット川は川幅が広く、川にかかる橋の数は限られています。
そんな川に2015年に新しくできたのが、バス・トラムと歩行者・自転車のみが渡れる橋「Tilikum Crossing」です。
ポートランド市は、自転車だけでなく公共交通を軸にしたまちづくりも進めていて(というか、むしろそちらの方がメインです)、その姿勢が明確に現れています。

トラム・バスの通行路(左)と自転車・歩行者の通行路(右)

公共交通も使いやすい

バスやトラムの公共交通に自転車を持ち込めるのは、ヨーロッパ等の海外ではよく見る光景ですが、ポートランドでも同じです。
追加料金なしで解体せずにそのまま持ち込めます。

トラムは自転車用のスペースを完備
おそらく上からぶら下げるタイプ
バスは自転車用のラックがあります

(ほぼ)自転車専用の道路ネットワークを実現する「Neighborhood Greenways」

これまでで紹介した自転車の利用環境は、主にダウンタウンで見られるものでした。
ダウンタウンから少し離れた場所に広がる住宅街には、ポートランド独自の自転車ネットワーク「Neighborhood Greenways(ネイバーフッド・グリーンウェイ)」が整備されています。

これは「歩行者や自転車を優先した公園・学校・職場・近隣地区を結ぶ安全な移動ルート」というコンセプトで整備された道路で、ざっくり言うと「家の近所の落ち着いた道(しかも便利)」というようなものです。
そう聞くとなんて事のなさそうな道ですが、自転車で通行してみると、クルマの通り抜けが無い(ほぼ)自転車専用の快適な道路を住宅が建ち並ぶまちなかで実現しているすごいものでした。

(ほぼ)自転車専用の道路をつくる仕組み

Neighborhood Greenwaysは新設された道ではありません。
基本的に、幹線道路から何本か奥に入った住宅街の中の道路、いわゆる生活道路がNeighborhood Greenwaysに指定され、改修される形で整備されています。
(「幹線道路」は国道みたいな大きな道路ではなく、大小問わず通過交通の多い道路のことを指します。適切な呼び方が分からないので、ここでは「幹線道路」と言います。ポートランド市はそのような道のことを「Busy Streets」と呼んでいて、その方がイメージは湧きやすいかもしれません。)

生活道路は幹線道路の抜け道として使われがちですが、Neighborhood Greenwaysを横切ったり、Neighborhood Greenwaysを走り続けたりする通り抜け目的のクルマが現れないように物理的なバリアを設けています。

幹線道路から住宅街に入っていくと、Neighborhood Greenwaysで直進できなくなります
(目の前で交差している道路がNeighborhood Greenways)
(上の写真を横方向から)
Neighborhood Greenways自体は自転車しか直進できません

Neighborhood Greenwaysと幹線道路との交差点でも、クルマはNeighborhood Greenwaysを直進できません。
また、この交差点は自転車優先になっていて、クルマは幹線道路を横断しようとしている自転車を待ってくれます。

Neighborhood Greenways(立っている道)と幹線道路の交差点
ここでも自転車しか直進できません

Neighborhood Greenwaysの途中にはハンプ(段差)が設けられていて、走っているクルマのスピードを抑えるようになっています。
自転車が走る上でそこまで気にならないのですが、一部のハンプは自転車が走りやすいように切り込みまで入っています。

自転車が走りやすい切り込みの入ったハンプ

上の写真でも分かるように、車道の真ん中寄りに自転車のマークが描かれています。
クルマのドライバーにここが自転車メインの道路であると認識させ、安全な運転を促すことができます。

基本的にシンプルな自転車のマークが描かれていますが、たまにこういう遊び心が見られます
こういうの、良いよね

このように、クルマが走る道路がある一方でちょっと奥に入れば自転車のための道路があり、見事にクルマと自転車のすみ分けができています。

ネットワークを認識しやすい

Neighborhood Greenwaysは網の目のように整備されている上、ルートによっては一本道ではなく何度か進路を変える必要があるなど、少し複雑なネットワークになっています。

Neighborhood Greenwaysのマップ
出典:https://www.portland.gov/sites/default/files/2023/greenways_network_map_2023_final_web_230309.pdf

そのため、ルート上にはサインが置いてあり、ここがNeighborhood Greenwaysであることがすぐに分かるようになっています。
このサインは、沿道の住民が市に問い合わせて無料で取り寄せ、設置しているものだそうです。
至る所にサインが置いてあったので、このプロジェクトが広く市民に認知され、支持されているのだと思いました。

ポートランド市に連絡すると無料でもらえるサイン
クルマのドライバーには低速走行を呼び掛けています

ルートの分岐や曲がり角には看板や路面標示の案内があります。
路面の大きな自転車マークと矢印で分岐が近づいていることを認識でき、進む方向が分からなければ看板に書かれた方向と行先を頼りに走ることができます。
看板には距離、所要時間も書かれていて、初めて来て「まだ着かんのか……」となっていた自分はとても助かりました。

ルートの分岐には看板と路面標示があります
看板には方向と行き先、距離と時間が載っています

とにかく安全で快適

Neighborhood Greenwaysの最大のメリットは、何と言ってもクルマが少ない・遅いことによる高い安全性です。
基本的にクルマ社会で、どこでもそれなりにクルマが走っているので、このような環境はとても貴重です。

また、クルマと自転車のすみ分けができているので、それぞれの道路に空間的な余裕が生まれます。
クルマは自転車に気を付けて減速したり、自転車レーンの整備で車線数を減らされたりすることが少なくなります。
自転車も狭いレーンの中を走らされることがなく、悠々と自転車同士で並んで走ることができます。(並走が法的に許されるかは知りません)

そして、走っていて快適であることもメリットとして挙げられます。
ポートランドは私有地であっても伐採の規制が厳しいこともあり、住宅街は木や植え込みなどの緑が非常に多いです。
朝の澄んだ空気の中、緑の多い道路を走って通勤するのはとても気持ちが良いのだろうなと思いました。

静かで澄んだ空気の中を走れてとても快適

クルマと自転車をすみ分けるのも手なんだ

色々書きましたがつまりこういうことです。

拡大して見てください
意外とNeighborhood Greenwaysの知名度が低いので、こんな感じのイラストでもっと広まればいいのになと思いました

クルマ社会のまちなかで自転車の居場所を作ろうとすると、1つの幹線道路の中でどうやってクルマと自転車の空間を確保するか、といった話になりがちです。
しかし、Neighborhood Greenwaysのように道路のすみ分けをした上で自転車用のネットワークを構築することで、安全性や空間不足の問題を解消し、しかも、自転車にとって快適な環境を作ることができると分かりました。

日本でも生活道路の通過交通対策は取り組まれていますが、近隣住民のクルマ移動に配慮していて、ここまで徹底的に通過交通を排除しているところはあまり聞いたことがないです。
その上、クルマの減った道を使って歩行者や自転車の道路ネットワークを作るなんてことはもっと聞いたことがないので、とても面白い取り組みだなと思いました。

クルマと自転車の共存って、決してクルマと自転車を並走させるだけではないんですね。

ポートランダーの価値観で生まれた自転車文化

インフラだけでなく、ポートランドの自転車文化で特徴的な光景も見かけたので紹介します。

ポートランダーの環境・DIY志向と自転車

クルマ中心の政策に住民が異を唱え、1970年頃から過度なクルマ依存から脱却する政策に転換したポートランド。
それ以来、「本当に良い生き方、暮らし方とは何か」というモノの本質を大切にするポートランド市民の環境志向・DIY志向の価値観が醸成されてきました。
(めちゃくちゃ端折ってるので、詳しいことは予習編で紹介している資料を参考にしてください)

そんな脱クルマ社会の流れがあり、また、DIY志向の価値観と自分でパーツを選んで組み立てる自転車との相性の良さもあってか、ポートランド特有の自転車文化が発展しています。

その文化の象徴の1つとも言えるのが「Community Cycling Center」という自転車店。
パッと見では普通の自転車店と変わらず、完成車・パーツの販売や修理をしているところも普通の自転車店と同じです。
しかし、ここの運営組織は自転車を通じて持続的な環境とコミュニティを作ることを目的に設立されていて、店内には多数の中古パーツが並んでいました。
時には子どもたちに、そのようなミッションに沿った自転車教育も行っているそうです。
活動内容も店舗もそこそこの規模なのに、非営利で活動しているというので驚きです。

外壁が賑やかなCommunity Cycling Center
外には中古販売の自転車が並びます

ちなみに、名古屋のカルチャークラブという自転車店に似ているなと思ったら、コンセプトの源流がここでした。
名古屋の自転車文化って本当に進んでるなあ。

そのほかにも、日本ではなかなか見かけない手組みホイール専門店や自転車用のバッグのお店などがポートランドには多数ありました。
(インフラばかり見ていて、あまり店巡りができなかったのでここでは割愛します)

誇り高き自転車の街

そんなポートランドの自転車文化は街のシンボルとなり、住民の誇りにも繋がっています。

街の中心部、先ほど紹介した歩行者・自転車専用道のそばには、自転車が高々と掲げられたオブジェがあります。
これを見るだけでも自転車がポートランドのシンボルであることが分かります。
(ちなみに、オブジェの下に積み重ねられた自転車は、Zoobombという伝統行事で使用されたものです。ポートランドでは、Zoobombの他にも様々な自転車のイベントが行われていますが、現地で見たわけではないのでこれも割愛します。)

街の中心にそびえる自転車のオブジェ
ポートランドで有名なPowell's Booksの近くにあります

また、ポートランドの消費文化を象徴するような「Keep Portland Weird(ポートランドよ、変わり者であれ)」というスローガンやそれに関連するステッカーも街の至る所で見かけました。
このような住民の自負が、自転車インフラの整備を推し進め、文化の面でも環境の面でも自転車の街を作り上げ、住民の誇りに繋がり、さらなる文化の発展やインフラ整備を推し進め…と、正のサイクルが生じているのかなと思いました。

ポートランドの少し変わった標識のデザインを使った「I ♡ PDX」風のステッカー
(PDXはポートランドの略称です)

でも、気軽に乗るにはハードルが高い…

長時間の駐輪ができない

根本的に日本とは治安のレベルが異なります。
ああ、盗まれたんだろうな、という自転車(だったもの)を各地で見かけます。

ああ、盗まれたんだろうなあ
ああ、盗まれてるなあ
集合住宅の駐輪場なのに、サドルとか盗まれてるなあ
(大体どの家も自転車はベランダで保管していました)

特にダウンタウンではコロナ禍を経てホームレスの数が急増し、人通りが少なくなったことで盗難の危険性はより一層増しているように感じました。(ポートランド中心部の治安悪化は相当問題になっています。ここでは深く取り上げませんが、検索すると多くの情報が出てきます。)

このような地域なので、例に漏れず両輪地球ロックができる柵付きの駐輪スペースが基本でした。
それでも、常に目の届く範囲に置いておくとか、ごく短時間の買い物に行くとかでない限りは屋外での駐輪は難しそうでした。

大学構内の比較的落ち着いた場所の駐輪スペース
KRYPTONITEなどのごっつい鍵で両輪地球ロックしています
もちろん両輪地球ロックが推奨されています

シェアサイクルもあるが割高

そんなちょい乗りの難しさを解消するシェアサービスがポートランドでも展開しています。
電動自転車のシェアサービスは「BIKETOWN」一強状態で、街の至る所でオレンジの車体を見かけます。
電動で変速付き、乗り捨ても可能で使い勝手は良いのですが、30分ほどの乗車で1000円以上(9.40ドル)かかり、円安や物価の違いを差し引いても割高と感じました。

探しても見つからないことがなかったくらいどこにでもあります

BIRDやSPINといった電動スクーターのシェアサービスも展開していますが、こちらもBIKETOWNと同じような値段設定で、油断して長い時間乗ってしまうと苦い顔をすることになります。

この旅行中は「人生に一度のポートランド旅行だからいいか~」とシェアサイクルに乗り続けていたら、最終的に1万5000円近く請求されて1週間ほど苦い顔をし続けることになりました。

結局、乗っている人をあまり見かけなかった

そんな治安の事情があってか、リモートワークが主流になってしまったからか、はたまた天候の悪い季節に来てしまったからか、通勤時間帯でも自転車に乗っている人はあまり多くありませんでした。
自転車で賑わうポートランド見てみたかったな。

朝の通勤時間帯でも自転車利用はまばら

振り返って思ったこと

Neighborhood Greenwaysはめちゃくちゃ日本に合ってる

個人的な自転車ツアー以外にも、サードウェーブコーヒーの店舗めぐりをしたり、トラムで郊外に行ってみたりと、ポートランドをたっぷり楽しむことができました。
ただ、殺伐としたダウンタウンの光景を目にし、自転車も多くは見かけず、世間で言われているほどの良い印象を持てなかったのが正直なところです。

それでも、ポートランドの自転車利用環境はかなり整っていて、まだまだクルマ優先の道路政策を取っている日本が学べることは多いと思いました。

特に日本の
・道路上の空間が限られている
・高齢者の自転車利用も多く、様々な速度の自転車に対応できるゆとりある走行空間が必要
・郊外店舗が多いためにクルマ移動が多く、クルマを徹底的に排除する政策を取れない
・クルマのドライバーの自転車への理解が少なく、自転車ユーザーの多くが車道の走行に危険を感じている
という状況を考えると、クルマと歩行者のすみ分けができるNeighborhood Greenwaysのような道路は非常に有効だと感じました。

都市部にある地元住民やタクシーに使われがちな裏道、地方にある国道と並走する民家が立ち並ぶ旧道など、場所だっていくらでもあると思います。

自転車まちづくりを進めたい!と言って、超自転車先進都市のコペンハーゲンやロンドンの事例から学ぼうとする日本の組織は多いですが、インフラ整備をメインに直近の取り組みを考える上では、ポートランドの方が参考になるのではないのかなと思いました。

日本で取り組む上で必要なこと

Neighborhood Greenwaysが日本で参考になると思ったのと同時に、日本で同じような道路を作るのは簡単ではないだろうとも思いました。
というのも、周辺住民とドライバーのプロジェクトへの理解が不可欠だからです。

Neighborhood Greenwaysは、周辺住民のクルマ移動に多少の不便を強いる施策です。
そのため、不便を上回るだけのメリットがあることを理解してもらわなければいけません。
これまで問題無く暮らしてきた人に住環境が良くなると言ってもあまり意味が無いので、自転車に乗る人が増えて街の渋滞が減るとか、健康な人が増えるというような説明をすることになると思います。
街全体の在り方を考える習慣があまり無い日本人に、これを理解してもらうにはハードルが高いように感じます。

また、自転車優先の交差点を成立させるためには、クルマのドライバーに自転車を優先する意識を持ってもらう必要があります。
最近ようやく、歩行者がいる横断歩道でクルマが止まるようになってきたように、ドライバーに対する地道な訴えかけが必要になると思います。

ポートランドでは、過度なクルマ依存からの脱却を進める上で、また、自転車の利用を推し進める上で有効な価値観が住民に根付いていました。
結局のところ、日本での施策の成否は、街の人に「自転車っていいね」と思ってもらえるか、自転車が走りやすい街ができることで「この街って素敵だね」と思ってもらえるかが一番大事なのかな、と、思いました。


記事の内容と全然関係無いのですが、最後にダウンタウンで見かけた可愛いハムスターのイラストの写真を載せて終わります。


貴様は誰なのだ!

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