#3【私のカリスマ】才能とセンスに嫉妬するぅ…!笛美さんの「全部運命だったんかい」感想
これは面白いんだろうな、と思いながらも,
読むのを避けていたのが掲題の本である。
理由はいくつかある。
1,自分が広告業界にいる(いた)ため、読んだら諸々の現実を再確認してしまい、仕事ができなくなるのでは?という恐れ。
2,「フェミニズム本」と呼ばれるものはたいてい性暴力などの辛い描写が多く、イマそれを受け止めきれるメンタルにない。
3,著者の方が才能にあふれていて文章もうまいことは知っていたため、
「ミソジニー社会である日本の広告代理店での労働に耐えぬいた広告屋さんが、その才能とノウハウを生かし、会社とは無関係なところでなんと世論を動かしてしまった話」、なんて読んだら、
それに比べて自分の「何者にもなれない」感、器と気の小ささ、所持している人生経験のつまらなさに絶望しそうだから、という理由。
これらの言い訳をし、ずっとファンで尊敬していたし、SNSでもたまにやりとりをしてくださる笛美さんの本を、書店でぺら読みしては買う勇気が出ず、そのまま店を後にする…ということを繰り返していた。本当に申し訳ない。
でも、周りの友人の読書投稿や、自分が広告の業界から退いたこともあり、
また現在安倍元総理の国葬を巡って世論が割れている(というか反対の意思を示している国民ががこんなにいる)状況で、このタイミングで笛美さんの本を読んでみるのも良いかもしれないと思い、ついにフルで読了した。
一ページ目から。「シュプリームを着こなす広告マンのお兄さんたち」の描写でマスクの下で笑いをかみ殺す。ああ、本当にこれは現場にいた人しか書けないエッセイだなとにんまりした。
性差別や性暴力のしんどい体験談が続くのかしら、と思ったのに、以外にも前半の広告代理店の働き方描写でやられてしまった。笑
そうそう、こういうとこあったよな。女性社員に限って「うちは男女平等だから」とか言い切るあの感じよ。
そんで、いい広告はいいクライアントがいないと生まれないという悲しき事実。モンスタークライアントにあたればいいモンも生まれにくくなるのは明白なのに、「それをなんとかするのがクライアントワークだ!」とヒロイックに頑張ってしまう私たち。嗚呼。
自分たちはお客様のおかげで食べていける。
フィーをいただいている以上はそれに見合う仕事を‥って、アレも、今思えばちょっときつかったな。
また、仕事がデキちゃう自分と、世間が求める女像とのギャップに引き裂かれるところは、自分の大学時代と重ねて読んでしまった。頑張って「名門」と言われる大学に入ったのに、バカなほうがちやほやしてもらえるとか、
男ノリについていける自分!!と自分に酔ってしまう名誉チャンぷりとか。
笛美さん、多分相当優秀方なんですよね。
自己分析して、それに対処するために計画立てて、行動して‥婚活でPDCAまわしちゃってるのとか。
そして、そこに関しては本当に自分も同じやんけ!と。優秀さは桁違いだけど、受験と恋愛は違うと頭ではわかっていても「いや、しかるべき努力と手順を踏めば、絶対に成功へのプロセスがあるんだ」と信じて疑わない感じが、なりか似ていて、辛かったw。
前半のエピソードを読んでいると、
「てか、あの笛美さんもこのフェーズ踏んだんだ!?」とかなりショックを受ける。
ちゃんとポストフェミ〜なスタンスも、性被害を告発する女性への冷たいまなざし、名誉男性時期も経ていまの彼女がいるのだ。
いまでは本当に立派なフェミニスト・アクティビストのイメージがあるし、笛美さんのあのTwitterデモ以降の発信を見てきた人はきっと、
「最近目立ってるフェミニスト」「青い顔の論客」「いつもフェミニズムの発言してるあのアカウントか」と思うだろうし、エッセイをちゃんとフルで読むまではわたしもそうだった
本を読むと”この人だって、ちゃんと一通りやらかしてきた”というのがわかる。
…本当に失礼な書きぶりでごめんなさい、という感じだが、相当にやらかしている。もちろん私自身もやらかしていた。
だから読んでいるといろんな記憶がよみがえり、読書時間は相当な"もらい事故"だった。
また、笛美さんは冗談抜きで本当におもろい人なんだなというのが伺える。
じゃなきゃ「婚活で男性陣がドン引きする」広告代理店にクリエイティブとして入れないと思う。
彼女の面白さは下記のような、こういうブラックジョークにも表れてるなあと思った。(笑うわこんなん)
煽りスキルが高くいらっしゃる。笑
後個人的に、女性を凌辱するコンテンツが溢れている、と言及しているのところで「互いに同意をとるSMとは違って」と書かれていたのでSM愛好家としてはおっ♡となってしまった。私は実はSM愛好家(※しかもM女)兼、バリバリフェミニストなので…。
後半の自分の「生きづらさ」が政治とむすびついていくパートも、F国という(北欧?)という海外へのインターン体験が転機になっているとは知らなかった。
でもF国から帰ってきてそれを声高に主張すれば「海外かぶれ女」扱いされることはよくわかっていらして、本当にこの方、世間よりも何枚も上手(うわて)なのよな…。
世の中にはグルメやファッション、オタ活など楽しいことが溢れているのにデモなんて興味持てるかよ、という本音も。
さらには、おとなしく草を食べているだけの「うさぎさん」(この表現がまた秀逸だよな)に対して
「アベやめろ」
「国民よ、立ち上がれ」
などのややオールドなスタイルがアクティビズムかえって逆効果であることも、当然お見通しなのだ。
そんでいて、それがトーンポリシングにならないよう、そういったオールドな、強い表現が「自分に響かないな」と感じたら、自分のスタイルで発信してみましょね、と言ってるところも賢い。
あ~~ん本当に賢い。
あらゆる炎上、クライアントのリスクを回避して、まさに気配りの鬼。
まさにこれが広告代理店の人間だよ…!!笑
広告プランニングのメソッドを使って、気づかないみようとしない社会に一石を投じようとするところは、近い業界にいた人間として、けっこ~痺れた。
「ほしいほしい」と思っていた広告賞という王道でTHE・マッチョな栄光の道から一線退いたあとで、彼女が勝ち得たものは果たしてなんだったか?
「世の中を自分の創作の力で動かしたい」とエゴたっぷりに日夜野心を燃やす人間ががひしめき合う広告屋さんたちが、
絶対に絶対に震えるほど羨むであろう形での「成功」。だった。
SNSでの大バズり、からの人々の態度変容。
法案の差し止めというロビー活動も真っ青な結果。
就活生が広告代理店への志望動機で上げがちな、「広告を使って社会の態度変容、人々の消費行動を変えたいです」…なんて、こんなあっぱれ事例見せられちゃったらもう軽々しく言えないよね。(笑)
そしてこれを会社にバレずにひっそりと、たった一人で成し遂げちゃうというところ。会社の人間は彼女の偉業を知らない!というところもう~ん実にカタルシス~~!
事実を本にするにあたり、多少はドラマチックに演出されているのだろうなと思いつつも、いや、かっこよすぎませんか。
わたしはよくTwitterで笛美さんにダルがらみしているアカウントや誹謗中傷を見るたびに、「やめとけやめとけ勝てねえぞ」と思っている。
こんなおもろくて影響力のでかい女に、文字の力で勝てるわけがないだろ、恥ずかしいよと。
クソリパーには、「悔しかったらあんたもTwitterトレンド大賞とれば?」と思ってしまう。
…ええ、ええ、私もなかなかにマッチョな女でございます。笑
お前誰だよって感じですが、笛美さんに憧れるけどいまいちなりきれない、しがないファンです!!
最後に、「笛美さんに素直に嫉妬」してしまったという話をします。
自分もなかなかにきつい広告系の職場にいたし、仕事がなんか知らんけど”女にしては”できちゃう自分と、世間の男性が欲しがる”女の子”を上手に演じられない自分の間で病んだりと、いろんな思いをさせられてきたけど
こんな風にプラン立てて行動に起こしたり、それでもなんだかんだ優秀で仕事で賞を取ってしまったり、1本のツイートで世の中を変えちゃったり、自分の経歴は笛美さんにはカスりもしてないことに、正直ちょっと落ち込んだ。。
こんなすごい人と自分を比べるな、と言われてもどうしても比べてしまうのは、彼女がSNSなどで反応して、コメントをくれる、
あくまで普通の「一般人」で、自分も頑張れば彼女のような存在になれそう、手が届きそう、と思ってしまうからなんでしょうね。。
いっそ身バレしてしまって、
「あっこれはもう自分なんかが敵いませんわ」と思わせてほしい。w
実は先日、会社の採用用に自分の仕事観についてのnoteを書く機会がありまして。投稿したところ、会社のnoteにも紐づけてもらえたことでたくさんの方に読んでいただくことができて、なかなか社内からも評判で、親戚や友人たちからも「いい文章だった!!」と褒められた。
けど、こんなに拡散され、多くの人に読まれたのは「会社の看板」がついているから。それに会社の偉い人や人事がRTしてくれたからで。
比べて自分のこのプライベートなnoteは…
読んでくださる方には心から感謝しつつも、世の中を変えるとはお世辞にも言えないレベルで伸びないし。
※読んでくださるあなたには本当に感謝しているのです、スキの数にこだわってもしゃあない、それはわかってるんです
なんか私って、本当にちっぽけだよなあ、
このまま凡人として人生をやっていくんだろうなあと思った。
でも、自分はじぶんが思うよりも、まだまだ若くて、この先とんでもねえことが起きるかもしんないな、という若干希望がもてた。
まだ今は、いろいろ経験して、面白いエッセイや文章を書けるようになるためのネタ集めと、かるいアウトプットを繰り返して色々学んでく期間だから、あんまり焦らなくてもいいんじゃないのん?とこのエッセイを読んで思えたのだ。
思えば26歳って、、、
笛美さんまだ結婚相談所にも申し込んでないじゃん、、
りんご農家婚活事件も起きてない段階じゃん
、、
このエッセイは寿退社めがけて結婚に焦ってる幼馴染にちょっとプレゼントしたいですね。
うざがられるかな。。。
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