安全とは


少し堅い話がしたい。
今回話の内容は少々堅いが気持ちが入り込んで文章が荒ぶっている点は許容してもらいたい。

安全とは一体何か。

まず安全という単語は広辞苑には
「安らかで危険のないこと」
「平穏無事」
「物事が損傷したり、危害を受けたりする恐れがない」
とある。

「日本の鉄道は安全だ」という文言をよく聞くが、果たして辞書通りの役目を果たしているだろうか。

現代では2005年に発生したJR福知山線脱線事故が未だに記憶に新しいが、鉄道の安全は常に事故との戦いだった。

あなたは普段鉄道を使っていて
「今乗ってる電車は脱線しないだろうか」
「自分が降りる駅を通過してしまわないだろうか」
なんて考えて乗っている人はまずいないだろう。

しかし最近でも中国やインドでは鉄道事故で死人が出ることも珍しくない。

それが日本ではどうだろうか。
人身事故を除けば鉄道会社側の過失で死人や怪我人が出ることはほぼ無いと言える。

そう、それだけ日本の鉄道は安全面で信用されている。それは日本国民は当然だと考える中、外国から見れば羨ましい技術なのだ。

つまり安全は商品価値になり得る。

現に日本の鉄道保安技術は海外向けに商品として提供し、その安全性の高さを世界に広めている。

さて話を弊社に置き換えてみよう。

会社名はお出しできないが、弊社は安全とサービスを両立できる会社を目指している。この目標は聞こえこそいいが果たしてその目標は達成できるのだろうか。

鉄道利用者は安全にそして早く目的地へ、また遠くへも安く利用したいために鉄道を利用する。その中でも安全は必須項目であるが、日本人の中では無意識の中に鉄道は安全であると思い込んでいるところがある。私もその1人だ。

弊社は安全は当然としてサービスを強化し利用客の確保を目指した。しかし弊社の目指すサービスはお客さまを神様のように扱い、神様の旅行のお手伝いするといった内容だと私は感じている。無理矢理作った笑顔でヘコヘコと頭を下げ、また多大な費用を使ってその演技力を評価する大会まで開催している。

…果たして弊社にとって安全は当然だろうか

最近異常気象が全国的に目立っているが、弊社はその猛威をフルに受け止めており、毎年廃線になるレベルでの被害を受けている。

その対策してますか?

答えはNoだ。

では最近流行病で節約と騒いでいるが安全投資まで節約していませんか?

答えはYesだ。

やれやれこの会社は利用者のニーズが本当に分かっているのだろうか。
この会社で運転士をしている自分でも不思議な感情に陥ってしまう。自分の会社の鉄道を信用しきれるか、その疑問が頭に浮かんでいる時点でアウトだ。

偉い人に質問をできる機会に弊社の安全投資について聞いてみたことがある。
「倒木による事故や異常気象による被害が大きい中で、事前に投資できるところに投資しようと思っていますか?現時点ではしてないですよね?」
と聞いたところ
「勿論何もやってないことはない。事故が起こって対策などはしっかりやっている」

いや違うだろ。

安全の意味、もう一度確認してほしい。

「安らかで危険のないこと」
「平穏無事」
「物事が損傷したり、危害を受けたりする恐れがない」

もう被害が出てるんですよ。遅い。遅すぎるんですよ。平穏無事じゃないんですよ。

それを実現できていない弊社にサービスを語る資格はない。

またサービスについても履き違えている点がある。

笑顔や演技を評価する大会が行われている中、車内ではゴミ箱はゴミで溢れ散らかっており、車両は触っただけで手が茶色くなってしまうほど汚い車両が走っている。

そもそもサービスの最低ラインができていない状態で「おもてなし」や「満足度の高い接客」ができるわけがない。それは幼稚園生が素因数分解を極めたいと言っているようなものだ。(例えが分かりづらい表現で申し訳ない)

節約をしていくことは会社存続のため急務であるが、節約していく所と費用をしっかりかけなければいけない点は間違ってはいけない。

しかし私は自分の会社を卑下してアンチテーゼを語っているわけではない。弊社の鉄道は旅行商品として非常に価値があるものだと評価している。しかし鉄道は旅行者だけのものではない。地域の方々の足であることを忘れてはいけない。

地域の方々が日頃、通勤通学などの移動で使うことを考えれば車両の清掃や安全性こそが本来のサービスではないだろうか。

今日のニュースをスマホでチェックしながら仕事に行ける。
うとうとしながら電車に乗り部活の朝練に行ける。
コンビニで買った朝ごはんのゴミを捨てるゴミ箱がしっかり設置してある

電車に乗っている空間で電車が安全かどうか考えず、かつ清潔感のある車両を利用できることがお客さまに対しての最低限のサービスだと私は思っている。

その中で安全について、本当に弊社は胸を張って自分たちの鉄道は安全だと言いきれるだろうか。私の所属する乗務員区所でも最近お客さまの安全を脅かす事象が発生したばかりだ。

また他区所でも考え事や睡眠不足による事故が絶えない。

しかし、それは乗務員個人の問題であって…

果たして本当にそうだろうか?

乗務員の仕事は泊まり勤務で、それぞれ番号が振られており、番号によって乗務する列車が決められている。

つまり乗務員の仕事を決める人はその睡眠時間さえも決めることができる。

では欠伸をして乗務している運転士はいないんですね?

Noだ。

私は今日も乗務中に欠伸をしてしまった。
人間が3〜4時間の仮眠で昼過ぎまでまともに活動できるわけがないのだ。それを個人努力に任せて、いざ事故が発生すれば個人の対策をとらせているのはいかがなものか。

そもそも睡眠時間を確保した勤務を作れば良いではないか。簡単な話だ。

私がハンドルを握っているのは私だけが乗っているのではない。お客さまが何十人、何百人と乗っている。

もし睡眠不足による事故が発生しても勤務を作っている人間には全く過失は問われない。だからキツい勤務を易々と作ることができるのだ。

さて乗務員の睡眠時間管理1つにおいてもこれだけの問題がある中で弊社の鉄道は安全ですと語ることはできるだろうか。

「日本の鉄道は世界一安全だ」

私もこの言葉を胸を張って言える会社を作りたい。一運転士として、そして日本の鉄道員の一員として。だから私は運転士として現場の声をこの会社に伝え続けていく。

安全な鉄道をみんなで作ろう。
私が選んだ会社が出来ないことはない。
安全を軽視する鉄道会社に入社した覚えはない。今一度皆んなで安全を考えよう。

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