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終わり、そして始まり 1(母探し)

母は私が二歳の時に家を出た母、私には母の記憶が全くない。

 きっと再婚して幸せに生きているのだろう、今まで勝手にそう思っていました。
だから私からは、積極的に母を探すことはしませんでした。新しい家族と幸せに暮らしている母の前に突然私が現われたら、幸せに生きている母の生活を終わりにしてしまうのではにか? そう思うと、母を探す行動は取れませんでした。

少しだけの期待

 でも少しだけ期待はしていた。もしかしたら母の方から、私を探してくれるかもしれないと。

 今から二年前の2018年、Facebookのアカウントを開設しました。
数枚手元にあった写真の一枚で、母が幼い私を膝に乗せて写っている写真をプロフィール貼り付けて、メッセージには母の旧姓で

尋ね人:〇〇恵子

と書いて公開しました。

子供の頃


そして母からの連絡を待った。

 正直、期待はしていなかったです。もう60才を過ぎる母がFacebookをやっている事など考えられなかったからです。

 たまにFacebookに登録したメールアドレスに届くのは、「この人は友達じゃない?」みないた、お節介なFacebookからのメールばかり。そして、投稿件数ゼロ、友達0人の状態が開設してから1年くらい続いた。

突然の知らせ

 この日の朝は普段と変わらぬ一日が始まった。いつものように会社の事務所に一番乗りで出勤した。
エレベーターから降りるちょうどそのとき、スマホから”カーン”という聞きなれた音がしたので、事務所の鍵を開けながら、スマホを眺めるとFacebookのメッセンジャー通知でした。

 また、いつものお節介メッセージかと思いながら、いつものならスライドして削除するのですが、今回はそのままスマホをポケットに仕舞った。何かスマホに表示された文字の感じが違ったからである。

 自分の席に着き、仕事の準備をするのですが、なんか変な胸騒ぎというか、スマホが気になってしょうがない。

 目の前にあるパソコンの電源を入れ、Windowsの起動画面を横目に、ポケットから出して机の上に置いてあったスマホを手に取り、画面を開いた。

スマホ

「突然失礼します。恵子の娘です。先日母が亡くなり遺品を整理してたら同じ写真を見つけました。・・・」

えっ?
母の娘? 
私の妹?
私に妹がいたんだ。

そのメッセージは存在さえも知らなかった母の娘、私の妹からの訃報の知らせでした。

・・・出社して10分、同僚が出社してきたと同時に、適当に理由を付けて、私は会社を早退した。



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