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バッタ街道は波乱の道 『バッタを倒しにアフリカへ』

 「好きなことを仕事にする」。社会人にとってこれ以上の幸福はないが実現するのは容易ではない。研究者にとっても同じことがいえる。自分の大好きな研究を続けられるか否か。どれだけ好きで努力をしても夢の実現には挫折がつきまとう。多くの人がそうした板挟みの中で仕事をしているのかもしれない。

 本書は、バッタ研究に全身全霊をかけた「バッタ」博士の著者によるアフリカでの研究の激闘を綴った一冊である。幼い頃ファーブルに憧れて昆虫学者になることを決意した著者であったが、その道のりはなだらかではなかった。安定した生活と研究費を得るには実績と質の高い論文が必要だ。論文の作成のために、彼は単身アフリカに向かう。ところがこれが修羅の道だった。

 研究対象はアフリカの半砂漠地帯に生息するサバクトビバッタ。この虫の大発生は、しばしばアフリカの農業に甚大な被害を及ぼし、飢餓問題の一端となっている深刻な現象である。サバクトビバッタの研究が成功すれば、防除方法も発見でき、アフリカの人びとを救える。そのうえ論文のネタにもなる。夢の実現が見えてきそうだ。しかし、ここで大きな問題が発生。気候の影響でせっかくの研究対象であるサバクトビバッタは姿を消していたのだ。研究対象がいなければ研究はできない。研究ができなければ成果もあげられない。ついに、研究費用の底が見え始める。

 大好きなバッタ研究を続けることはできないのか?絶望の中から彼は研究を続けるためのさまざまな策を練る。著者のバッタに対する情熱は次第にたくさんの人間を巻き込み共鳴していく。本気の人間は人を惹きつける。

 「好きを仕事にする」そんなものは夢物語だと言われるかもしれない。しかし、本書を通して著者の並々ならぬ情熱を知れば、この言葉を一瞥することができない自分がいる。本気の人間の強さが知れる一冊だ。

『バッタを倒しにアフリカへ』 前野ウルド浩太郎 著

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この本たくさんの上手な書評家さんが書評してますね。検索するとすぐ出てくるので、興味のある方はそちらを見たほうがいいです。
これは去年の夏くらいに書きました。ところでnote更新全然できないねえ。

私は描かないマンガ家ならぬ読まない読書家ですので。あと(してない)就活生でもあるので、忙しいです。

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