文部科学省委託事業「不登校の要因分析に関する調査研究報告書」を見て(1)
以下、所属の組織に関係なくごく個人的な見解です。様々なバイアスが入っていますので薄目でご覧ください。
元の調査結果は以下のとおりです。
不登校の要因に関する調査研究が公開されていました。
この調査研究が興味深いところは「在校生」と「不登校生」を同時に調査しているところです。ですので不登校予備軍がどの程度いるかわかる可能性もあります。
また、これまでの問題行動・不登校調査(いわゆる問行調査)の内容を変えるきっかけとなる(新聞記事では「変える」と断定的に書いてありましたが、、)にもなるかと思います。
NHKでも「回答方法を変える」としていますね。
「不登校の調査ってこれまでにもありましたよね?」って思われた方。
確かに他の行政やNPOさんなどの調査結果もありますが、よくマスコミなどで取り上げているのは文科省による「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(いわゆる問行調査)です。
児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査
この調査、平成27年度調査までは「問題行動等」と不登校がいっしょくたにされていたのですが、平成28年度から不登校を併記するようになりました。
ささいな変化ですが、不登校を問題行動と分けて考えるようになったことの現れかなと思います。
不登校という言葉はいつ頃から?
不登校という言葉自体は「学校嫌い」→「登校拒否」→「不登校」へと遷移してきた歴史があります。私の記憶する範囲では不登校という言葉は20世紀末頃から出てきていたと思います。(これによれば1998年頃)
当時の報道などでは「登校したくてもできない子もいるので『不登校』に言葉を変える」とされており、「拒否」(自分の意志で行かない)から受動的なニュアンスの行けないに変わったと記憶しています。
つまり、この頃すでに「不登校は本人以外の周囲に何かしらの問題がある」という社会の認識になっていました。前世紀の話ですけどね。
問行調査は誰が回答しているの?
問行調査の回答者は学校や先生です。
お忙しい中時間をさいて回答していただいているのですが、実は当事者(保護者や児童生徒)が回答しているわけではないようです。ところが他の機関やNPOが調べた当事者などへの調査結果が明るみになるにつれ、どうもちょっと認識にずれがあるのじゃないのかな?ということが話題になってきました。
認識が異なるのはあたりまえです。
職場にLOVOT(ロボット)がいるのですが、みなさん「こっち見てくれた!」とか「私に抱っこされて喜んでいる!」と話しています。
でもこれらは全てプログラムされた動作であり、実際にLOVOTがそう思ったり感じているわけではないはずです。(Ghostがある可能性は捨てきれないし、いや脳もそもそもプログラムされているし、となるともう何も言えませんが、、)
みんなはエスパーではない
この「誤解でコミュニケーションが成立」しているのを見ながら、まぁエスパーでもない限り相手のことは分からないなぁっていつも思うのです。
行動である程度推測はできるのですが、親も先生ももしかしたら本人も自分のことを誤解している可能性があります。
今回の調査は母数が多い(調査Aの児童 N=18,310)ので、どうも立場によって認識が違うらしいかも?というのが分かっただけでも成果かなと思います。(それが回答方法の変更につながった)
みんなエスパーじゃ無いので互いの認識がずれてるのは仕方がないっすよ。批判すべきことじゃないのかなと思います。(なので当事者同士の対話が大事というご意見には大賛成です)
政策にはエビデンスが必要
官僚の方と話していると言われたことがあるのが、
「エビデンスがないと財務省は予算を通してくれない」
このあたりの真偽や是非はともかく、国の不登校政策はこの問行調査で進められてきたとも言えるでしょう。
エビデンスにはある程度科学的根拠が必要です。
個人の意見や発見、思いつきは大事なのですが、政策として反映させるにはこうした調査が必要になると思います。(もちろん今回の調査にはそうした声が背景にあったと思います)
調査に協力していただいた学校・教育委員会・保護者・当事者に感謝
地方自治である以上、文科省といえども強制できないことは山ほどあるでしょう。
そうした中、お忙しい中時間を割いていただいて回答してくださったことに関係者ではないものの感謝しています。
このせっかく開かれたチャネルを絶やすことなく、この関係を少しずつ太くするように見守るのが私たちができることかなと思います。せっかくのエビデンス(あるいはアセスメント)無くなるのは避けたいですね。
ここまでのまとめ
ここまでざっくりまとめると
これまでと異なるエビデンスが出てきたかもしれない
これを元に政策を変えることのきっかけとなるかもしれない
認識が異なるのはしゃーない
このNoteの大事なポイント
先生や教育機関とそうでない方の対立を煽っているわけではない
先生や親などがわかっていない部分を探し出すのが目的ではない
この調査の興味深いところ(再掲)
在校生と不登校生を同時に調査した
同じ子に対し、本人と先生と親の認識の違いを調べた
まだ分析していない項目もある(報告書p.43)
5月18日(土)に報告会します
報告書の気になるページ
https://kohatsu.org/pdf/futoukouyouin_202403.pdf
この報告書の気になるページを見ていきます。
p.43 調査の限界と今後の可能性
後ろ向き研究であることが書かれています。正確性はやや劣るけど、本人と先生と親の認識の違いを調べたのは今まであんまり無かったんで、そのつもりで読んでねってことが書かれているようです。
p.23 きっかけ要因
前年の問題行動調査(教員がいつのまにか回答していたアンケート)
で、
「Aさんは無気力だったなぁ、、」
「Bさんは無気力じゃなかったなぁ、」
って回答されたAさん、Bさんが回答した内容。
結局、Aさん(先生に無気力が要因と思われている)とBさん(先生に無気力が要因と思われていない)に不登校のきっかけで違いがほぼないんじゃね?(有意差なし)という結果かなと。
この結果、児童生徒がきっかけとしてあげているのは、
気分の落ち込み・イライラ、からだの不調、朝起きられない などです。小児うつの症状と似ていますね。
p.23 きっかけ要因・保護者回答(2)
前年の問題行動調査(教員がいつのまにか回答していたアンケート)
で、
「Aさんは無気力だったなぁ、、」
「Bさんは無気力じゃなかったなぁ、」
って回答されたAさん、Bさんの保護者が回答した内容。
先生が「Aさんは無気力が不登校の主たる要因」だろうなと思っていると、Aさんの保護者は「学校の決まりのこと (制服、給食、行事等)」が要因ではと思っているという結果。しかもBさんの保護者の2.62倍(OR=2.62)そう思っているとのこと。
バイアスが入りますが、学校のあれが嫌これが嫌って話せるのが家族だけならこの結果も頷けます。
学校の行事に嫌々参加していたのかな?
コロナで簡素化された卒業式の練習がまた復活したのでしんどかったのかな?
制服の素材が嫌だったのかな?
詰め襟が苦しかったのかな?
アレルギーは無いけど感覚が嫌な食べ物があったのかな?
納豆が出るのかな?
教室の前方に顔写真が貼ってあって落ち着かないのかな?
学校生活に苦手があって先生が「無気力」とみるのも仕方が無いのかもしれません。
今どきは空気読めって言われますが、その子は「拒否(問題行動)」ではなく空気を読んで「やる気がなさそうにする」ことでクラスや先生に迷惑をかけまいとした戦略だった想像できます。
Aさんはどうしても我慢できない問題を抱えているのに、クラスに迷惑をかけないようにしているむしろ社会性がある・責任感のあるタイプかもしれませんね。
今思えば、1995年に出版された「やさしさの精神病理」(大平健)もKYという言葉が出る前からこの状態を予言していたとも考えられます。
私は「親に心配をかけまいと連絡をとらない」タイプですが(突然電話をすると何かあったのではいつも心配するので、連絡を取らなくなる)、こうした認識の異なる「やさしさ」は「クラスに迷惑をかけない、授業の進行を止めない」優しさとも言えるのかもしれません。
さてこの項目、無気力という先生の見立てはあっていたけど、その背景には保護者のみが知る事ができる問題が隠れていたのかなと解釈しています。
この問題をどう共有するのか、その重さをどう認識するのかが今後の課題となるのかなと思います。
ここに書かれているのはあくまでも個人の感想です。
「世の中には真実はなく、あるのは解釈のみである」という言葉がありますが、この映画(オウム真理教の内に潜入して、内側から社会を見つめたドキュメンタリー「A2」監督:森達也。マスコミ批判に見えてしまうけど、森監督はそれを否定している)を見るとほんとうに世の中って解釈だよなぁって思います。
(この映画、個人的には当時の社会背景を知らない平成生まれ以降は閲覧制限かなと思います)
3000字超えたのでやめます。
別の質問項目に、早急に対応すべき課題が重要なのでは?と思われるものがありました。(2)で書きたいと思います。
昔のことSCさんを予約したら1ヶ月後と言われました。もやっとしました。SCさんを責めるのではありません。
「明日ね」「来週ね」では遅い問題もあるかもしれないと思っています。これは親としても自責にかられますが、優先順位づけ=不登校トリアージ(この言い方は不適切かもしれないけれど)につながればなぁと思います。
つづきはこちら
<画像について>
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ヘッダ画像のプロンプトは「仮想空間で学んでいる世界中の子ども達が仮想空間の草原で遊んでいる画像を横16縦9の比率で作成してください」
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