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02|私バック・トゥ・ザ・フューチャー

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母→私→息子。初めての二人三脚

ほぼ愛せない母への。唯一愛せる記憶。それをふと思い出したの。
それは、ある春の、心地よい風と緩い陽射しの中で。母がなんだか親らしい事をしてるなぁと感じながら自転車の練習をしていた。

その日は、補助輪が外れた、人生の中で特別な日になる。
後輪の上にある銀色の荷台を両手で掴みながら、後ろから支えるように母は駆け出す。補助輪に慣れてしまった私は、変なチカラが入ってしまい、なかなかペダルを漕ぎ切れない。どうしても両足をすぐに地面につけたくなってしまう。自転車が横に倒れるのが怖くて。

いつの間にか、約束もしていないのに、クラスメイトの男子が、私のまわりにいて。やいのやいのとアドバイスしてくる。当然その子の自転車には補助輪の姿はない。先輩カゼを疎ましく感じつつ、私は母の「頑張って」に付き合う。自転車練習は私自身の事なのに、母の親っぷりに「付き合ってる」感覚すらあった。

あれは2時間くらい練習して、少し傾斜のある坂から、降りたその時であった。初めて自分の足がペダルにのったまま2回転した。横に倒れそうな車体がペダルの推進力で前に滑るように進んだ。その時、少し私は大人になった。

そして、それから数十年後。今、私は、子どもの自転車を後ろから押している。目の前に座る息子が、自分に見えた時、私は母になった。母は生きているだろうか。許せない事はたくさんあるけど。ダークサイドも日に日に溶けていく。まずまずの幸せの中にいてくれたらいいな。とは思えるほどに私も死に近づいている。


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