見出し画像

【感想】世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか

以前から美術に興味があった私は「ビジネスマンがなぜアートを勉強するのか」が気になり本を読んでみました。

著者の山口さんは慶應義塾大学院の美術史学を選考され、コンサルティングの道に進んだ方らしく、内容はコンサルティングに寄った内容が多かったように思います。

具体的に絵画の紹介がありつつ「この視点がビジネスに応用すると〜」という話を期待していたんですが、そうではなかったです。

ただ、アートの重要性を話しつつ具体的な企業の例を出して解説してくれるので、その点はとても分かりやすく(ところどころ著者の考えが偏ってるのでは・・?と思う部分もありつつ)新しい視点が得られました。

最初に

メトロポリタン美術館や、ロンドンのテート・ギャラリーなど有名な美術館のアートプログラム(学芸員による美術品の説明ツアー)参加者層が変わったらしいのです。

今までは観光者や学生が中心でしたが、最近は出勤前と思われるビジネスマンが早朝のプログラムへの参加が増えたそうです。

なぜ「美意識」が重要視されるようになったか

マズローの欲求5段階説を元に、下記のような連鎖が世界で起きたため重要視されるようになったと著者は意見しています。

以前は安全欲求(=安全で快適な暮らし)により求められていた商品やサービスは、「精密なマーケティングスキルや分析力」によって作られた

経済成長により発展途上国も含め世界が豊かになった。

経済成長に伴い生活水準が上昇し、自己実現の欲求(=自分らしい生き方を実現したい)に変わってきた。

すべての消費ビジネスがファッション化しつつある

企業やリーダーの「美意識」の水準が競争力を大きく左右するようになった

画像1

(図:エイブラハム・マズローの欲求5段階説)

たしかに初めて我が家にパソコンが来たときは「デザイン性」よりも「機能性」重視でしたが、PCごとに機能の差異が変わらなくなると、「Macの素材感が好き」など感性に訴える要素が選択の基準の1つになりますよね。

世界と戦うための美意識

「精密なマーケティングスキルや分析力」によって作られる製品が良いだろうと思うかもしれません。

センスの悪い国で精密なマーケティングをやればセンスの悪い商品ができ、センスの良い国で精密なマーケティングをやればセンスの良い商品ができる

国内だけであればこの考えで良いですが、センスの良い商品が海外から来ると一気にユーザーは触発され、欲しくなるでしょう。(逆はない)

実際、商品開発するときに「分析による判断(=サイエンス)」「経験による判断(=クリエイティブ)」の2つが重要視される傾向があり、「美意識による判断(=アート)」はアカウンタビリティがない(根拠がなんとなくになりがち)で意見が負けてしまうと著者は本書で何回も言っています。

ビジネスマンの「美意識」とは

美意識は絵画や音楽に対して使われる事が多くピンとこないと思います。通常はプロダクトデザインや、広告宣伝を想像するかもしれません。

実際には下記のように判断するための基準としてアートを使うのだそう。

・人の心を掴んでワクワクさせる「ビジョンの美意識」
・道徳、論理に基づいて律する「行動規範の美意識」
・自社の強み、弱みを考える「経営戦略の美意識」

例えば、KPIでプロジェクトを見ると計測可能な部分しか計れません。実際はもっと複雑ですよね・・。

「測定できないものは管理できない!」ではなく「美意識によって判断する」ことでシロクロつかないものを計ります。

実際にソニーでは「美しいか、楽しいか」という要素が意思決定の基準に設定されてるそうです。

真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべきを自由闊達にして愉快なる理想工場の建設(ソニー 会社設立の目的 第一条)

モノの見方を鍛える

実際にアートを見て観察力を付けると、ステレオタイプな見方に支配されず、自分なりの視点でモノごとを見れるようになるそうです。(アートを見たからと言ってむずかしそうだな〜とは思いました)

実際にアートを見て観察力を付けたい!と思う方は本書ではなく「絵を見る技術」をおすすめします。とても良い本です。

あまりビジネス本は好きではなく読み嫌いしてました。今回、美術関連ということで久々に読みましたが、アップルやソニーなど大企業の例を用いて説明してくれるのは面白いですね。ただ、コンサルティング的な内容はどうしても頭に入ってこず、結構読み飛ばしちゃいました。

気になった方はぜひ。

この記事が参加している募集

読書感想文

スキ頂けると嬉しいです〜