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一度では完成しない、ゆっくりと自分の住まいを作っていく

インテリア関係の仕事をされているSさんからスマサガにお問合せいただいたのは、既に購入されて7年住んでいる中古マンションの持ち家をリノベーションしたいというご相談でした。
職業柄、住まいやインテリアにはこだわりも知識も人一倍ありそうなSさん。なぜこのタイミングで住んでいたお部屋をリノベーションをすることになったのでしょうか。

DATA
エリア  |  渋谷区幡ヶ谷
プラン  |  2LDK→大きな間取り変更は行わず、キッチン、収納壁、玄関等の部分リノベーション
面積  |  70.44㎡
構造  |  SRC造11階建ての7階
主採光  |  西・北
建築竣工年  |  1982年(昭和57年)
リノベ完成  |  2015年(平成27年)
権利  |  所有権

CREDIT
プロデュース ・設計  |  スマサガ不動産
施工  |  月造 
家具造作  | HAND
写真 | 平林克己


そもそも「中古物件しか買わない」と決めていた理由

時間や季節によって表情を変えるリビングダイニング。趣のある家具や光の陰影が美しい室内。

今のマンションの前は、初台に所有していた中古マンションに住んでいたSさん。40平米ほどの1LDKだった前のマンションから、もう少し広めの物件を探すことに。
「静か」「視界が開けている」「躯体がしっかりしている」「広めのリビングダイニング」の4点を希望条件に家探しを始めたものの、当初はなかなかいい物件に出会えなかったといいます。昔から雰囲気がある物件が好きで新築には割高感があったというSさんは、最初から中古マンションに選択肢を絞っていました。そのうちに、多少の騒音があるものの3方向に広く視界が抜けている今のマンションに出会い、購入を即決。リノベ済みの物件ではありましたが、リノベすること自体が目的ではなかったとSさんはいいます。

「”中古マンション”を選択した理由は、価値と価格のバランスでした。希望のエリアや広さを優先すると新築は割高だし、未完成の建物を3Dイメージを見るだけで決断はできないと思って。なんでみんな新築にこだわるのかなって」(Sさん)

スマサガ には、新築マンションを購入した後にご相談に来られるお客様もいます。モデルルームしか見ることができず、実際の景観を見ずに購入してしまい後悔したり、新築という条件にこだわった結果、エリアや広さなどの他の条件を妥協して失敗したというお話もお聞きすることがあります。

昔から、ダメなら予算内でリフォームすればいいじゃんて思っていた

実は、Sさんが初めて中古マンションを購入したのは29歳の時。20代で家を買うことにも特に抵抗はなかったといいます。バブル後に不動産価格が下落した頃、2件目の中古マンションを購入してフルリフォームをすることに。

「内装は以前の住人の好みのままだったけど、別に自分の好きなようにリフォームして変えたらいいじゃん、て思ってました」(Sさん)

住宅市場ではリフォームが流行り始めた頃で、快適に暮らすために床や水回り設備を取り替える程度の改装が主流の時代でした。この時のリフォーム予算もきっちり200万円と決めていたSさん。インテリア関係という仕事柄、内装にコストをかけるのかと思いきや、予算や買換えのタイミング、リフォームの目的など、一貫して合理的な視点で進めていることに驚きます。

住み始めて7年後に訪れた、リノベーションのタイミング

購入当初は本棚と壁のみを変えた。Sさんがセレクトした家具や小物がさりげなく配置されている

3件目に購入した現在のマンションはリノベーション済み物件でした。購入当初、壁と本棚だけをリフォームして住み始めてから7年後。Sさんは、なぜこのタイミングでリノベーションしようと考えたのでしょうか。

「時間が経って自分の考え方も少しずつ変化したり、リノベーションした友人の部屋を見て刺激されたりして。そしたら、”やりたいときにやればいい”と言われて。自分の家くらいは好きな感覚で突き詰めてもいいかなと思っいはじめて」(Sさん)

今回も予め設定していたリノベーション予算は現金で400万円。新しいリフォーム会社を探していたところ、facebookの事例を見て「なんとなくよさそう」と思ったスマサガに相談することに。

「”受けるかどうかはスマサガが決めます”とか、”相見積を取られるようだと難しいです”とか(笑)結構はっきり言うんだなと思ったけど、それって当たり前だよなと。合理的で余計な時間もコストもかからなそうだし、いい意味で印象的だった」(Sさん)

百貨店のインテリア関係というお仕事柄、著名な建築家に依頼するという選択肢もありそうなSさんですが、誰かがつくった作品のような家に住むよりも、設計デザイナーと自分の相性を重視したかったというSさん。その点で、スマサガは自分の考え方や好き嫌いを共有できそうな気がしたといいます。

キッチンの変化が家全体のにつながりを生む

リビングに開いたキッチンで料理も会話も楽しめる。細部まで計算し尽くした美しい収納壁。

予算内で実現できるイメージを設計デザイナーと詰めていき、最終的にキッチンと収納壁を中心にした部分リノベーションをすることになりました。Sさんの要望はリビングとキッチンが繋がるような空間を作ることとキッチンの収納力でした。特に収納壁の機能面には細かくこだわったといいます。

「全体のリノベ後イメージもほぼ固まっていたので、設計プランはあまり迷わなかった。その代わり、”今、やっておくべきインフラ部分はどこか?”ということを意識して検討しました」(Sさん、スマサガ 設計デザイナー)

キッチンの位置を180度変えたことで空間が広がり、リビングとの一体感が感じられるキッチンに。全ての棚の高さを計算して作った収納壁には、こだわって集めてきた器が収まり、料理をしながら来客と会話をしたり誰でも自由に食器を出し入れできたりと、スムーズな動線が生まれました。
格子がむき出しの天井には、何気なく照明器具や植物が吊るされ、部屋全体の景色にとても馴染んでいます。自身が好きな雰囲気や感覚はハッキリしているけれど「本当に欲しいものが見つかるまでは、間に合わせのものは買わない」というSさんの美学があります。

木とモルタルの素材が美しいキッチンは程よくこもれる場所。厳選された道具が収まります

本気でこだわったら、一度では完成しない

3方向に開けた視界も購入の決め手だった。緑あふれるテラスではゲストとの食事も楽しむそう。

「こだわりはあるけど、答えが見つかるまでは何もしない。間に合わせにお金も使いたくない。モデルルームじゃないんだし、急いで完璧を求めなくてもいいんじゃないのかなと」(Sさん)

物件探しやリノベーションは、多様な条件や選択肢があってついつい迷いがちですが、全体案が決まる前にディテールばっかり考えてもあまり意味がない。Sさんは、「変えられない壁や床は素材感を出す」「機能面はできる限り妥協しない」ということだけを決めて、ディテールに関してはほとんど迷わなかったといいます。

「無理はしないけど、我慢もしてない。人それぞれだから、自分がいいと思うものがあればいいだけの話だと思う。それが人から変だと思われてもね」(Sさん)

物件条件や予算、機能など、変えられない部分を優先し、他の部分は答えが見つかった時に変えればいい。

ブレない価値観と柔軟さを併せ持つSさんの住まい購入とリノベーションのストーリー。その時々の自分と向き合いながら、こんな風に気負わずにマイペースで住まいをつくっていけたら、時間も選択肢も広がって、もっと自由に人生が楽しめそうですね。

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