「愛したい」が出来なくて。

誰かの為に尽くし生きられる人は強いのだと思う。自分の欲は抑えて、それよりも他の人を優先できて、たとえば誰から愛されてなくても、誰かには与えられる側でいられるのだから強いと思う。

「愛したい」よりも「愛されたい」と、そんなことを自分は優先するように感じてしまう、孤独感から逃れるように愛されたく思うのだろうか。この自分の中で渦巻いてる、言葉には出来ない感情を払拭したくて、そんな「愛が欲しい」だとかを願ってしまっている。

人としての本能だとは思うが。ただ、この本能が実際には、よくもわからない感情として、穏やかであるべき姿から遠ざけるようにして、悩みとして振り回されているだけなのだと感じている。

こんな感情を、解決しようとするのなら単純に、誰かから愛されるだけで報われる筈だが。しかし、そんな簡単に解決できそうな感情であっても。実際には、そんなにも都合良く、身の回りで自分を無条件に愛してくれる人間には中々出会えないから解決しにくい。

この不思議な感情を埋める為の手段が簡単ではないのは。きっとこうした感情「愛されたい」と願ってしまっている自分のような人達。そういった愛されたいと考える人達の人口が、多数派なのだからだと実感している。

「愛されたい」と願う人が多いのなら、逆に「愛せる」側の立ち位置に切り変われば良い。

そうは考えられたとしても。人間はスグに、自ら感じている、この感覚を切り変えて誰かを愛すことはできないと思う。きっと、それは自分が必要とされたいと思ってしまう生き物だからであって。「愛されたい」と望むのは必要とされたいからで「愛せる」ことは誰かを必要としてあげることとして。手放されたくない思いがあって、手放されない証としての愛を、誰からか欲しいと望んでしまうのかもしれない。

何故、愛されたいと望んでしまうのか。放棄された状態の自分に対して、少なからず、たった一人くらいにでも。根拠のない価値を見出してほしいという、小さくて切ない望みを叶える方が面倒くさく、これが捨てられる価値観であれば捨ててしまいたい。

この問題を解決する為、優しくそばに居てくれる人が、たった一人いてくれたらと。たったそれだけのことに、どれだけ自分は安心できてしまえるんだろうとか思う。そんな事で安心する自分は無力感がたっぷりと乗った、そんな生き物なのだと思えて。

自分は幸せにしてほしいのに、誰かを幸せにしてあげたいと思える行動が取れない自分は、強くはないだろうと自覚する。また、それが自分の欲を前のめりにした行動なのだろうと思えて。

必要とされたいと思いながらも、誰も必要とはせずに。見捨てられることを恐れて、無償で与え続けることができず。

独りでに過ごす日常はどこか失うものが少なく感じる気がして、楽な方に逃げる思いに浸りながら。ただ心のどこかでは、やはり拠り所でも探しているのだろうと感じていると。

穏やかに見える生活の何処かには、物足りない何かのギャップを感じてしまう。

心の隙間は空白のままに、今日も飢えながら生きているような。そんな感情の中で。

とても簡単に「好きだ」と一言が言えたなら、どれほど報われる人が増えるのだろうって。そう思いながら、口籠ってる自分は弱い。