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夫婦の部屋

夫婦と住まい01

住まいの設計をご夫婦と打ち合わせをしていると、夫と妻の世界が大きくかけ離れていることを感じます。かつてのような共通の目的もなく、求めるライフスタイルが異なる夫婦も増えていますからなおさらです。

夫も妻も、お互いの生活の様子が見えなくなってしまっているということかもしれません。

夫がストレスを抱えて家に帰って、テレビを見てくつろいでいても、妻の目には、ただテレビを見て笑い転げているつまらない夫のように映ります。

また同時に、妻が、家事や慣れない子育てや夫の家庭不在などによってストレスを抱えていても、夫にはその苦労や悩みが見えません。

夫婦のこんな関係性が、住まいの設計打ち合わせでも、間取りや部屋の使い方に関する混乱となって現れてくるのです。

いま改めて、どんな寝室が理想ですかという問いに、即座に答えられる夫婦はいないのではないでしょうか。ただベッドを置いたり布団を敷くだけのスペースしかなく、家具で埋め尽くされた寝室は、夫婦にとって居場所とはなりえず、くつろぐべき寝室そのものが、ストレス源にさえなってしまっています。

夫婦は同室で過ごすことが、これまでは当然でしたが、夫婦別寝室も、寝室の形態として多くなってきています。

この現象は世界の中でも日本独自のもので、離婚率が最も高いアメリカ社会の中でも見られない傾向ですが、ここに日本の夫婦が置かれている特異な背景があるように思います。

私の事務所に来られる50代の方では、ほぼ半数が夫婦別寝室希望です。

しかしこんな不安定な夫婦関係は、夫婦にとって、また成長期を送る子どもにとってもとても不幸だと思いますし、夫婦別寝室の意味が問われます。

夫婦別寝室派も同室派も、子育ての時代を含めたトータルなライフスタイルや人生設計の中で、夫婦の寝室をもっと考えるべきではないかと思います。


夫婦の寝室を別室にした場合、同室であったときの夫婦の関係性がそのまま保たれるとは思えません。コミュニケーションの密度や、お互いへの配慮は間違いなく減っていきます。

夫婦の寝室を考えるにあたって、就寝機能ばかりでなく、読書などの趣味、テレビ、ドリンクのコーナーなど、夫婦がどんな部屋にしたいかが大切です。

その上で、0歳から乳幼児、小学生、中高生と、成長に伴って子ども部屋が変わっていくように、夫婦の寝室もライフスタイルや子どもの成長に応じて変わっていくべきなのも、重要なポイントです。

どうしても夫婦別寝室を選ぶのであれば、建具を設け、それを開ければ一体の部屋になる、あるいは、高さ二メートル前後の家具で間仕切り、空間は一体とするなど、さらに、灯や出入りの音、共用のサニタリー(浴室・洗面所・トイレ)などでお互いの気配がわかるといった、さまざまな配慮や工夫を施した部屋作りが望ましいと考えます。


気配も全くわからず、いつ外出したか、帰ってきたかもわからない住まいでは、寂しいばかりでなく、家族が共に住む意義さえ見失いかねません。


次回、「夫婦と住まい02」ー夫婦のための間取りプランーをお送りします。
おたのしみに。




横山彰人建築設計事務所


これまでに300以上の住宅を手掛け、富な実績を元に、本当に居心地のいい、家族が元気になる住まいをご提案します。noteでは住まいで役に立つトピックスを連載形式で公開します。