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高層階での子育て

子供と住まい05

友だちができない、協調性がない、すぐキレて感情的になるといったことが、子どもの世界に蔓延していますが、これは子どもに十分な社会性やコミュニケーション能力が育っていないことの現れでもあります。

保育園や幼稚園の先生は、一戸建て住宅や低層階の子どもより、高層階で暮らしている子どもの方にそうした傾向が強いと指摘しています。イギリスでは、四階以上での子育ての禁止を条例化しているほど、子どもの育つ環境には敏感になっています。

その原因として考えられているのは、親の接し方や居住環境の問題です。特に、マンションなどでは、低層階よりも高層階へ行くほど他者と関わる能力が未発達だとする調査結果もあるほどです。

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高層階で育てられた子どもは、低層階の子どもよりも外に出て遊ぶ頻度が少なく、社会に触れる機会も限られてくるため、決まった環境でのみ育つことになります。

幼児期の子どもには、遊びを通じた子ども同士の交わりや、家族との親密なコミュニケーションが不可欠であり、こうした要素は、その後の社会参加にも大きく関わってきます。そして、他者との接し方の前段階で養っておかなければならないのが、子どもの旺盛な好奇心です。好奇心は、行動範囲の広がりとともに旺盛になり、興味の対象が身近になるほど満たされます。立ち上がって歩くことができない幼児にとってハイハイは、好奇心を喚起し、それを満たす大切な行為です。ハイハイをし始めた子どもがいる家庭では、応接セットなどのように空間を固定してしまう家具は置かず、できるだけ広い空間を確保したいものです。

子どもにとっての適切な環境も与えず、物心がついた頃になって早期教育を押しっけたり、自立心を養うためと称して子ども部屋を与えても、人を思いやる心が育つはずはありません。

日本小児科医会が、テレビやビデオを乳幼児に長時間視聴させることの影響を懸念し、注目すべき提言を出しています。

①「2歳までのテレビ、ビデオの視聴は控える」
②「採乳中、食事中のテレビ、ビデオの視聴はやめる」 
③「テレビ、ビデオは1日2時間まで、テレビゲームは1日30分まで」
④「子ども部屋には、テレビ、ビデオ、パソコンは置かない」
⑤「親と子でメディアを利用する上でのルールをつくる」

の五項目にわたるものです。

今回の提言は、対人関係や言葉の遅れが気になる乳幼児が増加している現状を受け、医療現場において、テレビやビデオの視聴を制限する処置を講じたところ、症状が改善するケースが多数見られたため、メディア接触の低年齢化と長時間化に警鐘を鳴らす意味を込めて行われたものです。

「子どもにテレビを見せるな」とまでは言いません。ただ、親がテレビが子どもに与える影響というものを十分に認識した上で、テレビに家族の団らんが奪われないよう知恵をしぼるべきです。
そのための第一歩として、家の 「間取り」を見つめ直してみてはいかがでしょうか。



・前回「子供と住まい04」子供を中心にした住まいづくりの前に


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【横山彰人建築設計事務所】



これまでに300以上の住宅を手掛け、富な実績を元に、本当に居心地のいい、家族が元気になる住まいをご提案します。noteでは住まいで役に立つトピックスを連載形式で公開します。