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あざらしでもわかる!SVB破綻かんたん解説

わかりやすさに特化したやさしい解説です。
超かんたん、かんたん、ステップアップの3段階で知識が深まる!

超かんたん

Q. SVB破綻って何?

A. アメリカの地方銀行、シリコンバレーバンク(Silicon Valley Bank, SVB)が2023年3月10日に経営破綻しました。地方銀行とはいえそこそこの規模の銀行が急に破綻して、そういうのは久しぶりなので、皆びっくりしました。

Q. 何か大変なことが起きているの?

A. 当事者は大変そうです。でもほとんどの人にはあまり関係ありません。

Q. 当事者って誰?

A. 当事者とは、以下のような人たちです。

  • 米国地方銀行の中の人たち

  • 米国地方銀行の株や債券を持っている人たち

  • 対応するアメリカ当局の人たち

Q. 大きな銀行の破綻って、リーマンショックみたいだけど大丈夫?

A. 「銀行の破綻」という点では同じですが、破綻の理由が違います。
そのためリーマンショックのような大事にはならないと予想されています。

Q. SVBはなぜ破綻したの?

A. SVBは銀行なので、皆から現金を預かり、そのお金で債券などを買っていました。
でも預けてた人たちが一斉に、今すぐお金返して!って言ってきたので、すぐに現金が用意できなくて破綻してしまいました。

かんたん

Q.なんで預けていた人たちが急にお金を引き出したの?

A. このままだと、預けていたお金がなくなってしまう!と皆が不安になったからです。SNSによる急速な拡散が不安をあおったとも言われています。

不安が広まったきっかけですが、SVBが大きな損失(18億ドル、2400億円くらい)を出したことです。
銀行は預かったお金で投資をしていますが、SVBはこの投資がいい加減でたくさん損をしました。損が大きすぎると預けてくれた人にお金を返せなくなります。SVBに預けたお金が無くなるかも?という噂がたち、皆不安になりました。

Q.SVB以外の銀行も破綻するの?

A. 破綻はSVBのリスクのとりすぎ、つまり経営ミスによるものです。
SVBのようにリスク管理が不十分な銀行は同じように破綻する可能性がありますが、SVBは銀行としてかなり不適切なことをやっていました。
ほとんどの銀行、ましてSVBよりも大きな銀行の破綻や事業停止になる可能性は低いです(大きい銀行は厳しい規制もあります)。

このため、たくさんの銀行が一変に危なくなったリーマンショックとは違う、という見方が一般的です。

Q. でもシグネチャーバンクも破綻したんでしょ?

A. シグネチャーバンクの件は当局指示による事業停止です。この銀行は仮想通貨関連の資産を取り扱っており、特殊な銀行事業をしています。
SVB破綻により、特にテクノロジー業界への影響が不安視されました。
シグニチャーバンクでもSVB破綻をきっかけに預金の引き出しが行われています。関連の強いデジタル資産を扱うシグニチャーバンクは、当局が早めの対処として動いたという印象です。

なお、当局は仮想通貨に関わる理由を否定しています。当局に信頼できるデータを出さなかったためというのが公式発表です。

ステップアップ

Q. SVBに預けていたお金はどうなるの?

A. 預金は全額返済されると当局と米政府の発表がありました。シグネチャーバンクの預金も対象です。
当局による早期の対応により、SVBの破綻が他の銀行に波及する可能性はさらに低下したと考えられます。

Q. リーマンブラザーズはなぜ破綻したんだっけ?

A. 景気がいいときに、儲かるからと質の低い債券(サブプライムモーゲージ、サブプライム住宅ローンとも)を大量に買い込んでいたら、景気が傾いてその債券が焦げついて価値が暴落し、巨額の損失を抱えたことが理由です。

Q. リーマンショックはなぜ大変だったの?

A. 当時、リーマンブラザーズ以外にも世界中の大手金融機関がサブプライムモーゲージによる損実を抱えていました。
そして世界有数の超巨大金融機関リーマンブラザーズが巨額の損失により倒産、当局による救済もありませんでした。
同じように損失を抱えた世界中の金融機関は、自社の防衛措置としてお金の貸出を抑制したのです。融資の停止や、融資の回収が進んだことで金融市場が硬直化、急速な経済の冷え込み、世界規模で不況の連鎖を招きました。

こうした金融システムの機能不全を発端とする経済の混乱は、金融危機と呼ばれます。

Q. SVBは何が悪かったの?

A. 預かったお金で債券をたくさん買っていました。
サブプライムモーゲージと違い、質のいい債券でしたが、現金に変えるには時間も手間もかかります。さらに、金利があがっているときは安くしないと売れません(これを評価額が下がるといいます)。

預金はお客さんの好きなタイミングで引き出せるものなので、銀行が債券ばかりを買うのはよくありません。
様々な要因が重なり、たくさんのお客さんが一度にお金を引き出したくなったら、銀行は債券を途中で売らなければならず、その場合に大きな損をすることがあるからです。

Q. 金利があがると債券は損するの?

A. 債券には期限があって、途中ちょっとお金がもらえて、最後まで持っていればお金が全額もどってくる商品です。
途中でちょっともらえるお金が金利と考えてOKです。

しかし途中で売って現金にするときは、価値(評価額といいます)が下がることがあります。世の中の金利があがっているときです。
債券を途中で売るときは、金利分を割り引いた額でしか売れません。
期限までずっと持っていたら損はしないのですが、金利が高いときは値を下げないと売れないのです。

Q. SVBはなぜ18億ドルも損をしたの?

A. 金利があがっているときは、企業も苦しいときです。
利子が高くなるので、お金を借りるハードルが上がります。
とくにSVBのメインの顧客であったテクノロジーベンチャー企業は財政も不安定で、虎の子の預金を引き出して給与の支払いにあてたり、利子の支払いに使うことがあります。

アメリカではこの1年で大きく金利があがり、企業による預金の引き出しも重なったのでしょう。
SVBは預金引き出しに対応するため、持っていた債券を一部売却。これにより18億ドルの損失を計上しました。

これをきっかけにSVBが債券に依存した運用をしていることが明示され、評価額でみた財務状況も不安視されました。SVBは損失を埋め合わせるため、お金を出してくれる人を募りましたが誰も手を挙げませんでした。
結果人々は不安に陥り、預金の引き出しに殺到しました。

Q. SVBはなぜ債券をたくさん買っていたの?

A. 経営判断ミスだと思われます。
買っただけならまだしも、金利上昇の中でも債券をたくさん持ち続けていたのが致命的でした。
金利上昇が続くときは、損切りなどの適切なリスク管理が求められます。また、流動性(現金化のしやすさや、一度に現金化したときの価値減少)は十分留意しなければなりません。
強いインフレを受け、2022年初からアメリカの中央銀行(FRB)は金利上昇について積極的に発信していました。

2020年~2021年までの大規模な金融緩和によりSVBの預金高は大幅に増加したため、大規模な資産を適切に運用するノウハウに乏しかったのかもしれません。

Q. これからどうなるの?

A. このまま沈静化するという見方が多いです。
SVBより大きくて、SVBより無茶な投資をしている金融機関が見つかり、再び不安が広がったり、当局の対応が遅れたりすればまた混乱しますが、可能性は低いでしょう。

今回の件はアメリカの急速な利上げによる負の側面と表現されることもありますが、急拡大した特定の銀行の不適切な運営による破綻という印象が強いです。

ただ、今回を中堅規模の金融機関に対する規制のアップデートが進むかもしれません。

Q. クレディ・スイス破綻の噂を聞きましたが?

A. これについては分からないとしか言えません。
SVB破綻以前の時点で、直近のクレディ・スイスの財務状況が危機的であるとか、大規模な損失を計上したという話はありません。23年通期決算が多額の赤字見込みとの報道はありますが、1ヶ月以上前の報道で株価も折り込み済です。

確かにクレディ・スイスは長期にわたる経営不振が続いており、株価も長期間低迷しています。SVB破綻の要因となった債券も多数保有しています。
しかし業績が赤字だからといってすぐに倒産するようなレベルの銀行ではありません。世界水準のもっとも厳しい銀行規制を受ける、ヨーロッパ有数の巨大金融機関です。
もしクレディ・スイスが破綻し、当局の救済も無ければ確かにリーマンショック級の危機になりうるでしょう。

SBV破綻を契機とした金融危機不安に付け込み、大規模な投資家が倒産疑惑を焚き付けて一稼ぎしようとしているのか?と疑いたくなります。
クレディスイスの業績が低迷していること、評価額でみれば債券価格が切り下がるという今の時勢、SVB破綻で警戒が高まっている、などが重なって信用問題に発展しかけています。

SVB破綻の肝も、人々の不安でした。
不安が急速に広がれば、それが事実かどうかに関わらず市場が大きく揺れることがあります。

本件については、引き続き注視するしかありません。

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