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雨降る日だって上手に生きたい

雨が苦手だ。

子どもの頃はそんな事なかった。
むしろ雨の日は、普通ではない特別な心地がする日、親が心なしが優しい日、音が洗練されて聞こえて精神が落ち着く日、と良い印象を多く持っていた。
表でマンションの仲間と駆けまわるのではなく、家でゆっくりと過ごすのもいいもんだなと、子どもながらにしみじみとしていた記憶がある。

ということは、私には雨の日も私らしく生きるポテンシャルがあるはずだ。頭が痛くてぼわーんとして、体もだるくて、濡れるのが面倒くさくて、空の暗さに気持ちまで暗くなってしまう。
そんな大人になってからの雨の日を、もう少しよく暮らせるように工夫してみたい、と雨が続いた2月の終わりに思ったのだ。

まず、一つルールを決めた。
「雨の日はケーキを食べても良い」
最高じゃん。はよ雨よ降れ。
私は単細胞なので、なかなか良いアイディアだと思う。
ケーキってところがみそだ。
江國香織も言うように、ケーキは特別な食べ物だ。
おいしいだけじゃなくて、食べた日はなんだか優雅で素敵で祝福するべき一日になるのだ。

ケーキ、という言葉の喚起する、甘くささやかな幸福のイメージ。大切なのはそれであって、それは、具体的な一個のケーキとは、いっそ無関係といっていい。

江國香織「とるにたらないものもの」


そして、ケーキを食べながらお気に入りの本を読む。
雨の日は没頭が捗る。
自分のいる空間が、外界とは断絶されたような、雨のカーテンによって異空間が作り出されているような、少し現実離れした気持ちを簡単に作り出せてしまう。
読書にはうってつけの気候だと思っている。

ケーキを食べながら本に浸る、最高の日じゃないか。

それから、雨を観察しよう。
一口に雨と言っても、いろいろな雨がある。
降るか降らざるか迷っているような弱さでぱらぱらと降る雨、大きく際立った雨粒がぽつぽつと音を鳴らす雨、ざーざーと水量を持って線のように降る雨。

湿度の高い空気は鼻に気持ちいいし、頬をよぎる風は涼やかだし、傘で荷物が多くなってまごまごするのだってかわいいものだ。

すーっとする匂いのオイルで頭痛を落ち着かせて、自然の営みを観察してみると、雨の中にもいいもんが紛れ込んでいるかもしれない。

そうやって、日常の一つとして、雨の日も暮らしていけるようになれるといい。日常をいちにちだって諦めたくはないんだから。


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