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親知らずになったので、あえてググらずに語源を考えてみる。

歯が痛い。というより、歯茎がやられている。ここ最近ズキンとくるこの鈍痛に悩まされている。またしても親知らずのようだ。

それにしても親知らずって、なんで親知らずって言うのだろう。

迷ったらすぐにググる世代のぼくは、一度検索画面にいっておやしr...まで打った後、やめた。それどころではない。

歯が痛いから

でも調べなかったからといって歯の痛さは紛れず、ずきんずきんと僕の頬を痛めつけてくる。僕最近、なにか悪いことしましたっけ。こんな仕打ちなくないですか。

そこで、調べればすぐに分かるし「ググレカス」って言われても構わないので、親知らずの語源を想像してみることにした。

あえて調べない。うん、いいな。何でもかんでもクイックに調べずに、あえて調べないのだ。かっこいいな。

親知らずの語源その1:「大きくなって親の手がかからない時に生えるから」説

親の手から離れ、「親が知らないうちに生えてくる年齢=大人」に生えてくるから、親知らず。

いやこれ、多分正解だな。手がかかる子供の頃には生えてこないし、成人を迎えて社会人として独り立ちして、住み慣れた実家を離れて一人暮らしをはじめて何人かの方と交際をして出会いと別れを繰り返し、会社では上司に怒られ、部下の育成に悩まされ、それでも歯を食いしばって生きていこうとする水面下で、親知らずはこっそりと伸びていくのだ。

うん、多分これ正解っぽいな。

親知らずの語源その2:「んなこたぁしらねぇよ」説

もうおとなになったんだし、こどもじゃないんだから。
父も母も「んなこたぁしらねぇよ」というテンションが語源。

親によるちょっと突き放された言い方である。
「もう大人なんだから、一人で解決しなさい」と。子供の頃は歯医者の予約や付添、支払いまでを親がやってくれたけど、あなたもう大人でしょ、もう私達あなたの歯の健康状態まで管理できないわよ。もう知らんから。もう大人なんだから、親は知る必要もないでしょ。って。

「親も知らんぷり」といった具合だろうか。いや、自分で歯医者の予約できるし、支払いもできるので別にいいんだけど、なんかもどかしい。告白してもないのにフラれたときのような気持ちになる。

親も知らんぷりが語源なら「親知らぷ」になるのか。痛みの激しさの割には、響きがチャーミングでいい。
基本的に「ぱぴぷぺぽ」のどれかが入ると、言葉の印象はぐっと丸くなる。痛みは丸くならないけど。

やべ〜、親知らぷ生えてきちゃった〜って。

親知らずの語源その3:「親の心子知らず」の略説。

親知らずになる年齢になると、親のありがたみをしみじみと感じるようになる。二日酔いあけのしじみ汁が五臓六腑にしみわたるように。

「あぁ、自分の今の年齢のときには、親父は2人の子どもを支える大黒柱だったのか」
「あぁ、あの時母は僕と姉を育てながら働いていたのか。そしてその後妹を産んだのか」
「あぁ、子ども3人育てた両親って冷静に考えてやばいな。自分には到底できっこない気がする」

と言った具合に。子どものときには気づけなかった、親のありがたみ。大人になって、社会に出てはじめて気づく。自分は親に支えられて手取り足取りやってもらって、やっといま立っているんだな、と。

そんなことを考えるようになると疼き出すから、「親知らず」。

親知らずが痛みだすようになったら、親への感謝をもう一度思い出しなさいという、いにしえからのメッセージ。

うん、悪くないな。

親知らずの語源、やっぱり調べてみた

と、朝の貴重な時間をつかって親知らずの語源を想像してみたけど、やっぱり気になる。

ということで、ググる。(結局ググるんかい)

『日本国語大辞典 第二版』(小学館)には,「親不知歯」として立項されており,「20 ~ 25歳ごろに生えるので,昔は親と死別していることが多いところから,この名がある」とある。「人生50 年」といわれた昔は,自分の子どもの「親知らず」を見ずに亡くなる人が多かったのだろう。
出典:https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/kotobax3/pdf/101.pdf

いや、せつない。

人生50年と言われていた昔は、親知らずが生えて痛みだすときにはもう親は亡くなっている年だったのか。アーメン。

また、国によっても言い方は違うとのこと。

英語では物事の分別がつくようになってから生えるから「wisdom tooth」
中国語も同様の理由で「智歯」
韓国は恋をしる年齢になると生えるから「愛の歯」

...面白い。

親知らずという言葉は、安土桃山時代にはすでに使われていたとのこと。そして親知らずは、縄文時代には8割の人に生え揃っていて、鎌倉時代に5割に減り、現代では4割にも満たないそうだ。

食生活の変化によるものだろうか。たしかに、一生親知らずの痛みを知らずに過ごす人も多い。てことはぼくはいにしえからの人間の神秘を受け継いでいる4割に満たない層に入っているということか。

この語源通りに考えると、人生100年時代と言われる昨今、もう「親知らず」ではなくなる。「親知ってる」になる。

僕:「親知ってるが生えてきたようで、痛むんです」
医者:「どれどれ、口をあ~んしてください。ほんとだ、これは親知ってるだね」
僕:「先生、ぼくは親知ってるを抜いたほうがいいのでしょうか」
医者:「そうだね、親知ってるを抜こう」

うーん。親知らずのほうがゴロがいいね。

...

と、朝の貴重な時間を超絶無駄にしましたが、「ググらずに一回考えてみる」って、面白いですよ。

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