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(全文公開)「認知症」の在る社会で生きていくとは?

1週間程前の9月21日は敬老の日。そしてもう一つ。「国際アルツハイマーデー」だった。
1994年のこの日、国際会議で制定された記念日だ。認知症支援のシンボルカラーが「オレンジ」ということで、全国およそ100カ所のランドマークがオレンジ色に照らされた。

2015年、国際アルツハイマー病協会の報告書によると、2050年に世界の認知症患者は1億3200万人に達する可能性があるという(2015年時点の約3倍)。更に同報告書によると、毎年約990万人の新規患者が増えており、世界的に進む高齢化の波の中でその数は増加の予測がされている。日本でも2025年には患者数は700万人を超えるとされており、これは65歳以上の5人に1人が該当することになる。

ちなみにややこしいが、「認知症」は病名ではない。
認識・記憶・判断力が障害を受け、生活に支障をきたす「状態」のことだ。この「状態」を引き起こす原因の一つに「アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)」があり、日本では認知症患者の6割がアルツハイマー病だと言われている。

高齢化社会が進む中、健康と福祉の問題においてこの「認知症」と向き合わないわけにはいかない。

この認知症とうまく付き合っていく社会の形を提案している企業のひとつが、スターバックスだ。コミュニティを醸成する取り組みとして、全国各地の店舗で「認知症カフェ」を実施している。2017年、東京都の町田市で『Dカフェ』という名で始まり、市内全9店舗へ波及した(Dは認知症:Dementiaよりとったそう)。

※認知症カフェについてはこちら

また、認知症の方々の働き方・場所として話題になったのが「注文をまちがえる料理店」。
期間限定イベントとしてオープンするこの料理店は、ウェイターが全て認知症の方だ。席案内や注文受け、配膳や片付けも行う。「まちがえる」ことが前提となっており、大半の客もそのコンセプトを楽しむために来てはいるが、例えばアレルギーの確認など「まちがえてはいけない」ポイントは運営者がしっかりサポートされている。

この料理店に感銘を受けた方の一人、介護福祉士の市川貴章さんは昨年、「ちばる食堂」を愛知県の岡崎市にオープンした。
ホームページには

『認知症の状態にある方が接客するお店です
時には間違えることもあるかもしれません
その時は怒ったりせずに寛容に受け入れていただけたら嬉しいです』


と書かれている。食べられるのは、沖縄料理。作り手が市川さん1人のため、「まちがえ」ても大丈夫なように全料理のクオリティ保持はもちろん、持続的に経営していけるよう品数が割と少なく済むものを選んだという。また、食堂でありながら講演会や遊びのワークショップのイベントなども多数開催しており、地域の交流場としての役割も持ち始めているようだ。

「健康」とは何だろうか。
病気や怪我を負っていない状態はもちろんだが、例えそれらを負っていたとしても「心が健康」な状態であればもしかしたらそれは「健康」なのではないか。認知症も然り、障がいも高齢も、誰しも成りえる(高齢に関しては成る)状態であり、間違いなく社会の一員として存在している。誰もが「健康」でいれる社会の仕組みを、あらゆるボーダーのない社会を、諦めずに追い求めたい。

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