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私の人生は誰にも分けられない

みなさんは、レストランやカフェにいったとき、
誰かとお料理を「シェア」しますか?
さすがに、和食懐石とかで分かち合う人はいないと思いますが、
ピザとか大きなパンケーキとかで、やりがち・・・かも。

その「シェア」を、断固拒否するガレット屋さんが舞台となる小説を読んだので、その感想を「シェア」したいと思います。

ーーーーーー 音声配信のstand.fm
にて配信した内容をnote用に再編しました。

朝の「安否確認」ライブは定番化しておりますが、夕方にちょいちょい読んだ本の紹介をする収録配信をしております。

ビジネス系の実用書を紹介することがほとんどなんですが、
リカレントでお世話になっている甲南大学に、大学院生の方が主宰している「甲南読書会」というのがありまして、
それに参加させていただいてから、
ちょいと意識的に小説を手にとるようになりました。

で、つい最近読んだのが
中島久江さんの「しあわせガレット」です。
https://www.amazon.co.jp/dp/4758414483?ref_=cm_sw_r_cp_ud_dp_83BKHVKTD796N0GTQ5A7

この中島さんという方は全く存じ上げなかったんですが、
彼氏もなくて、貯金もなくて、しかも派遣の契約が切れてしまった35歳の女性が、謎のガレット屋さんに出会って人生変えていく
みたいなね、そういうあらすじだけチラっと書いてあったのを読んで、
年齢は全然違うけど、なんとなく共感する部分があって手にとりました。

カッコイイ女性オーナーのポリシー


件の店主さん、多鶴って書いて「たづる」って読むんだけど、
たづるさんのキャラクターというか人間性に魅せられた主人公が
「自分も焼かせてください」
って、アルバイトに雇ってもらうところから話が始まるんです。

そしたらいろんなお客様が来られますよね。
それぞれに隠れたエピソードがあったり、
たづるさん(謎めいた女性)が、いろいろ人生訓みたいなこととか言ってきたり。
最初のうちは、彼女自身の正体が何なのかわからない。
彼女に近しい人(お客さんではない)も、どんな人なのかわからない。
というような話の流れになっております。

(要点を伝えればいいビジネス書と違って、ネタばれしないようにしながら、読みたいと思ってもらえるように紹介するのが難しいんです)

ガレットを題材に選んだのすごく渋いなって思うんですが
食べ物としての歴史っていうか、いわれみたいなのを踏まえて
一生懸命作っているたづるさんがいて、
さらにもう一つ、彼女のポリシーみたいなのが乗ってくるんですよ。
それがね、

「絶対にシェアするな」

いろんなガレットとクレープがあるお店で迷っちゃって、
普通なら特に女性グループとかで3個頼んでシェアしようよみたいなこと言うじゃないですか。それをたづるさんは許さない。

自分の食べたいものぐらい
自分で決めて自分で食べきれ!

というのが彼女のポリシーなので、
それに付き合えるお客さんしか来ないんですよ。

ひとりひとりが自分の人生を選んでる


もちろん「袖振り合うも・・・」みたいな感じで、
お互いの人生に関与していくっていうところはありながらも、
結局その人の人生はその人しか歩めないし、
その人がその人生を歩んだことによって得るものとか、感じたこととかっていうのは、
(まあ寄り添えることとか、共感できることはあるけど)
本当の本当のところ、
後悔とか達成感とか、いろいろ悲喜こもごも は
本人にしか味わえないよね。

味わえるのは自分だけだし、
自分で何をどう味わうか、どのタイミングで何をどう味わってどう組み合わせるかっていうのは、自分で選んでいくんだし、
それを自分で食べきるんだよと、誰にも分け与えずにね。

っていうことをたづるさんに教わりながら食べるわけです。

それでいて
お客さん同士が、まったく無関係なわけではなくて、
「それも美味しそうですね」
って(シェアしないけど、同じものを注文するくらいのことはするし)
隣から声をかけるが如く、
自分自身の歩んでいる人生における悩みとか喜びとかっていうのを少しずつ披露していって、
ときには共に喜び
ときには共に悲しみ
みたいなことをしていく、そういうお客さんとかお店の方の関係性っていうのがすごく面白かったですね。

ブログ主は知っている人?それとも・・・

主人公が働き始めてから、
ガレットやブルターニュのことが書いてあるブログを見つけて
それに惹かれていくんですが、誰が書いているのかっていう正体、最後の最後の方までわからないんです。

ブログの書き方、トーンが途中で変わったように感じて、
「もしかしたらこれ書き手がチェンジしたのかな?」
と推理したり。ミステリーとまではいかないけれども、秘密を探りながら読むみたいな要素もある素敵な小説でした。

本の装丁もかわいいので、ぜひ手にしてみてください💓

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