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チャペック兄弟という感性ビンビンの人たち

チェコの「チャペック兄弟」をご存知でしょうか。

とっても大胆に説明しますと、この兄弟は、

園芸をしたら、とことん育てる。そしてとことん感じる。犬や猫を飼うなら、とことん愛でる。とことん感じる。子供がいるなら、とことん向き合う。とことん感じる。いうなれば感性ビンビンの兄弟であり、第二次世界大戦前の不穏な気配も含め、感じ取ったものが言葉や絵にも残されたのです。

この人たちに「スキマじかん」なんてなかったかもしれないな、とふと考えます。目で耳で鼻で口で触覚で、日々を感じて、それを表現している。ぼーっとしている時だって、きっと何かを感じている。

前置きが長くなりましたが、

「チャペック兄弟と子どもの世界」
~20世紀はじめ、チェコのマルチアーティスト 

という展示を、渋谷区にある松濤美術館で見てきました。

20世紀のチェコ共和国において、多分野にまたがったマルチな活躍を見せたチャペック兄弟。兄ヨゼフチャペックは主に画家として、弟カレルチャペックは主に文筆家として有名です。カレルの著書へヨゼフが装丁や挿画を手がけるなど、共同での著作も多く遺しています。

恥ずかしながら、政治的批評、戯曲、小説などと多岐にまたがる著作を私は追いきれていないのですが…。主に「園芸家の一年」や「ダーシェンカ」などのエッセイや旅行記、「こいぬとこねこのおかしな話」などの童話などを中心に触れてきました。とりわけ「園芸家の一年(十二ヶ月)」は、園芸への愛にまみれたカレルチャペックの文章と、同様に愛にまみれたヨゼフチャペックの挿画があまりに素晴らしくて今でも本当に大好きな本です。

(画像以外にも様々な出版社さんから発行されています)

松濤美術館に行くのははじめてだったのですが、歴史ある建物であり、そう賑々しくない雰囲気(平日だったし)も含め、チャペック兄弟にとても似合っていました。

あまりに幅広い作品を残してきた兄弟の作品のうち、「子どもの世界」にフォーカスして集められた作品、主にヨゼフの絵画からみえる視点がよくわかる展示でした。

キュビズムの画家としても多く作品を発表しているヨゼフ・チャペック。様々なスタイルや変遷をたどって多くの絵画が残されています。今回展示されていたものの多くは、目に見える直接的なものを描写する絵というよりも、子供たちがあそんでいるその世界そのものを理解しようとしたうえで描かれた絵。ヨゼフも自分の娘をもってからは、より一層子供の世界の自由奔放さを新しいレベルで体験していくことになっていくようになったそう。

幅3センチほどの小さいサイズで描かれたスケッチもたくさん展示されています。これほど小さいサイズながら、どれもすでに生き生きしている。ヨゼフチャペックの絵をみると、くすっと笑ってしまうようなあたたかさや愛おしさと同時に、切なくて泣けてくるほどの思いや純粋さを感じてしまいます。私はこの人の描くものが、本当に好きです。

弟カレルは、ヨゼフが「子供をモデルとして絵を描いていた」のではなく、「自分の中の子供が、子供を描いていた」といったことを書いています。

また「ダーシェンカ、あるいは子犬の生活」という本は日本でも有名なカレルチャペックの著作です。愛犬の「好き!」が高まりきっているエッセイ、写真、イラストもすべてカレルチャペックが手がけています。

このダーシェンカが発表される以前に、カレルは「ミンダ、あるいは犬の養育について」という記事を発表していました。そこではヨゼフが挿絵を手がけているんですが、この表情や輪郭、動きがなんとも言えない愛おしさ。

おとぎ話の挿画も多く手がけ、チェコ国民でこの兄弟を知らない人はほとんどいません。日本でももしかしたら、30代の私の世代よりも50代以上?の方々のほうがチャペック兄弟の絵本になじみがあるという方もいるかもしれません。

カレルは38歳で病死、ヨゼフは強制収容所で亡くなっています。収容所内でも限られた画材で多くの絵を描いていたと言われるヨゼフ。もっともっとずっと、二人には自由に、書いて描いてもらいたかった。

なかなかこんなにも多くの作品が日本にあつまる機会もないでしょうし、紙の質感や線の柔らかさは、その目で見ないと伝わらないぬくもりがあります。

昨年の3月に、私はこの展示をチェコ共和国のクトナーホラという街にある「GASK現代美術館」まで見にいきました。

その当時の、展示の雰囲気を伝えた日記と、会場内にあったチャペック兄弟の言葉を自分で翻訳したものを以前書いています。チェコでしか見れなかったものも数点あった気がしますが、それにしても日本の展示もかなり充実!していますし、逆にチェコでは見れなかった世界初公開の、ヨゼフの娘さんの肖像画や「人造人間」のポスターなど、日本でしかみられなかったものもたくさんあったように思います。

あえて比較するならば、チェコの展示では子供や大人がいっしょに遊べるような塗り絵コーナーや寝そべってテレビが見られるようなリラックススペースがありました。日本でも日にちによってはワークショップなどのイベントが行われているようですね。

チャペック兄弟の言葉たちを私が勝手な解釈で翻訳したものも載せておきます。

大事に持って帰った、チェコ語版の画集。

二人の故郷、マレー・スヴァトニョヴィツェと、

チャペック兄弟へ、愛を込めて。

会期中、たぶんあともう一回くらいいきます。(笑)
みなさんもゴールデンウィークのお出かけにいかがですか。

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